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…彼は《宝石箱》などあわせて5編の戯曲を書き,ルネサンス時代の喜劇に新風をもたらした。しかし,アリオスト以上に時代に対する風刺を表現した作品《マンドラゴラ》を書いた作家にN.マキアベリがいる。彼は《君主論》を書いた思想家として知られるが,1編の小説と2編の戯曲作品を残した。…
…マキアベリの主著で,1513年から翌年にかけて執筆された。彼は君主論という古代以来の伝統的スタイルにのっとりつつ,まったく新しい内容を展開した。…
…しかし,いずれの時代をも通じて,他者の身体への強制力すなわち暴力を集中し独占すること,すなわち武力や警察力の掌握が,権力の究極的な基盤であることに変りはない。したがってマキアベリは,近代国家の出発に際して,何よりもまず,頼りになる軍隊を創出して国家の基礎とすることを説いたのである。その教訓は,今日のすべての国家に受け継がれている。…
…ヨーロッパ中世世界が,宗教的な聖なる秩序から現実の秩序を弁証するスコラ学によっておおわれたなかで,現実の秩序の由来を現実的に追求する思考は,ルネサンス時代とともに開けた。この意味で,新しい近代国家の秩序が,国民軍という権力的基盤と君主の人心収攬(しゆうらん)術によって保たれることを説いたマキアベリは,近代政治学の開祖とされる。また,国家主権を説いたJ.ボーダン,国際法の存在を主張したH.グロティウスは,近代の国家秩序,国際秩序の法的基盤を整備した。…
…混合政体論は,等族国家体制の弁証にとどまらず,教会内部の公会議運動にも結びついていった。 伝統的政体論に対する正面からの挑戦はマキアベリによってなされる。彼が強力な君主の権力装置としての国家像を提示したことにより,今や,政治社会の構成員の幸福を左右する条件として,国家の存亡それ自体が問題であることが明らかとなった。…
…1502年にピエロ・ソデリーニが終身の統領(ゴンファロニエーレ)に選ばれた。第二書記官長として起用されたマキアベリは外交に活躍し,軍事制度の改革を試みたが失敗に終わった。
[斜陽の文化・経済]
1512年,教皇ユリウス2世とスペイン軍の援助を得たメディチ家が復帰した。…
…そしてフランスとの紛争に乗じてナバラを武力で征服(1512),これの自治体制を温存したままカスティリャ王権の版図に組み入れた。マキアベリから〈名声と栄光においてキリスト教国第一の王〉と評されたことは有名。【小林 一宏】。…
…目的を達成するためには非道徳的な手段をも是認する権謀術数をいう。これがマキアベリズムと呼ばれるのは,マキアベリがその著《君主論》の中でこうした主張をなしたからと考えられている。たとえば彼は,信義に厚く,気まえがよく,慈悲深いという君主のあるべき姿を認めつつ,現実にはそうした行動をとる君主は邪悪な人間が多い中では没落するであろうといい,場合によっては約束を踏みにじり,〈けち〉に徹し,冷酷であることが是非とも必要であると述べた。…
…1510年代にフィレンツェの豪族ルチェラーイ家に集った文学,学問のサークル。マキアベリがその《ティトゥス・リウィウスの最初の10巻についての論議》(いわゆる《政略論》ないし《ローマ史論》)をここで朗読した。1522年にはそのグループの一部が当時フィレンツェを支配していたジュリオ・デ・メディチ(翌年教皇クレメンス7世となる)に対するクーデタを企てて失敗した。…
…ペトラルカは共和政的自由の終焉にローマ没落の兆しをみ,フラビオ・ビオンドFlavio Biondoは没落の内因にも目を向けつつ,最終的には西ゴートによるローマ市略奪の年(彼は412年とする)から没落が始まるとした。イタリアの現状救済を第一義としてローマ盛衰原因論を考えたマキアベリは,ポリュビオスの政体循環論を継承しつつ,共和政体をよしとし,カエサル以後の独裁を堕落形態とした。 なおキリスト教的史観はルネサンス以後完全に払拭されたわけではなく,ボシュエの《万国史論》は,私利と暴力の支配などさまざまなローマ没落原因を考察しながらも,なおアウグスティヌス的摂理史観を基幹としていた。…
※「マキアベリ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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