デジタル大辞泉
「助動詞」の意味・読み・例文・類語
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じょ‐どうし【助動詞】
(一)〘 名詞 〙
(二)① 西欧語で、もともと独立した動詞であったものが、他の動詞を補助して相︵mood︶や時︵tense︶などを表わす役目を持つようになったもの。独立性の点で、日本語の補助用言に近い。
(三)② 日本語で付属語のうち、活用のあるもの。他の自立語︵詞︶、または自立語を含む連語に付属して、叙述の意義を補ったり、話手の判断の性質を表現したりする。助詞とともに、付属語、または辞と呼ばれる。動辞。︹語法指南︵1889︶︺
助動詞の補助注記
(1)助動詞の種類は、次のように分けられる。( イ )意味から見て━受身・可能・自発・使役・尊敬・丁寧・打消・過去・完了・推量・未来・意志・希望・指定・比況・様態・伝聞推定・詠嘆など。( ロ )接続から見て━未然形に付くもの・連用形に付くもの・終止形に付くもの・連体形に付くもの・已然形に付くもの・命令形に付くもの・種々の語に付くもの。( ハ )活用形式から見て━動詞型活用・形容詞型活用・形容動詞型活用・特殊活用。
(2)﹁使役・受身︵可能・自発︶・希望﹂の助動詞とその他の助動詞との間に、文節構成上の役割の違いが認められ、学説によってはこれを接尾語とする。
(3)﹁助動詞﹂という用語は明治初年に見られるが、まだ一品詞とは認められず、動詞の項で説明され、現在の助動詞以外のものも含められている。
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助動詞
じょどうし
日本語の品詞の一つ。辞のうち活用のあるもの。活用のない助詞とともに膠着(こうちゃく)語としての日本語の一大特色をなす。述語の中心をなす詞︵主として動詞であるが、体言の場合もある︶に付いて述語の構成にかかわり、その動詞の表す事態や陳述を補うが、相互に連接して用いられることも多い。一般に助動詞は語すなわち単語の一類として扱われているが、語以下の単位として扱う立場もある。山田孝雄(よしお)は、用言が本来の語尾のみでは表しきれない種々の陳述や属性の表現をなすために、その語尾が複雑に分出したものであるとして複語尾と名づけた。橋本進吉(しんきち)も、ある種の助動詞はむしろ接尾辞に入れるべきであるとしている。活用があるという点に関しても、いわゆる不変化助動詞︵現代語ではウ・ヨウ・マイ︶の存在に注意する必要がある。一般に助動詞とされているのは表1の諸語である。このほか指定の意のアルを時枝誠記(ときえだもとき)は助動詞とするが、一般には補助動詞とする。また、テイル、テシマウ、テヤル、テモラウ、テミルなども動詞について助動詞と同様の働きをなすが、上接語との間に助詞﹁は・も﹂が入りうる︵笑ってはいるけれど︶など、多少独立的なため、補助用言︵補助動詞とも︶とされる。助動詞として認定される語は学説によって異なる。たとえば、時枝誠記は表1のうち、①レル・ラレル・セル・サセル・タイの諸語は客体的なもののあり方にかかわる表現であるところから、助動詞すなわち辞の一種ではなく、詞に属する接尾語であるとし、②ソウダ・ヨウダは形式名詞のソウ・ヨウに指定の助動詞ダのついたものとして分解する。山田孝雄は、﹁ダ・デス・あり︵アル︶・なり・たり・ごとし﹂などを形式用言︵このうち﹁あり︿アル﹀・なり・たり﹂などはとくに存在詞と名づける︶として複語尾から外す。
助動詞の分類は諸種の観点からなされる。
(1)活用の型による分類――動詞型、形容詞型、形容動詞型、特殊型など。
(2)接続による分類――未然形接続、連用形接続、終止形接続、連体形接続、命令形接続︵文語のみ。已然(いぜん)形接続とする説もある︶、および体言接続。
(3)意味による分類――これには種々の説がある。大槻文彦(おおつきふみひこ)は、所相、勢相、使役相、指定、打消、過去、未来、推量、詠嘆、比況に分けた。山田孝雄は表2のような分類を行い、それが接続する語の活用形による分類や承接順位ともかかわることに触れた。これに近いが、他の語に対する関係をも考えたものに、安田喜代門(きよもん)︵1896―1980︶の分類がある。
(4)相互承接の順位による分類――先の接続による分類と意味による分類とが互いに密接な関係にあることは、すでに山田の指摘したところであるが、橋本進吉はさらに助動詞の相互承接順位のもつ意義の重要性を説き、それが意味や接続による分類、さらにはそれ自身の活用ともかかわるものであることを指摘した︵表3︶。
(5)構文的職能による分類――渡辺実(みのる)︵1926―2019︶は、真に文法的な分類とは構文的職能によるもの以外にありえぬとして、その職能と助動詞の相互承接順位との接点において2種6類に分類した︵表4︶。ただし、渡辺自身の品詞分類では助動詞をたてていない。北原保雄(やすお)︵1936―2024︶も構文的職能を規準とし、どのような格の統括機能を具有するかによって分類しうるとする︵表5︶。
助動詞という名称は英文典のauxiliary verbの訳語︵田中義廉(よしかど)︵1841―1879︶著﹃小学日本文典﹄1874︶といわれるが、auxiliary verbは、もと本動詞であったものが、他の動詞の不定詞または分詞と結合して、なんらかの補助的意味を加えるようになったものであり、動詞に先行し、独立的である点で、むしろ日本語の補助用言のほうに近い。古く助詞、助動詞のほかに活用語尾、接尾語、一部の副詞などを雑然と含んでいたテニヲハの語が、近世以後研究の進展とともにしだいに助詞と助動詞のみをさすようになり、しかも両者の差を活用の有無によって認識するようになると、助詞の静辞(すわりてには)、躰助語(ウゴカヌテニヲハ)などに対して動辞(うごきてには)、用助語(ウゴクテニヲハ)のような名称も用いられた。
﹇青木伶子﹈
﹃大槻文彦著・刊﹃広日本文典﹄︵1897︶﹄▽﹃安田喜代門著﹃国語法概説﹄︵1928・中興館︶﹄▽﹃山田孝雄著﹃日本文法学概論﹄︵1936・宝文館︶﹄▽﹃橋本進吉著﹃助詞・助動詞の研究﹄︵1969・岩波書店︶﹄▽﹃松村明著﹃古典語現代語助詞助動詞詳説﹄︵1969・学燈社︶﹄▽﹃渡辺実著﹃国語構文論﹄︵1971・塙書房︶﹄▽﹃吉田金彦著﹃現代語助動詞の史的研究﹄︵1971・明治書院︶﹄▽﹃此島正年著﹃国語助動詞の研究 体系と歴史﹄︵1973・桜楓社︶﹄▽﹃北原保雄著﹃日本語助動詞の研究﹄︵1981・大修館書店︶﹄
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助動詞【じょどうし】
品詞の一つ。英文法などでは本動詞の不定詞または分詞と結合して特定の時制,態,法を表す特殊な動詞をいい,時制の助動詞︵will,shall,have,be︶,受身の助動詞︵be︶,法の助動詞︵will,shall,may,must,can,doなど︶に大別される。日本語では,単独では文節を構成し得ない語のうち,活用のあるものをいい,用言または体言に接続して,何らかの意味を添え,また言語主体の種々の判断・感動を表す。意味によって,受身・可能・自発・尊敬︵れる・られる︶,使役︵せる・させる︶,丁寧︵です・ます︶,打消し︵ない・ぬ︶,過去︵た︶,推量︵う・よう︶,推定︵らしい︶,希望︵たい︶,指定︵だ︶,比況︵ようだ︶,様態・伝聞︵そうだ︶などに分けられ,また活用形式によって,動詞型︵れる・せる等︶,形容詞型︵たい・らしい等︶,形容動詞型︵だ・ようだ等︶,特殊型︵う・よう等︶に分けられる。
→関連項目相︵言語︶|日本語
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助動詞
じょどうし
auxiliary verb
(1) 西洋語においては,独立性をもった単語ではあるが,文法的意義特徴を多く有し,本動詞と結びついて,時制,態,法,相などの文法範疇を形成する役割を果すものをいう。英語の will,shall,may,have (完了相) ,be (受動態) など。 (2) 日本語では普通,付属語 (辞) のうち活用のあるものとされている。しかし,その所属内容の点では学説により異なり,特に,(ラ) レル,(サ) セル,タイなどを助動詞とみるか,接尾辞とみるかで分れている。一方,服部四郎の単語認定法によると,普通に助動詞とされているもののうち,ダ,デス,デショウ,ラシイなどごく少数が﹁付属語﹂で,残りは単語の一部 (﹁接合形式﹂) にすぎないと分析される。日本語では,(1) に相当するものの一部が﹁補助動詞﹂である。なお,山田孝雄の文法論では,助動詞の名称を用いず,その大部分を,用言の語尾が複雑に発達したものとして﹁複語尾﹂と呼んで,﹁単語﹂とは認めない。
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世界大百科事典(旧版)内の助動詞の言及
【態】より
…たとえば,エチオピアのアムハラ語では,mätta︿打つ﹀,tämätta︿打たれる﹀,asmätta︿打たせる﹀のように,基本語幹形に,それぞれtä‐やas‐という接頭辞を付加することによってあらわされる受動態や使役態が存在する。また日本語では,態の違いは通常助動詞によって区別され,受動(受身),使役,可能,自発などの態を認めることができる。また︿しまる﹀―︿しめる﹀にみられる自動と他動の対立も,態における対立ということができる。…
【品詞】より
…日本語においては,数や順番を表すものは,普通の名詞であるといってよいであろう。
[助動詞]
ある運動・動作の本質そのものでなく,その運動・動作の起こった(起こる)時と現在とのおおまかな時間的関係とか,その運動・動作に対する話し手の意図等とかを,動詞に近接して用いられる単語で表し,それらの単語が一つの範疇を形成する時,〈助動詞〉という名称が与えられることが多い。この種の事象の表し方は,言語によってきわめて多様な状態を呈するものであり,助動詞と呼びうる品詞(あるいは下位範疇)の存在しない言語もある。…
※「助動詞」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」