日本大百科全書(ニッポニカ) 「光の科学史」の意味・わかりやすい解説
光の科学史
ひかりのかがくし
17世紀以降のおもなできごとを、以下の5項目に大別して示す。
︵1︶光学器械、新技術の開発に関して。
︵2︶新現象、実験法則の発見、理論の検証実験に関して。
︵3︶光速測定に関して。
︵4︶光に関する理論に関して。
︵5︶光を利用した物性、物質構造、宇宙物理の研究に関して。
﹇藤井寛治﹈
︹17世紀︺ ︻光学器械、新技術の開発に関して︼ 屈折望遠鏡︵オランダの眼鏡師が発明,1608年ごろ。直後にガリレイ、ケプラーも製作。ホイヘンス,1655年︶。顕微鏡︵フック、細胞の発見,1665年︶。反射望遠鏡︵グレゴリー,1665年、ニュートン,1668年︶。 ︻新現象、実験法則の発見、理論の検証実験に関して︼ 全反射、臨界角︵ケプラー﹃屈折光学﹄,1611年︶。屈折の法則︵スネル,1621年ごろ、デカルト﹃屈折光学﹄,1637年︶。回折︵グリマルディ,1665年︶。複屈折︵バルトリヌス,1669年︶。プリズムによる分散︵ニュートン,1672年︶。ニュートン環,1675年。偏光︵ホイヘンス,1678年︶。 ︻光速測定に関して︼ 木星の食︵レーマー,1675年︶。 ︻光に関する理論に関して︼ 薄膜の色、虹(にじ)の理論︵デカルト、フック、ニュートンら︶。光線の経路を決めるフェルマーの原理,1661年。光の波動論︵ホイヘンスの原理﹃光についての論考﹄,1690年︶。 ︻光を利用した物性、物質構造、宇宙物理の研究に関して︼ 月面での太陽光の乱反射︵月が明るい理由、ガリレイ﹃天文対話﹄,1632年︶。
︹18世紀︺ ︻光学器械、新技術の開発に関して︼ 色消しレンズ︵可能性、オイラー,1747年。製作、ドロンド,1758年︶。ハーシェル式反射望遠鏡︵天王星の発見,1781年︶。光学ガラス製造法︵ギナン,1790年︶。 ︻新現象、実験法則の発見、理論の検証実験に関して︼︻光速測定に関して︼ 光行差と光速︵ブラッドリー,1728年︶。 ︻光に関する理論に関して︼ ニュートン﹃光学﹄,1704年。
︹19世紀前半︺ ︻光学器械、新技術の開発に関して︼ 応用光学︵細隙(スリット)利用によるスペクトル観測、ウォラストンら,1802年︶。光学器械工場︵ツァイス,1846年︶。 ︻新現象、実験法則の発見、理論の検証実験に関して︼ 紫外線の化学作用,1801年。スペクトルの研究︵赤外線の発見、光と同じ反射の屈折則。太陽スペクトル中の暗線,1802年︶。偏光︵反射光の偏光、マリュス,1808年。偏光面回転、干渉、アラゴーら,1811~12年︶。光源の運動による色の変化︵ドップラー効果,1842年︶。磁気と光の関係︵ファラデー効果,1845年︶。 ︻光速測定に関して︼ 地表での光速測定︵フィゾー,1849年、フーコー,1850年︶。水中での光速︵波動論の検証、フーコー,1850年。フレネルの部分随伴説と一致、フィゾー,1851年︶。 ︻光に関する理論に関して︼ 波動論の展開と完成︵ヤング,1800~07年、干渉理論、光は横波,1817年。フレネル、回折理論,1818年、﹃光学﹄,1837年︶。電磁力の近接作用論︵ファラデー,1837年︶。
︹19世紀後半︺ ︻光学器械、新技術の開発に関して︼ 分光分析︵ブンゼン,1859年、キルヒホッフ,1859年︶。光学器械の改良︵アッベ、顕微鏡映像理論,1873年︶。 ︻新現象、実験法則の発見、理論の検証実験に関して︼ 静電場中の等方性物体が示す複屈折︵カー,1875年︶。熱放射エネルギーのシュテファンの法則,1879年。マクスウェル理論の検証︵電磁波の存在、光の性質との一致、ヘルツ,1888年。光圧、レーベデフ,1890年︶。ゼーマン効果︵原子放射の機構、電子論の検証,1896年︶。 ︻光速測定に関して︼ 光エーテル風の光速への影響︵マイケルソンの否定的結果,1881年、さらにモーリーと,1887年︶。 ︻光に関する理論に関して︼ 分光学︵温度と光の色、キルヒホッフ,1859年︶。古典電磁気学︵マクスウェル﹃電気磁気論﹄,1873年︶。ローレンツ、媒質密度と光の屈折率,1878年、電子論,1892年、運動物体の短縮仮説,1892年。回折理論︵キルヒホッフ,1882年︶。シュテファンの法則の導出︵ボルツマン,1884年︶。熱放射のウィーン変位則,1893年。熱放射法則︵エネルギー量子、プランク,1900年︶。 ︻光を利用した物性、物質構造、宇宙物理の研究に関して︼ 元素に固有なスペクトル︵ルビジウム、セシウムの発見、ブンゼンら,1860~61年。タリウム、クルックスら,1861年。太陽スペクトルからヘリウム、ジャンサンら,1868年︶。天体分光学︵シリウスの視線速度、ハギンズ,1868年︶。水素原子の線スペクトルの可視部系列の発見︵バルマー,1885年︶。X線の発見︵レントゲン,1895年︶。
︹20世紀︺ ︻光学器械、新技術の開発に関して︼ X線分光器︵W・H・ブラッグ,1913年︶。新しい写真法ホログラフィーの発見︵ガボール,1949年、1971年ノーベル賞︶。原子・分子系からの誘導放出を利用したマイクロ波増幅メーザーの開発︵タウンズら,1954年︶。同じく、誘導放出を利用した光の増幅器レーザー︵メイマンら,1960年︶。50年代からの電波望遠鏡の発達、宇宙の観測可能域の拡大︵ライル、ヒューウィッシュ、﹁電波天文学における先駆的な研究﹂で1974年ノーベル賞︶。 ︻新現象、実験法則の発見、理論の検証実験に関して︼ 水素線スペクトル系列︵紫外部についてライマン,1906年、赤外部についてパッシェン,1908年︶。X線回折︵ラウエ,1912年︶。X線と電子の散乱︵衝突過程での光の粒子性の確認、コンプトン,1923年、1927年ノーベル賞︶。媒質中の高速荷電粒子からの光の放出︵チェレンコフ,1937年、古典理論を出したフランク、タムと1958年ノーベル賞︶。核によるγ(ガンマ)線の放出と共鳴吸収におけるメスバウアー効果︵メスバウアー,1958年、1961年ノーベル賞︶。 ︻光速測定に関して︼ 物理の基礎定数としての真空中の光速cは、他の量を決める基準の一つとしてc=299792458m/秒︵定義値︶と決められる︵1983年国際度量衡総会︶。 ︻光に関する理論に関して︼ アインシュタイン、光量子仮説︵光電効果の説明,1905年︶、特殊相対性理論︵光速一定の要請,1905年︶、重力の光の伝播(でんぱ)に対する影響,1911年。チェレンコフ効果の古典論︵フランク、タム,1908年︶。X線干渉の理論︵ブラッグ父子,1912年︶。ボーアの原子模型︵原子スペクトル系列の説明,1913年︶。 ︻光を利用した物性、物質構造、宇宙物理の研究に関して︼ X線による結晶構造解析の始まり︵ラウエ,1912年、ブラッグ父子,1912年︶。元素の固有X線スペクトルと原子番号の関係︵モーズリー,1913年︶。メスバウアー効果,1958年。量子力学の成立︵1920年代︶により、古典光学から、粒子性・波動性の統一的記述可能な量子光学へ。非線形光学、レーザー、メーザーの理論と応用の展開︵1964年、メーザー、レーザーの発明および量子エレクトロニクスの基礎研究で、タウンズ、バソフ、プロホロフにノーベル賞︶。電磁場を含む相対論的場の量子論の展開︵1965年、量子電気力学の分野における基礎的研究で、朝永(ともなが)、シュウィンガー、ファインマンにノーベル賞︶。宇宙物理学の重要発見︵X線星,1962年、電波源天体クエーサー,1963年、絶対温度3Kの宇宙放射,1965年、周期的電波パルスの放出源,1967年。ペンジアス、ウィルソン、宇宙黒体放射の発見により1978年ノーベル賞︶。
︹17世紀︺ ︻光学器械、新技術の開発に関して︼ 屈折望遠鏡︵オランダの眼鏡師が発明,1608年ごろ。直後にガリレイ、ケプラーも製作。ホイヘンス,1655年︶。顕微鏡︵フック、細胞の発見,1665年︶。反射望遠鏡︵グレゴリー,1665年、ニュートン,1668年︶。 ︻新現象、実験法則の発見、理論の検証実験に関して︼ 全反射、臨界角︵ケプラー﹃屈折光学﹄,1611年︶。屈折の法則︵スネル,1621年ごろ、デカルト﹃屈折光学﹄,1637年︶。回折︵グリマルディ,1665年︶。複屈折︵バルトリヌス,1669年︶。プリズムによる分散︵ニュートン,1672年︶。ニュートン環,1675年。偏光︵ホイヘンス,1678年︶。 ︻光速測定に関して︼ 木星の食︵レーマー,1675年︶。 ︻光に関する理論に関して︼ 薄膜の色、虹(にじ)の理論︵デカルト、フック、ニュートンら︶。光線の経路を決めるフェルマーの原理,1661年。光の波動論︵ホイヘンスの原理﹃光についての論考﹄,1690年︶。 ︻光を利用した物性、物質構造、宇宙物理の研究に関して︼ 月面での太陽光の乱反射︵月が明るい理由、ガリレイ﹃天文対話﹄,1632年︶。
︹18世紀︺ ︻光学器械、新技術の開発に関して︼ 色消しレンズ︵可能性、オイラー,1747年。製作、ドロンド,1758年︶。ハーシェル式反射望遠鏡︵天王星の発見,1781年︶。光学ガラス製造法︵ギナン,1790年︶。 ︻新現象、実験法則の発見、理論の検証実験に関して︼︻光速測定に関して︼ 光行差と光速︵ブラッドリー,1728年︶。 ︻光に関する理論に関して︼ ニュートン﹃光学﹄,1704年。
︹19世紀前半︺ ︻光学器械、新技術の開発に関して︼ 応用光学︵細隙(スリット)利用によるスペクトル観測、ウォラストンら,1802年︶。光学器械工場︵ツァイス,1846年︶。 ︻新現象、実験法則の発見、理論の検証実験に関して︼ 紫外線の化学作用,1801年。スペクトルの研究︵赤外線の発見、光と同じ反射の屈折則。太陽スペクトル中の暗線,1802年︶。偏光︵反射光の偏光、マリュス,1808年。偏光面回転、干渉、アラゴーら,1811~12年︶。光源の運動による色の変化︵ドップラー効果,1842年︶。磁気と光の関係︵ファラデー効果,1845年︶。 ︻光速測定に関して︼ 地表での光速測定︵フィゾー,1849年、フーコー,1850年︶。水中での光速︵波動論の検証、フーコー,1850年。フレネルの部分随伴説と一致、フィゾー,1851年︶。 ︻光に関する理論に関して︼ 波動論の展開と完成︵ヤング,1800~07年、干渉理論、光は横波,1817年。フレネル、回折理論,1818年、﹃光学﹄,1837年︶。電磁力の近接作用論︵ファラデー,1837年︶。
︹19世紀後半︺ ︻光学器械、新技術の開発に関して︼ 分光分析︵ブンゼン,1859年、キルヒホッフ,1859年︶。光学器械の改良︵アッベ、顕微鏡映像理論,1873年︶。 ︻新現象、実験法則の発見、理論の検証実験に関して︼ 静電場中の等方性物体が示す複屈折︵カー,1875年︶。熱放射エネルギーのシュテファンの法則,1879年。マクスウェル理論の検証︵電磁波の存在、光の性質との一致、ヘルツ,1888年。光圧、レーベデフ,1890年︶。ゼーマン効果︵原子放射の機構、電子論の検証,1896年︶。 ︻光速測定に関して︼ 光エーテル風の光速への影響︵マイケルソンの否定的結果,1881年、さらにモーリーと,1887年︶。 ︻光に関する理論に関して︼ 分光学︵温度と光の色、キルヒホッフ,1859年︶。古典電磁気学︵マクスウェル﹃電気磁気論﹄,1873年︶。ローレンツ、媒質密度と光の屈折率,1878年、電子論,1892年、運動物体の短縮仮説,1892年。回折理論︵キルヒホッフ,1882年︶。シュテファンの法則の導出︵ボルツマン,1884年︶。熱放射のウィーン変位則,1893年。熱放射法則︵エネルギー量子、プランク,1900年︶。 ︻光を利用した物性、物質構造、宇宙物理の研究に関して︼ 元素に固有なスペクトル︵ルビジウム、セシウムの発見、ブンゼンら,1860~61年。タリウム、クルックスら,1861年。太陽スペクトルからヘリウム、ジャンサンら,1868年︶。天体分光学︵シリウスの視線速度、ハギンズ,1868年︶。水素原子の線スペクトルの可視部系列の発見︵バルマー,1885年︶。X線の発見︵レントゲン,1895年︶。
︹20世紀︺ ︻光学器械、新技術の開発に関して︼ X線分光器︵W・H・ブラッグ,1913年︶。新しい写真法ホログラフィーの発見︵ガボール,1949年、1971年ノーベル賞︶。原子・分子系からの誘導放出を利用したマイクロ波増幅メーザーの開発︵タウンズら,1954年︶。同じく、誘導放出を利用した光の増幅器レーザー︵メイマンら,1960年︶。50年代からの電波望遠鏡の発達、宇宙の観測可能域の拡大︵ライル、ヒューウィッシュ、﹁電波天文学における先駆的な研究﹂で1974年ノーベル賞︶。 ︻新現象、実験法則の発見、理論の検証実験に関して︼ 水素線スペクトル系列︵紫外部についてライマン,1906年、赤外部についてパッシェン,1908年︶。X線回折︵ラウエ,1912年︶。X線と電子の散乱︵衝突過程での光の粒子性の確認、コンプトン,1923年、1927年ノーベル賞︶。媒質中の高速荷電粒子からの光の放出︵チェレンコフ,1937年、古典理論を出したフランク、タムと1958年ノーベル賞︶。核によるγ(ガンマ)線の放出と共鳴吸収におけるメスバウアー効果︵メスバウアー,1958年、1961年ノーベル賞︶。 ︻光速測定に関して︼ 物理の基礎定数としての真空中の光速cは、他の量を決める基準の一つとしてc=299792458m/秒︵定義値︶と決められる︵1983年国際度量衡総会︶。 ︻光に関する理論に関して︼ アインシュタイン、光量子仮説︵光電効果の説明,1905年︶、特殊相対性理論︵光速一定の要請,1905年︶、重力の光の伝播(でんぱ)に対する影響,1911年。チェレンコフ効果の古典論︵フランク、タム,1908年︶。X線干渉の理論︵ブラッグ父子,1912年︶。ボーアの原子模型︵原子スペクトル系列の説明,1913年︶。 ︻光を利用した物性、物質構造、宇宙物理の研究に関して︼ X線による結晶構造解析の始まり︵ラウエ,1912年、ブラッグ父子,1912年︶。元素の固有X線スペクトルと原子番号の関係︵モーズリー,1913年︶。メスバウアー効果,1958年。量子力学の成立︵1920年代︶により、古典光学から、粒子性・波動性の統一的記述可能な量子光学へ。非線形光学、レーザー、メーザーの理論と応用の展開︵1964年、メーザー、レーザーの発明および量子エレクトロニクスの基礎研究で、タウンズ、バソフ、プロホロフにノーベル賞︶。電磁場を含む相対論的場の量子論の展開︵1965年、量子電気力学の分野における基礎的研究で、朝永(ともなが)、シュウィンガー、ファインマンにノーベル賞︶。宇宙物理学の重要発見︵X線星,1962年、電波源天体クエーサー,1963年、絶対温度3Kの宇宙放射,1965年、周期的電波パルスの放出源,1967年。ペンジアス、ウィルソン、宇宙黒体放射の発見により1978年ノーベル賞︶。
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