日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
シャール(René Char)
しゃーる
René Char
(1907―1988)
フランスの詩人。南仏のリール・シュル・ソルグに生まれる。1929年ニームの出版社から﹃兵器廠(しょう)﹄を出す。シュルレアリスムの運動に参加し、ブルトン、エリュアールとの共著﹃仕事を遅らせる﹄Ralentir travaux︵1930︶を発表する。そのころの詩集に﹃アルチーヌ﹄︵1930︶、﹃打ち手のない槌(つち)﹄︵1934︶がある。
ロートレアモンとランボーを愛し、ギリシアの哲人ヘラクレイトスの思想に影響された。第二次世界大戦では、対独抵抗運動の隊長として活躍し、そのときの体験は散文詩集﹃眠りの神の書﹄︵1946︶のポエジーとなった。この詩集は親友カミュに捧(ささ)げられているが、2人の文学者を結び付けているものは、不条理な世界に対する反抗である。﹃眠りの神の書﹄は、それまでの諸作品とともに、詩集﹃激情と神秘﹄︵1948︶となった。
戦後は故郷に戻って自然のなかに暮らし、生命感と人間信頼にあふれる独自な宇宙的世界を創造する。詩集に﹃砕かれた詩﹄︵1947︶、﹃内壁と草原﹄︵1952︶、﹃恋文﹄︵1953︶、﹃基点と頂点を求めて﹄Recherche de la base et du sommet︵1955︶などがあり、1983年には、プレイアード叢書(そうしょ)の一巻として全作品がまとめられた。
﹇窪田般彌﹈
﹃ピエール・ゲール編、山本功訳﹃ルネ・シャール詩集﹄︵1969・思潮社︶﹄▽﹃窪田般彌訳﹃ルネ・シャール詩集﹄︵1971・晶文社︶﹄