干し首
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干し首︵ほしくび︶とは、装飾用に加工された人間の頭部のことである。
かつては首狩りを実践していた多数の部族の風習として干し首が作られていた。最も有名な例としては、現在のエクアドルとペルーにあたる地域に住んでいたヒバロー族あるいはシュアール族の干し首が挙げられる。シュアール族の間では、干し首はツァンツァの名で呼ばれていた。ニュージーランドのマオリ族のモコモカイなどがある。
フロリダ州セントオーガスティンのライトナー博物館展示の干し首
干し首の制作は本来は宗教的な意味を持っていた。干し首は敵の霊魂を束縛することにより、制作者への奉仕を強制するものであると信じられていたのである。ヨーロッパ人との交易用に非宗教的な干し首も作られたが、宗教的な干し首と非宗教的な干し首とは明確に区別されていた。
ヒバロー族は以下の三つの根本的な霊魂の存在を信じていた。
●ワカニ - 死後も蒸気となって存続する、人間固有の霊
●アルタム - ﹁幻影﹂あるいは﹁力﹂の意味。非業の死から人間を保護し、その生存を保障する霊
●ムシアク - アルタムによって守られていた人間が殺害された時に現れる、復讐の霊
復讐の霊ムシアクがその力を振るうのを妨げるために、ヒバロー族は敵の頭部を切り落とし、干し首にすることにした。また、これは敵に対する威嚇としても役立った。
敵の干し首が何らかの理由で作れない時には、サルやナマケモノの頭部で代用品を作ることもあった。
北米のミシシッピ文化のサザン・カルトに関連する支配階層の副葬品、南米のナスカ文化、モチェ文化、ティワナク文化、シカン文化にも宗教的な権威に関連する文脈で干し首を思わせる首級を描いた壁画、レリーフ、土器や織物の文様がみられる。
ロンドンのサイエンス・ミュージアム展示の干し首