日の光もなく
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﹃日の光もなく﹄︵ひのひかりもなく、露‥Без солнца︶は、モデスト・ムソルグスキーが1874年に作曲した6曲からなる歌曲集。
概要[編集]
翌年から着手される歌曲集﹃死の歌と踊り﹄同様、遠縁で作曲当時、共同生活を送っていた詩人アルセニイ・ゴレニシチェフ=クトゥーゾフ︵Арсений Голенищев-Кутузов︶の詞に付曲、献呈した作品である。作詞に当たり、作詞者へムソルグスキーから予め内容の指示があったのではないかと推測されている[1]。非常に厭世的かつ抒情的な内容の曲で、同時期に作曲が開始されたオペラ﹃ホヴァーンシチナ﹄との類似性も指摘される。出版は作曲直後の1875年2月にベッセル社から行われた。同社からは、1908年にリムスキー=コルサコフによる校訂版も出版されている。 原曲はピアノ伴奏であるが、エフゲニー・スヴェトラーノフやエディソン・デニソフによる管弦楽伴奏版もあり、それぞれ録音もされている[2]。構成[編集]
歌詞大意︵意訳︶ 第1曲﹁周囲を壁に囲まれて﹂︵В четырех стенах︶ 狭く静かで愛しい部屋。底知れぬ影、答えなき影。 深く悲しい思いと歌。脈打つ胸に秘めた望み。 時は飛び去り、瞳は遠い幸せを見つめる。 多くの疑惑、多くの忍耐。ご覧、やって来たよ、孤独な私の夜が。 第2曲﹁人混みの中で貴方は私に気付かなかった﹂︵Меня ты в толпе не узнала︶ 人混みの中で貴方は私に気付かなかった。 私が貴方の眼差しをとらえたその時、 愛の喜びと忘れられた悲哀を感じた。 第3曲﹁騒がしい日は終わり﹂︵Окончен праздный шумный день︶ 騒がしい日は終わり、五月の夜の闇が町を包む。 だが私は眠ることができず、夜明けに失われた年月を振り返る。 多くの希望、迷いを心に蘇らせる。が、それは幻に過ぎない。 ただ一つの影が私の前に現れる。 それは愛しい人、涙の中に心の全てを捧げた人。 第4曲﹁退屈するがいい﹂︵Скучай︶ 退屈するがいい。貴方はそのために生まれた。 退屈するがいい。うつろな心で愛の言葉を聞き、真の夢に偽りで応え。 退屈するがいい。生まれてから死ぬまで貴方の道は既に定まっている。 徐々に力を使い果たし死ぬのだ、主が汝と共にあらんことを。 第5曲﹁悲歌﹂︵Элегия︶ 霧の中に夜はまどろみ、星は瞬く。馬の群れが遠く鈴を鳴らす。 移ろいやすい思いは、私を不安に慄かせる。 失われた希望の影が見え、未来の戦に怯える。 遠く聞こえるは、生の騒めき、群集の嘲笑。 予言の星は、私の未来のように霧の中に隠れる。 第6曲﹁川のほとりで﹂︵Над рекой︶[3]
思いに沈む月、遠い星達は、青い空より水面に見とれる。
黙って私は深き水を見つめる。水中の妖しい声が聞こえてくる。
それは私を魅惑し、怯えさせ、疑惑を呼び起こす。
聞けと言うのか?ならばここを動くまい!
行けと言うのか?ならば慌てて逃げ出そう!
深みへと誘うのか?ならばすぐに飛び込もう!