改訂新版 世界大百科事典 「サンショウ」の意味・わかりやすい解説
サンショウ (山椒)
Japanese pepper
Japanese prickly ash
Zanthoxylum piperitum DC.
利用
サンショウは古くから食用,薬用とされてきた。はじめは︿はじかみ﹀と呼ばれたが,同じようにしんらつ味をもつショウガが伝来すると,それを︿くれのはじかみ﹀と呼び,サンショウは︿なるはじかみ﹀︿ふさはじかみ﹀と呼んで区別するようになった。3月ころから新芽を吹くが,この新芽や若い葉を︿木の芽﹀と呼び,煮物の香りづけや汁物の吸口に用いる。木の芽みそ,サンショウみそはみそにすりまぜたもので,木の芽あえはこれでたけのこやイカをあえたもの,木の芽田楽は豆腐にこれを塗った田楽である。︽庭訓往来︾には木の芽漬の名が見えるが,これは洛北鞍馬︵くらま︶山の名物として有名であった。4~5月ころになるとアワ粒ほどの緑黄色の花をつける。これを花ザンショウといい,つくだ煮ふうに煮て付合せなどにする。そのあと結実した青い実が実ザンショウ,完熟した実を粉末にしたのが粉ザンショウで,実ザンショウはつくだ煮などにし,粉ザンショウは蒲焼,焼鳥その他の薬味にする。なお,これも鞍馬の名物とされたものに辛皮︵からかわ︶がある。若い枝の樹皮をあく抜きしたもので,細かく刻んでしょうゆで煮たり,塩漬やかす漬にし,茶漬の菜などとして喜ばれたものであった。また,サンショウの幹は強く折れにくいこともあって,すりこ木にされる。なお,サンショウには健胃,駆虫,止瀉︵ししや︶,発汗などの作用があり,古来薬剤としても用いられてきた。ちなみに,その香りはテルペン系のフェランドレン,オイゲノール,シトロネラール,辛みはサンショオールによるものである。 執筆者‥菅原 龍幸+鈴木 晋一出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報