不可説不可説転
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不可説不可説転︵ふかせつふかせつてん︶とは、華厳経に登場する自然数の数詞である。仏典に現れる具体的な数詞としては最大のものとされている。
そして無量大数より大きい単位とされている。
定義[編集]
唐の実叉難陀訳の﹃華厳経︵八十華厳︶﹄︵新訳華厳経、唐経、大正蔵279︶の第45巻﹁阿僧祇品第三十﹂に次のように書かれている[1]。 100洛叉︵らくしゃ=10万︶を1倶胝とする。倶胝倶胝を1阿庾多とする。阿庾多阿庾多を1那由他とする。那由他那由他を1頻波羅とする。︵中略︶不可説転不可説転を1不可説不可説とする。このまた不可説不可説︵倍︶を1不可説不可説転とする。 つまり、倶胝︵くてい、千万(107)︶から始めて倶胝の倶胝倍︵倶胝の2乗=107×21、百兆(1014)︶を阿庾多︵あゆた︶、阿庾多の阿庾多倍︵阿庾多の2乗=107×22︶を那由他︵なゆた、1028、一般数詞の穣と同じで、現在の那由他(1060)とは異なる︶、那由他の那由他倍︵那由他の2乗=107×23︶を頻波羅︵びんばら、1056、一般数詞の阿僧祇と同じ︶というように、それまでに登場した単位をすべて使って数が表現できなくなったときに、新しい単位を作っている︵これを上数といい、2乗すると次の単位になるため、二重指数関数に当たる増え方となる︶。不可説不可説転はこの系列の最後、122番目になるから、 1不可説不可説転=107×2122=1037218383881977644441306597687849648128 ≒ 103.7×1037 ということになる。つまりおよそ10の37澗乗である[2]。大きさ[編集]
1無量大数は1068、1グーゴルは10100である。不可説不可説転はこれらよりも遥かに大きい。無量大数の5400溝乗がおよそ1不可説不可説転になる。
1不可説不可説転の270那由他乗が、およそ1グーゴルプレックス︵︶になる。
これは実用のものではなく、計算もできないほど大きな数を示すことで、悟りの功徳の大きさを表したものである。
華厳経が書かれた当時としては、二重指数関数的な増え方や、テトレーションレベルに接近するほどの巨大な数を想定した数少ない例の一つでもある。
別の華厳経による「不可説不可説転」と「不可説転転」[編集]
唐の般若三蔵訳の﹃華厳経︵四十華厳︶﹄︵貞元経、大正蔵293︶の第10巻﹁入不思議解脱境界普賢行願品﹂には、八十華厳のものとは異なる体系の命数が記載されており、この経典では105 を洛叉、100洛叉︵107︶を倶胝とし、倶胝以上を上数として144の命数が列挙されている。その体系で最大の命数も﹁不可説不可説転﹂と称するが、これは八十華厳のものとは値が異なり、次のようになっている。
1不可説不可説転︵四十華厳︶=107×2142=1039026304097428590497687506977134632635465728 ≒ 103.9×1043
また、東晋の仏駄跋陀羅訳の﹃華厳経︵六十華厳︶﹄︵旧訳華厳経、晋経、大正蔵278︶の第29巻﹁心王菩薩問阿僧祇品第二十五﹂にもまた別体系の命数が記載されており、この経典では1010を拘梨とし、拘梨以上を上数として121の命数が列挙されている。その体系で最大の命数は﹁不可説不可説転﹂ではなく﹁不可説転転﹂と称し、次のような値になっている。
1不可説転転︵六十華厳︶=1010×2120=1013292279957849158729038070602803445760 ≒ 101.3×1037
脚注[編集]
- ^ “華厳経第45巻、阿僧祇品第三十”. web.archive.org (2016年4月11日). 2021年5月20日閲覧。
- ^ “記数法の単位(日中対照)” (2015年1月24日). 2022年5月15日閲覧。