ロシアの作家,宗教思想家。宮廷勤務のウクライナ貴族の子。詩人ギッピウスの夫。ナードソン風の市民派の詩で出発したが,詩集《象徴》(1892)や評論《現代ロシア文学の衰退の原因と新しい潮流について》(1893)でロシア象徴派の先駆けとなった。しだいに宗教に傾斜し,〈宗教哲学会〉や雑誌《新しい道》(1903-04)の活動で黙示録の預言の実現,〈聖霊の王国〉の到来を待望する独自の教説を唱えた。三部作の歴史小説《キリストと反キリスト》(1896-1905)や評論《トルストイとドストエフスキー》(1901-02)にはキリスト教と古代の神々,霊と肉などを対立させる彼の〈弁証法的〉思考形式が顕著に現れている。評論《ロシア革命の予言者》(1906)では1905年のロシア革命に未来の〈精神革命〉の始まりを見,専制批判の立場に転じたが,十月革命には強く反対し,亡命した。1920年からパリに住み,多くの著作を残した。評論《永遠の伴侶》(1897),《きたるべき賤民》(1906),戯曲《パーベル1世》(1908)に始まる三部作などもよく知られている。
執筆者:安藤 厚
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