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﹃紀州飛脚﹄︵きしゅうびきゃく︶は上方落語の演目の一つ。艶笑噺の代表的な演目である。
あらすじ[編集]
喜六は男性自身が並外れて大きい。知り合いの甚兵衛から﹁紀州へ手紙を運んでくれへんか﹂と頼まれ、尻からげするはいいが、巨大な一物は褌からはみ出している。そんなこともお構いなしにひたすら﹁ヤ。ドッコイサノサ﹂と掛け声も勇ましく、自慢の快足で紀州街道をひた走りに走るのであった。
途中尿意を催す。﹁小便したなったなあ。せやけど、甚兵衛はん急いで届けてくれ言うてるし、止まンのもじゃまくさいわい。ええ。ままよ。走りながらやってこましたれ﹂と、何と褌を緩め一物を左右に振って﹁ヤ、ドッコイサノサ﹂と小便を撒き散らしながら走りだす。
折悪しくも野端で寝ていた狐に小便がかかったものだから大変である。﹁おのれ。よくも正一位稲荷大明神の使いたるこの狐にかかる不浄なものを浴びせたよなア。思い知らさん。今に見よ﹂と怒った狐は巣に帰って子狐に何やら計略を持ちかける。
さて喜六は、手紙を無事渡しほっとしながら大阪に帰るが、その途中、美しい腰元が現れ﹁そこにござるは喜六殿ではござりませぬか﹂﹁へえ。喜六はわたいでっけど﹂﹁お姫様が是非そなたとお目もじがしたいと仰せらる。わらわについてこうござれ﹂﹁へ。お姫様でっか?﹂不審がる喜六だが言われるままに立派な御殿に誘われる。
御殿の一室には、世にも美しい姫君が艶やかに微笑んでいるではないか。姫君は﹁喜六殿、自らはそなたのようなよき殿御と添い寝がしたかったのじゃ。さ、自らとおじゃれ﹂と閨に誘う。夢を見ているかのような喜六であるが、じつはこれはすべて最前の狐親子の幻術で、親狐は姫に子狐は女性自身となり、いざ秘事が始まると子狐が喜六の物を食い千切り殺してしまう算段なのだ。
床入りとなり性交が始まるが、如何せんただでさえ巨大な喜六の一物がさらに大きくなっているのである。それが子狐の口に入ってしまったものだから子狐は食いちぎれず、﹁ああ、死ぬ。死ぬ﹂
露骨な描写が多いが、民話の香がただよう大らかさが特色である。現行の話は橘ノ圓都が聞きおぼえていたものを改作したものである。三代目桂米朝、二代目露の五郎兵衛が得意とする。東京では二代目三遊亭円歌が小噺として演じていた。円歌の口演は、江戸落語らしくあっさりした演出で、最後は下の口が横になっているのを見つけた親狐が子狐に﹁これ、縦におしよ﹂と注意するというサゲが用いられている。
類似の噺[編集]
同じ狐の復讐譚というテーマでは上方落語の﹃七度狐﹄があるがこちらは﹃東の旅﹄の一部で旅ネタである。艶笑小噺では旅回りの女形の立ち小便に怒った蛇が、裾をめくっているのを見て﹁いけねえ。もう先に入ってる。﹂というのがある。