日本大百科全書(ニッポニカ) 「せり」の意味・わかりやすい解説
せり
演劇舞台用語。舞台の床(ゆか)の一部を四角に切り、その部分に俳優や大道具をのせて昇降させる機構のこと。上がるのをせり上げ、せり出し、下がるのをせり下げ、せりおろしといい、とくに大きな屋体などを昇降させるものを大ぜりという。18世紀の初めに竹田からくりなどで最初に使われ、歌舞伎(かぶき)では1753年︵宝暦3︶並木正三(しょうざ)が自作の﹃けいせい天羽衣(あまのはごろも)﹄で三間四方のせり上げを使用したのが始まりといわれる。現代では広く一般演劇に使用。なお、花道の揚幕から七分、舞台付け際から三分の、いわゆる七三(しちさん)にあるせりをとくに﹁すっぽん﹂とよび、精霊や妖術(ようじゅつ)使いの役の登退場に使われる。この語源については、せり上がりの演者が首から出るさまがスッポンの首に似ているからなどの諸説があるが、確証はない。
﹇松井俊諭﹈