日本大百科全書(ニッポニカ) 「スラブ音楽」の意味・わかりやすい解説
スラブ音楽
すらぶおんがく
スラブ民族の音楽、あるいはスラブ地域の音楽。地域的には、(1)東スラブ︵ウクライナ、ベラルーシを含めた大ロシアの音楽︶、(2)北西スラブ︵ポーランド、チェコ、スロバキアの音楽︶、(3)南スラブ︵セルビア、モンテネグロ、クロアチア、スロベニアなどの旧ユーゴスラビア諸国やブルガリア、アルバニアなどの音楽︶、の三つに大きく分けられる。
スラブ音楽は、おもに国民楽派の作曲家たちによって、いわゆる西洋音楽の世界に移入された。その具体例を、この地域出身の作曲家の作品から列挙してみると、まずロシアのグラズーノフには、それぞれ﹁スラブ﹂の副題をもつ交響曲第一番ホ長調︵1880~81︶と弦楽四重奏曲第三番ト長調︵1886~88︶がある。チャイコフスキーには﹃スラブ行進曲﹄︵1876、正式題名は﹃民族共通の主題によるセルビア‐ロシア行進曲﹄︶があり、チェコ国民楽派最大の作曲家ドボルザークでは、﹃三つのスラブ狂詩曲﹄︵1878︶、二つの﹃スラブ舞曲﹄︵1876、1886︶、さらにピアノ三重奏曲第四番﹁ドゥムキ﹂︵1890~91︶、ピアノ曲﹃ドゥムカ﹄ニ短調︵1876ころ︶、同﹃ドゥムカとフリアント﹄︵1884︶が知られ、同国のチェロ奏者F・ネルーダにはバイオリン曲で有名な﹃スラブの子守歌﹄がある。
これらのうち、ドボルザークの﹃スラブ舞曲﹄やチャイコフスキーの﹃スラブ行進曲﹄は、いわゆるスラブ風の形式を用いて創作されたもので、スラブ独自の舞曲を流用したものではない。一方、ドボルザークの﹃ドゥムカ﹄dumka︵ドゥムキは複数形︶は、スラブの民謡の一種である同名の哀歌の形式を用いたものとして注目される。ドゥムカは、ゆっくりとした哀歌の部分と、テンポの速い明るく楽しい部分の急激な交代を特徴とするもので、スラブ地域の民謡を代表している。
﹇アルバレス・ホセ﹈
[参照項目] |
| |