デジタル大辞泉
「勾配」の意味・読み・例文・類語
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こう‐ばい【勾配】
(一)〘 名詞 〙
(二)① 水平面に対する傾き。また、その度合。︹日葡辞書︵1603‐04︶︺
(一)[初出の実例]﹁此屋の上宇は、︿略﹀勾倍(コウバイ)寛(ゆるやか)にして、観台ともなすべしとて﹂(出典‥米欧回覧実記︵1877︶︿久米邦武﹀一)
(三)② その場に応じての判断のはやさ。→勾配が温(ぬる)い・勾配が早い。
(四)③ 和船の一つ。町屋形船のうちで最も小さいもの。紅梅。︹和漢船用集︵1766︶︺
(五)④ 数学で、直線の方向を示す数。直線がx軸となす角の正接をいう。傾き。方向係数。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
勾配 (こうばい)
こう配とは斜面や坂道の傾きのことである。その傾きの程度の表し方として,斜面と水平面との角がαであるとき,その角の正接︵タンジェントtangent︶の値,すなわちtanαをその斜面のこう配という。例えば,まっすぐな坂道があって,その坂道を水平距離で測って1000m進む間に60m高くなるならば,その坂道は1000分の60の登りこう配であるという。数学においては︿こう配﹀を次のように定義して用いる。
直線のこう配
平面上に直交座標︵x,y︶を定めると,この平面上のy軸に平行でない直線はy=ax+bと一次式で表され,この直線がx軸となす角をαとするとa=tanαであるから,aをこの直線のこう配,傾き︵slope,inclination︶,または方向係数という。微分可能な関数y=f︵x︶で表される曲線が与えられたとき,その上の点︵a,f︵a︶︶における曲線の接線はy-f︵a︶=f′︵a︶︵x-a︶で表されるから,その接線のこう配はf′︵a︶である。
ベクトル解析における関数のグラディエント
二次元空間R2で定義された偏微分可能な関数f︵x,y︶に対して,︵fx︵x,y︶,fy︵x,y︶︶なる成分をもつベクトル値関数︵ベクトル場︶をfのこう配,またはグラディエントgradientといい,gradfまたは∇fで表す。三次元空間R3で定義された関数f︵x,y,z︶に対しても,同様にベクトル値関数︵ fx,fy,fz︶をgradfまたは∇fと書いて,fのグラディエントという。
→ベクトル解析
執筆者‥伊藤 清三
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勾配
こうばい
(1)数学用語 傾斜面の傾きを示す度合いを勾配という。水平面と傾斜面があるとき、直角三角形をその斜線が傾斜面に沿うようにとり、勾配を、底辺に対する垂線の比で表す。すなわち、斜線と底辺のなす角の正接︵タンジェント︶が勾配である。一次関数のグラフは直線であるが、その直線の横軸に対する勾配は一次関数の一次の項の係数である。これをその直線の勾配という。この場合、勾配のことを傾きともいう。
(2)鉄道では、線路の勾配を、その坂が水平面となす角の正接の1000倍で表している。つまり、勾配が67ということは1キロメートルについて67メートル上がることである。また、屋根の勾配は1尺について立ち上がり何寸で表す。6寸勾配といえば勾配が0.6、角度にして約31度である。
﹇柴田敏男﹈
(3)物理学用語 位置に対する物理量の変化率のことを勾配という。たとえば温度の勾配があると、温度の高い場所から温度の低い場所に熱の移動がおこる。これが熱伝導である。物体内の等温面に垂直な方向に移動する熱の量は、温度勾配に比例する。この場合の比例定数を熱伝導率という。熱伝導率は、厚さ1メートルの板の両面の温度差が1℃のとき、1平方メートル当りに毎秒流れる熱量をワットで表したもので、銀では400、水で5~6、常温の空気で0.024程度である。
川底の流れは小さいが、川底から離れると流れが大きくなる。このように流体の速度に勾配があると、流れの速さを一様にしようとする力が現れる。この性質を粘性という。この場合の力も速度の勾配に比例する。
﹇田中 一﹈
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勾配【こうばい】
︵1︶傾きとも。直交座標系でy軸に平行でない直線の式がy=ax+bで与えられたとき,aがこの直線の傾き。この直線がx軸の正方向となす角をαとするとき,αの正接︵tan α︶がその直線の傾きに等しい。日常的には直線,平面が水平面となす角の正接をいう。︵2︶ベクトル解析では,微分可能なスカラーΦ︵x,y,z︶の場が与えられたとき,∂Φ/∂x,∂Φ/∂y,∂Φ/∂zを成分とするベクトルの場をΦの勾配または傾きと呼び,gradΦと書く︵グラディエントΦと読む︶。
→関連項目演算子|回転︵ベクトル︶|発散︵数学︶|ポテンシャル
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勾配
こうばい
slope; incline
(1) 傾斜面の傾きを示す度合い。普通には傾斜面が水平面となす角度αの値で示すか,その正接 tan α の値で示される。鉄道では,線路面の水平面に対する傾斜の度合いを,水平距離 1000mに対する高度差で示す。たとえば 1000m行くと 20mの高所に上がる場合は,勾配20パーミル (記号‰) と呼び,勾配標式には20と書いて示す。 (2) 数学における勾配ベクトルをいう。
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こうばい【勾配】
水平面に対する傾き。傾斜(けいしゃ)の度合い。土地の傾きのほか、住宅の屋根や配管などの傾斜などもいう。
出典 講談社家とインテリアの用語がわかる辞典について 情報
出典 リフォーム ホームプロリフォーム用語集について 情報
世界大百科事典(旧版)内の勾配の言及
【地理的こう配(地理的勾配)】より
…J.S.ハクスリー(1938)によって提唱された形質の連続変化を意味するこう配clineの一つで,生物の種内または種間変異が地理的な場所により少しずつ異なり,ある形質を測定すると一定方向に連続的な変化を示す現象をいう。日本列島でも,北から南へいくにつれて連続的に変化する多くの例が知られている。…
【ベクトル解析】より
…ベクトル値関数の微分,積分などに関連する性質を扱うのがベクトル解析である。
﹇ベクトルの微分と積分﹈
例えば一つの質点が三次元空間の中を運動しているとき,その位置を表すベクトルr(x,y,z)は時間tの関数としてr=r(t)と表される。ベクトル値関数rの変数tに関する微分は,ふつうの実数値関数のときと同様に,
と定義する。
も同じように定義すると,
はそれぞれ運動する点の時刻tにおける速度ベクトル,加速度ベクトルを表す。…
※「勾配」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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