切歯
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(門歯から転送)
切歯︵せっし、incisor︶は異歯型の哺乳類中の1番目の歯である。ヒトでは切歯と呼び、動物では門歯︵もんし、英語は同じ incisor︶と呼ぶことが多い。ヒトの場合、前歯を構成する歯である。ヒトやウマのような多くの草食性や雑食性の哺乳類は、この切歯によって食物をかみ切りこまかくすることに適応している。一方、ネコやイヌのような肉食性の動物では、切歯が小さく、かみ切る力は比較的弱く、肉をかみ切るには主に犬歯や裂肉歯を使う。かれらはこの小さな切歯を毛繕いに用いている。ゾウの牙は、上顎切歯が変化したものである。ネズミ目の切歯は生涯成長し続け、物を齧る事で磨り減っていく。
ヒトは、上下の中切歯4本、上下の側切歯4本の計8本︵上下各左右2対︶の切歯をもっている。他の霊長類、ネコ、ウマ等は12本︵上下各左右3対︶の切歯をもっている。ネズミ目の切歯は4本︵上下各左右1対︶である。ウサギ目の動物はかつてネズミ目に含まれると考えられていたが、切歯を6本︵上左右2対・下左右1対︶持っていることにより識別された。
なお、ヒトの切歯もかつては上下各左右3対あったが、進化の途上で1対が失われた。失われたのはもっとも近心側の切歯であると考えられており、上顎中切歯間の口蓋側にまれに萌出する正中過剰歯は、その名残であるとされる。