スケトウダラ Archive
資源管理ごっこと本物の資源管理の違い
資源管理ごっこ(日本のスケトウダラ漁業の場合)
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資源管理︵ニュージーランドのホキ漁業︶
このような悲劇を二度と繰り返さないために、﹁資源が減ったときにどうやってブレーキをかけるのか?﹂について議論をすべきだろう。その前提として、他国の成功事例について学んでおく必要があるだろう。同じように卵の生き残りが悪くて、水産資源が減ったときにニュージーランド政府がどのような対応をしたかを紹介しよう。 ホキは、 タラに似た白身魚であり、ニュージーランドの主力漁業。フィレオフィッシュの原料として、世界中で利用されている。 この資源のレポートはここにある。1990年代後半から、卵の生き残りが悪く、資源が減少した。NZ政府はB0︵漁獲が無い場合の資源量︶の40%前後を管理目標︵Target Zone︶、20%B0をソフトリミット(回復措置発動の閾値)、10%B0をハードリミット︵強い回復措置の閾値︶としている。資源状態が良かった時期を基準に、目標水準とそれ以下には減らさないという閾値が事前に設定されているのである。![キャプチャ](http://katukawa.com/wp-content/uploads/キャプチャ10.png)
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本物の資源管理と資源管理ごっこの見分け方
資源管理ごっこと本物の資源管理を見分けるには、資源量が減少したときに、漁獲にブレーキがかかったかどうかに着目すれば良い。スケトウダラ日本海北部系群とニュージーランドのホキは、同じように卵の生き残りが悪くなって資源が減少した。日本は産官学が連携して、過剰な漁獲枠を設定し続けて、資源を潰してしまった。どれだけ立派なことを言おうとも、資源が直線的に減少していく中で、漁獲圧にブレーキがかけられなかったという事実が、日本の漁業管理システムの破綻を物語っているのである。それとは対照的に、ニュージーランドでは資源の減少に応じて漁獲圧を大幅に削減して資源回復に結びつけた。 車にたとえると、ニュージーランド漁業は、ちゃんとしたブレーキがついている車。いざというときにはきちんと止まることができる。日本はブレーキっぽい物はついているけど、本物のブレーキがついていない車。いざというときに減速ないのだから、事故が起こるのもやむを得ないだろう。 日本の漁業を守るために我々がやるべきことは、きちんと資源管理をしている諸外国から謙虚に学び、魚が減ったときに漁獲にブレーキがかけられるような仕組みを導入することである。それをやろうとせずに、ブレーキっぽい物を本物のブレーキだと言い張っているから、進歩が無いのである。- Comments: 1
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予定通り、北海道日本海側のスケトウダラ資源が減少し、漁業が消滅の危機
北海道日本海側のスケトウダラが激減しています
資源量が減って、漁獲割合が上がる?
漁業資源の状態は、独立行政法人 水産総合研究センターによって、まとめられています。 http://abchan.job.affrc.go.jp/digests24/html/2410.html![2410-04](http://katukawa.com/wp-content/uploads/2410-04-500x317.png)
科学者の勧告
詳細な資源評価︵アセスメント︶はここにあります。このPDFの2ページ目の管理シナリオの一覧を見てください。![キャプチャ](http://katukawa.com/wp-content/uploads/66c19942ab4ba346fdb64ccc04cde3735-500x499.png)
持続性を無視する漁獲枠設定
これに対して、水産庁がどのような漁獲枠を設定したかという資料がこれ︵ 水産政策審議会に水産庁が提出した資料︶ → 24年漁期TAC︵漁獲可能量︶設定の考え方︵PDF‥101KB︶![キャプチャ](http://katukawa.com/wp-content/uploads/66c19942ab4ba346fdb64ccc04cde3736-500x435.png)
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北海道沿岸漁業者とのミーティング その4
- 2010-03-19 (金)
- 太平洋系群
スケトウダラ太平洋系群は資源管理ができる唯一の大規模資源
漁業はどう変わるのか
漁獲枠がしっかりとしていれば、資源量は安定する。また、漁獲枠が限られていれば、漁師は、市場の需要がある、価値のある魚を狙って捕るようになる。安定 して質の良い魚が水揚げあされれば、需要は必ず増える。結果として、値段はあがり、ブランドも確立できる。管理の実績を積み上げた先には、MSCのエコラ ベルも見えてくる。欧州の白身市場は韓国とは比較にならないぐらい単価が高い。将来的には、ここを狙いたい。数十年スケールで、安定して利益が出る産業に なれば、後継者問題も自ずと解決するだろう。 そのために必要なことは産官学がそれぞれの役割を果たすことだ。 ●研究者の役割‥資源の生産性に応じた漁獲枠を勧告する ●行政の役割 ‥研究者が設定した漁獲枠を沖合と沿岸に配分 し、きちんと守らせる ●業界の役割‥与えられた漁獲枠から得られる利益を増やし、ここの漁業者の生活が成り立つように配分する スケトウダラ太平洋系群では、それ ぞれが自らの役割を果たし始めている。歯車がかみ合えば、必ず漁業は利益を生むようになる。 漁獲枠のせいで、魚がいるのに捕れないというのは、漁業者にとってはつらいことだろう。サバ類のように、資源状態が最悪なのに、業界の要求通りいくらでも漁獲枠が水増しされている魚種もあるのに、自分たちだけ漁獲枠で漁業を制限されて不公平だと感じるだろう。しかし、本当に恵まれているのは、北海道のほうである。太平洋のサバ漁業など、自分で食い扶持を破壊しているようなものである。資源管理をしなければ、資源が維持できないのだから、漁獲枠はあった方が良い。国際的にみても実際に、利益を出している漁業国は、資源管理に熱心な国ばかり。アラスカのスケトウダラ漁業は、個別枠が導入されてから、収益が急増した。スケトウダラ・バブルと言っても良いような状況にある。太平洋系群でも、同じように利益を伸ばしていけるはずである。沖合底引きは、すでに資源管理への適応を進めている。漁獲枠を内部で調整し、経済的に有効利用する仕組みを作っている。漁獲枠を守った上で、利益をのばし、新船を建造しているのだから、たいしたものである。こういう風に利益が出るようになったのは、漁獲枠が設定されてからである。加工業者との縦の連携も強化されているようである。このあたりの話は、今度じっくり聞きに行くつもりだ。教育が成功の鍵
太平洋系群を利用する沿岸漁業は、広範囲に及んでおり、内部の調整は沖底と比べると遙かに難しい。時間がかかるのは当然である。日本では、漁獲枠の管理の歴史がないので、資源管理は﹁収入が減少するいやなこと﹂というマイナスなイメージが強い。しかし、実際には、漁業者がこれからも生活をしていくためには必要不可欠なのである。現在の北海道漁業は、変化の時期を迎えている。運を天に任せて、獲れるだけ獲る漁業から、需要が高い魚を計画的に獲る漁業へと変化が徐々に進みつつある。もちろん、変化には常に痛みが伴うのだが、この痛みを和らげるために必要なものが教育である。北海道の漁業はどのような段階にあるのか、今後、どのような方向に進まなくてはならないのか、そして、その結果として、漁業はどのような姿になるのか。これらに対して明確なビジョンをしめすことで、漁業者の感じる痛みを軽減し、変化を促進することができる。海外には、ノルウェーやアラスカのように、この痛みを乗り越えて漁業を改革した国が多数存在する。こういった事例を学ぶことで、自分たちがどこに向かっているかを理解することができるだろう。 沿岸漁業者に、資源管理の話を直接して欲しいという依頼があったが、二つ返事でOKをした。資源管理の意味を教えるのは、我々専門家の仕事であり、日本国内でそれをできる人材はほとんどいない以上、俺がやるしかない。﹁資源管理で持続的に儲かる漁業﹂というイメージが浸透すれば、北海道は必ず生まれ変わる。噴火湾周辺のプランクトンの生産量は極めて高いので、親をしっかりと残した上で、効率的な獲り方をすれば、収益は必ず上がる。スケトウダラ太平洋系群は、日本漁業のありかたを変えるきっかけになるだろう。現場の情報と、資源管理の理論がかみ合って、具体的なビジョンを出していくことで、漁業を生産的な方向に導くことができる。漁業者のリーダーと資源管理の専門家が、漁業を持続的・生産的にするという共通の目的をもって、建設的・前向きな話ができたということは、とても意味がある。次に繋がる有意義な会合だったと思います。- Comments: 0
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北海道沿岸漁業者とのミーティング その2
過剰な漁獲枠は沿岸漁業のためにならない
この失敗から学ぶべき点は2つある。 1︶不確実な段階で漁獲枠を増やすのは危険 現在の漁船は、沿岸も沖合もすこぶる性能がよい。多少、魚が多くても、獲ろうと思えば、獲り切れてしまうのだ。資源評価が不確実な段階で、スケトウダラの漁獲枠を増やすと、資源の持続性の観点から賛成できない。研究者は、魚が獲れるからといって、すぐに漁獲枠を増やさなかった。日本海北部系群を減らしてしまった苦い経験から、慎重にならざるを得ないのである。 2︶過剰な漁獲枠設定によって、沿岸の既得権が失われる 漁獲枠が過剰だと、沿岸はTACを消化できない。その一方で、沖底は未成魚を獲ってつじつまを合わせることができる。沖底は過剰な漁獲枠を未成魚で埋めたが、沿岸は過剰な漁獲枠を消化できなかった。結果として、沿岸の未消化枠が取り上げられて、沖底に配分されてしまった。沖底と沿岸の漁獲枠の比率は、昔は5‥5だったのが、現在は6‥4ぐらいになっている。漁獲枠を増やせば、沿岸漁業の既得権を沖底に譲り渡す結果になるのである。 ただ、こうなるのは、水産庁の漁獲枠配分方法に問題がある。この点については以前から指摘をしてきた。スケトウダラ日本海北部系群の漁獲枠を沿岸が消化できなかった理由は、漁獲枠が過剰だったからである。資源評価を下方修正した後も、水産庁がABCを無視して、過剰な漁獲枠を設定し続けている。結果として、沿岸は漁獲枠を消化できずに、既得権を失い続けている。資源量に対して適切な漁獲枠を設定し、それでも消化できなかったのなら、未消化枠の有効利用について議論をしても良いだろう。明らかに過剰に設定された枠を消化できなかったからといって、未来永劫その権利を取り上げるのは、おかしな話である。乱獲をした漁業者の枠が増えて、乱獲しなかった︵できなかった︶漁業者の枠が減るなどという話は聞いたことがない。こういうおかしな実績主義によって、﹁与えられた漁獲枠はなんとしても消化しないといけない﹂という強迫観念を漁業者に植え付けている。 TAC制度の問題点 水産庁は、持続性を無視した漁獲枠を設定しておきながら、未消化枠は取り上げる。漁業者は既得権を守るために過剰な枠を埋めねばならず、結果として乱獲を推進している状態である。 改善案 未消化枠を取り上げるのはやめるべき。豊富な資源に限り、未消化漁獲枠の一部を翌年に持ち越せるような仕組みを導入する。たとえば、ニュージーランドでは、年間漁獲枠の10%を上限として、未消化の漁獲枠を翌年に持ち越すことができる。そういう仕組みがあれば、無理に獲らなくなるだろうし、漁獲が遅れれば、それだけ資源にも漁業にも良い影響がある。 沿岸が無理して獲らなくても良いような、制度設計を考える必要がありますね。
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北海道沿岸漁業者とのミーティング
バックグラウンド
一般読者にもわかるようにバックグラウンドを少し説明します︵わかっている人は読み飛ばしてください︶。スケトウダラは冬に産卵場にやってくる。その産卵群を待ち伏せして刺網で漁獲をするのが沿岸漁業。一方、広範囲で未成魚から漁獲するのが沖合底引きである。今年は、魚が産卵場に来るのが早かったので、沿岸は漁期前半に漁獲枠の大部分を消化してしまった。もともと、初回成熟の親が多いから、来遊が早いというのはわかっていたので、沿岸漁業者は自主規制で網の長さを短くしていた。それでも予想を上回るペースで獲れてしまったのである。 沿岸漁業者は、資源が豊富なので漁獲枠を増やすように11月にデモを行った。また、北海道水産試験所の音響調査で、魚群密度が高いという結果が得られたことから、そのデータを元に漁獲枠を増やすかどうかを検討する会議が、年を越して1月8日に緊急開催された。この会議には、俺は北海道外部委員として出席した。水産庁はその前の月にも、低水準なサバ類の漁獲枠をホイホイ増やしたばかり。今度も増やすのだろうと警戒しつつ、情報を収集したところ、広範囲でそれなりに獲れているし、値段も悪くないことがわかった。﹁資源量もそれなりに安定しているので、マサバ太平洋のような危機的状況ではない。TACがABCを超えている状態なので、期中改訂による増枠はしないにこしたことはないが、するにしても沿岸・沖底それぞれ3000トンが限度﹂、というような方針で会議に臨んだのです。ところが、予想に反して、国が毅然とした対応をして、﹁増枠はできません﹂ということになりました。増枠しないという結論に異論はないので、会議では特に発言をしませんでした。 結局、期中改訂は見送られ、沿岸は漁獲枠を消化したため、1月中頃に終漁となりました。漁期中にTAC満了で漁獲をやめるのは2007年以来です。 会議が終わった後、ブログに北海道漁業者の資源管理意識について厳しいことを書いたのです。それが北海道の沿岸漁業者の目にとまり﹁誤解を解きたい﹂ということで、今回のミーティングになったのです。いろいろと話を伺って、沿岸もTACを軽視していないというのは、良くわかりました。また、ブログでは書きすぎた部分もあったので、その点については、真摯に謝罪をしました。その上で、今後、北海道の沿岸漁業をどのように発展させいていくかという観点から、いくつか提案をしました。勝川の主張
1) 漁獲枠は増やさない方が沿岸漁業の長期的利益が増える 2) 研究者は増枠に消極的な理由 3) スケトウダラ太平洋系群の資源管理の今後の方向性 私からの提案については、次回以降で、詳しく説明します。- Comments: 0
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ABCの複数化について
- 2008-08-22 (金)
- スケトウダラ
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北海道ブロック会議に来たよ
- 2008-08-21 (木)
- スケトウダラ
シナリオ |
ABC |
目的 |
30年後の回復率 |
1 |
1.8千トン |
親魚量の増大(10年) |
99.9% |
2 |
3.1千トン |
親魚量の増大(制御ルール) |
26.9% |
3 |
5.9千トン |
親魚量の増大(20年) |
79.8% |
4 |
7.4千トン |
親魚量の増大(30年) |
46.8% |
5 |
9.3千トン |
親魚量の増大(微増) |
8.4% |
6 |
10.3千トン |
親魚量の現状維持 |
2.5% |
7 |
12.7千トン |
漁獲圧の半減 |
0% |
8 |
24.1千トン |
漁獲圧の維持 |
0% |
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スケソウダラの漁獲枠を巡る収賄事件
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スケトウダラの未来のために その7
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資源量には、過小推定の可能性ばかりでなく、過大推定の危険性もあるので、 資源評価の不確実性を理由に先延ばしは許されない。 Blimitを防衛ラインと位置づけて、そこで頑張るのは当然のことであるが、 ベストを尽くしたとしてもBlimitを下回っても漁獲にブレーキがかからずに、 資源がズルズル減っていく可能性はある。だから、それに対する備えも必要だ。 今のうちにBbanも決めておき、Bbanまで資源量推定値が下がったら、 必ずABC=0にすると宣言すべきである。 Bbanは、我々の管理能力が無い場合の保険として必要なのである。 今までBlimit以下に減らしたことは無いわけで、Blimit以下になったとき時に資源がどうなるかはわからない。 よって、Bbanを科学的見地から一意的に決めることは不可能である。 ただ、資源が減らしすぎると増加能力が失われて、元の水準に回復しない事例が多数知られている以上、 ずるずると減らさないための閾値は必要である。 現在、俺が太平洋系群に対して、要求していることは以下の3つ。 1) Blimit以下になったら、ABCをどこまで削減するかを予め決めておくこと 2) 資源の減少に歯止めがかからない場合を想定し、予めBban決めておくこと 3) 水研、水試で1︶および2︶に対して合意形成をした上で、漁業者に周知すること Blimitが近づいている現状では、残された時間はわずかであることを、肝に銘じて欲しい。
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スケトウダラのおもひ出 その6
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