デジタル大辞泉
「メーザー」の意味・読み・例文・類語
メーザー(maser)
︽microwave amplification by stimulated emission of radiation︾電磁波により分子や原子のエネルギー状態の遷移が行われる際の誘導放出を利用して、マイクロ波を発振・増幅する装置。周波数の安定度がよく、雑音が少ないので、宇宙通信など微弱な信号の受信に使用。1950年代に発明された。
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メーザー
- 〘 名詞 〙 ( [英語] maser microwave amplification by stimulated emission of radiation の各語の頭文字をつないでつくった語 ) 誘導放射を利用した原子系または分子系の電磁波増幅器または発振器。
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メーザー
物質と電磁波との相互作用における誘導放出を利用してマイクロ波の増幅,発振を行わせる装置。メーザーmaserはmicrowave amplification by stimulated emission of radiation︵誘導放出によるマイクロ波増幅︶の頭文字をとったもの。通常の熱平衡状態にある物質では,低いエネルギー準位にある原子や分子が多いので,マイクロ波を照射しても吸収されるだけだが,適当な方法で高いエネルギー準位にある原子や分子を多くした物質では,マイクロ波を照射すると吸収よりも誘導放出が多くなり,原子や分子の内部エネルギーを得てマイクロ波は増幅される。増幅系を共振器の中に置き,出力の一部を共振器にフィードバックしてやると発振させることができる。メーザーでは入力波と出力波の周波数,位相が同じでコヒーレント︵可干渉的︶な増幅が特徴で,周波数変動や内部雑音も少ない。材料により気体メーザー︵ガスメーザー︶と固体メーザーに分かれる。前者は高真空中に気体原子または気体分子をビーム状に噴出させ,高いエネルギー準位にある原子︵分子︶を集束器によって集束し,空洞共振器へ導くもので,原子線︵分子線︶メーザーともいう。水素原子,アンモニア分子などが使われ,周波数の安定した発振が得られるので周波数標準,原子時計などに応用される。後者は常磁性結晶の磁気共鳴を利用し,外部磁場をかけると結晶中に4種のエネルギー準位が現れるので,そのうちの適当なエネルギー準位を選んでメーザーに用いる。人工ルビー,ルチル︵金紅石︶などが用いられ,効率を上げるため極低温にする。低雑音マイクロ波増幅器としてすぐれ,電波天文学,人工衛星による通信,超遠距離レーダーなどに応用される。→レーザー
→関連項目ガスメーザー|タウンズ|プロホロフ|量子エレクトロニクス
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メーザー
maser
microwave amplification by stimulated emission of radiationの頭文字をとって作られた語。アメリカのタウンズCharles Hard Townes︵1915- ︶の命名といわれる。物質と電磁波との相互作用における誘導放出を利用したマイクロ波の増幅や発振,あるいはそのための装置をいう。microwaveのmをlightのlにかえたのがレーザーで,両者はまったく同一の原理に基礎をおいている。
共鳴した電磁波の強度に比例した確率で,励起状態にある原子や分子からの電磁波の放出が誘発される過程︵誘導放出︶の存在は,はやくからアインシュタイン︵1917ころ︶によって予言されていた。電磁波が可視光である場合には単一モードの電磁波の強度を十分に強くできないこと,励起状態の原子・分子の数が極端に少ないことなどのために,この過程は長いこと検知されないままになっていたが,第2次大戦中および戦後のマイクロ波技術の発達によりマイクロ波分光が可能になって検出された。さらにタウンズらは,励起状態の分子だけを集める特殊な装置を考案し,誘導吸収に打ち勝って誘導放出過程のみを起こさせることに成功した︵1954︶。この装置によれば,弱いマイクロ波を︿たね﹀として,ねずみ算的な電磁波の増幅ができ,その結果得られるマイクロ波は,電子管などによって得られるものよりはるかに良質のものとなる。メーザーには動作物質に気体を用いる気体メーザーと,固体を用いる固体メーザーとがある。前者は発振周波数がきわめて安定で,高精度,高分解能の実験や時間標準などにアンモニアメーザーや水素メーザーが利用されている。固体メーザーの場合は,遷移元素イオンを不純物として含むルビーなどの常磁性結晶が動作物質として用いられ,低雑音マイクロ波増幅器として利用されている。なお,宇宙空間など自然界でもメーザー作用が起こるようであり,いくつかの分子のスペクトルについて,非常に強力なマイクロ波が電波天文学の分野で検出されている。メーザーのアイデアはやがて振動数のもっと高い光領域に拡張され,レーザーとしてめざましい発展をとげることになる。
→レーザー
執筆者‥清水 忠雄
メーザー
Justus Möser
生没年:1720-94
ドイツ北部の町オスナブリュックの文筆家,政治家。イェーナとゲッティンゲンの大学で学んだのち,1742年にオスナブリュックの騎士階層の団体の書記となり,そののち弁護士となる。47年にはオスナブリュックの内政・外政にわたる法律問題の全権をゆだねられた。68年以後は全ラントの統治をゆだねられ,有能な政治家として活躍した。1766年以後《オスナブリュッカー・インテリゲンツブラット》(週刊)を発行し,ほぼ同じころに《愛国的幻想》を編んだ(全4巻,1775-86)。また従来の歴史叙述が王侯・貴族のみを扱っていたのに対し,メーザーは農民や手工業者に注目して,経済史の叙述を試みた。《オスナブリュック史Osnabrückische Geschichte》(1,2巻,1768。3巻,1824)は一小都市を扱いながらも全ドイツ史を展望する社会・経済史叙述の試みであった。近代の社会構造史研究の先駆者ともいえる。農民の共同体のなかに自由人の真のあり方をみるメーザーの方法は,伝統を重んずる歴史主義の基礎を築き,政治的には保守主義に傾斜していった。フリードリヒ大王にささげられた《ドイツの言語と文学について》(1781)によってメーザーは言語学や文学においても独特な地位を占めている。
執筆者:阿部 謹也
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
メーザー
メーザー
maser
電磁波の誘導放出を利用して,電磁波の増幅,発振を行う装置.本来はマイクロ波の増幅あるいは発振を行わせるための装置として考案されたものであり,メーザー(MASER)という名前もmicrowave amplification by stimulated emission of radiationの頭文字をとったものである.その後,波長範囲が広がり,ラジオ波や光の領域にまで及び,光のときにはレーザーとよばれるようになった.増幅,発振に必要な負温度の状態を得る方法としては,電磁波を用いるポンピング,分子線を用いエネルギーの高いほうの準位にある原子または分子のみを選択する方法,磁場を急速に反転する方法,あるいは光を用いるポンピングなどがある.おもに原子・分子の超微細構造準位間の遷移,あるいは磁場のなかに置かれた常磁性物質のゼーマン準位間の遷移が用いられている.大別すると,分子線を用いるビームメーザーと常磁性物質を用いる常磁性メーザーとがおもなものである.有名なものとしては,はじめてメーザーとして成功したアンモニアビームメーザー,H原子,Cs原子を用いるビームメーザー,あるいはルビーや,そのほかの常磁性物質(Cr3+,Fe3+,Cd3+)を低温で用いる常磁性メーザーがある.メーザーの重要な性質は,その発振周波数を高い精度で安定化することが可能な点と,増幅器として用いたときに低雑音であることである.その性質のうち,前者は電波の周波数標準あるいは原子時計に応用され,また後者はマイクロ波のとくに低雑音を必要とする受信器の初段増幅器に用いられている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
メーザー
maser
原子や分子の誘導放出を用いて電磁波の増幅発振を行う装置。 microwave amplification by stimulated emission of radiationの頭文字をつないで名づけられた。 1954年 C.H.タウンズが最初の発振に成功したアンモニア分子線を用いたメーザーや,水素の原子線による気体メーザーは周波数安定性がよく,周波数標準に用いられる。また,常磁性共鳴を利用したルビーなどの固体メーザーは低雑音増幅器として電波望遠鏡の初段増幅器に用いられる。反転分布の状態をつくるには気体メーザーの場合は,分子線や原子線に沿った集束電極または集束磁極を用いる。共振器としてはマイクロ波空洞共振器が使われる。のちにこれが発展して光を発振するものとなり,レーザーとなった。
メーザー
Möser, Justus
[没]1794.1.8. オスナブリュック
ドイツの評論家,歴史家。領主司教区オスナブリュックの種々の指導的地位につき,政治家としても活躍。国粋的な方向を目指す歴史観の代表者。ドイツ民族意識の発達にも影響を及ぼし,ゲーテらに尊敬された。主著﹃愛国的幻想﹄ Patriotische Phantasien (4巻,1774~78) ,﹃オスナブリュック史﹄ Osnabrückische Geschichte (2巻,68) 。
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メーザー
Justus Möser
1720~94
18世紀ドイツ,オスナブリュックの法律家,歴史思想家。『オスナブリュック史』(1768年)や『愛国の幻想』(1774年)を著し,現在の社会が過去から歴史的に形成されたものであることを説き,ドイツの歴史主義的思考に強い影響を与えた。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
世界大百科事典(旧版)内のメーザーの言及
【オスナブリュック】より
…しかし17世紀にいたるまで,この町はほとんど帝国直属都市と同じような位置をもちつづけることができた。18世紀の後半には[J.メーザー]が事実上この町の行政の責任者となり,その体験のなかから︽愛国者の幻想︾や︽オスナブリュック史︾が生まれた。19世紀にはシュテューベCarl Bertram Stüve(1798‐1872)が市長となり,ハノーファー地区の農民解放に尽くし,メーザーの︽オスナブリュック史︾の後編を書いている。…
【レーザー】より
…低いエネルギー状態(エネルギー準位)にある分子(あるいは原子,イオン)の数より高いエネルギー状態にある分子の数のほうが多いという非熱平衡分布([反転分布])をしている物質系に,共鳴する光を作用させて,誘導放出過程によって,コヒーレントな光の増幅を起こさせることおよびそのための装置をいう。lightをmicrowave(マイクロ波)におきかえた[メーザー]maserと同じ原理に基づく。
﹇原理﹈
分子(または原子,イオン)から電磁波(光もマイクロ波もその一種)が放射される機構は,自然放出と誘導放出の二つに大別される。…
※「メーザー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」