曖昧
曖昧︵あいまい, 英語: ambiguity︶[1]または曖昧性︵あいまいせい︶[2]は、狭義には、物事が二通り以上に決められ得ること、一意に決められないことを指す。
単語や文章が二通り以上の意味で解釈されうること︵多義性︶を主に指す。言語学[3]や文学批評など、様々な分野で扱われる。
ただし日本語では、不明瞭なこと・はっきりしないこと全般を指し、広義に用いられることが多い。
概要[編集]
自然言語に曖昧性はつきものである[3]。そのため、自然言語を研究する分野である言語学にとって、曖昧性は切っても切れない関係にある[3]。 哲学・論理学においても古くから扱われており、例えばアリストテレス﹃ソフィスト的論駁について﹄では、論理的誤謬の源の一つとして言及されている[4]。 法学における法解釈や契約法などでも扱われる︵曖昧 (法学)︶。文学批評[編集]
文学批評においては、テクストが二通り以上の意味で解釈されうることを主に指す。 ウィリアム・エンプソンは、1930年の著作﹃曖昧の七つの型﹄で、英語詩の曖昧性 (英語: ambiguity) を分類し、その方法は以後大きな影響を残した[1][2]。エンプソンは﹁一つの表現にいくつかの反応を許す﹂ことにより[5]、言語表現の豊かさを生むものとして﹁曖昧﹂を肯定的に評価した[2]。エンプソンの﹁曖昧﹂はニュー・クリティシズムにおけるアイロニーやパラドックスの取り扱いの先駆けとなった。- 語あるいは文の構造が同時に多様に働く場合
- 2つ以上の意味が融け合い一つの意味になる場合
- 2つ以上の意味を持つ語の各意味が、ともに適切である場合(すなわち地口)
- 文章にある2つ以上の意味が、それぞれの意味が他と一致せず複雑な心理を明らかにする場合
- その観念が生成過程であるため比喩が正確にあてはまる対象がない場合
- 文章が類語の反復や矛盾を引き起こし、何も意味していない場合
- 語の2つの意味が、2つの対立する意味をなし、主体の分裂を示している場合
出典[編集]
(一)^ ab﹃コロンビア大学現代文学・文化批評用語辞典﹄﹁AMBGUITY 曖昧﹂p.60
(二)^ abc川口喬一・岡本靖正﹃最新文学批評用語辞典﹄﹁曖昧性 (ambiguity)﹂p.3
(三)^ abc濱本秀樹﹁言語学における曖昧性の取扱い(<特集解説>人文・社会科学におけるあいまいさの取扱い)﹂﹃日本ファジィ学会誌﹄第4巻第6号、1992年、1059頁、doi:10.3156/jfuzzy.4.6_48、ISSN 0915-647X。
(四)^ Sennet, Adam (2016). Zalta, Edward N.. ed. Ambiguity (Spring 2016 ed.). スタンフォード哲学百科事典
(五)^ 八木敏雄﹁曖昧と言語表現の美 (<特集>曖昧について)﹂﹃成城文藝﹄第80巻、成城大学文芸学部、1977年3月、61-80頁、ISSN 0286-5718、CRID 1050282677573579392。
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
- Ambiguity (英語) - スタンフォード哲学百科事典「曖昧さ(多義性)」の項目。