物理学(読み)ブツリガク(英語表記)physics 英語

デジタル大辞泉 「物理学」の意味・読み・例文・類語

ぶつり‐がく【物理学】

物質の構造・性質を明らかにし、それによる自然現象の普遍的な法則を研究する自然科学の一部門。運動電磁気などの諸現象をはじめ、素粒子宇宙線量子エレクトロニクスなど対象は広く、精密な実験によって量的な把握を行い、数学を応用して表すことに特徴がある。
[類語]理科化学地学生物学

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精選版 日本国語大辞典 「物理学」の意味・読み・例文・類語

ぶつり‐がく【物理学】

 

(一)   
(一)[](1876︿)


(1)西
(2)︿使 wijsbegeerte 西 physics 
(3) natural philosophy 使

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「物理学」の意味・わかりやすい解説

物理学
ぶつりがく
physics 英語
physique フランス語
Physik ドイツ語

はじめに


physicφυσιξPhysicaphysics

 1819natural philosophy使18physiqueOpuscules physiques et chimiques19physiologyphysicianphysicienphysic

 19Annales de chimie et de physiqueJournal de physiqueAnnalen der Physik und Chemiephysique, Physik


物理学の対象



 ()

 


物理学と化学の境界

物理学の対象の特徴を化学のそれと対比的にあげるならば、それは次のようなものであるといえる。まず、物理学は自然のあらゆる対象物の基本的構造と一般的運動を認識しようとする。もちろん物理学においても、特殊的対象に固有な運動法則や構造をも研究するが、それはより普遍的な法則を探りあるいは検証するためであったり、より基本的と考えられる構造の発現をみるためなど、つねに一般的なものとの関連で探究される。このようにして物理学の対象は、大は宇宙や銀河系の問題から、小は原子や素粒子の問題に至るまでが含まれる。化学はこれに反して、原子が構成する分子(それはまた化学的物質種の基本単位とも考えられるが)および分子の結合体についての構造と変化を研究対象としている。化学のこの研究対象は一見、物理学の対象の一部にすぎないようにみえるが、実はそうではない。数十ないし100余種の原子の組合せでつくられる化合物分子はその種類が膨大であるということだけをここでいっているのではない。それらのなかには、化学の固有の概念、たとえば原子価、結合、基、酸化・還元などが存在する。物質的対応をもつこれらの概念を、物理学的に、すなわち基本的な物質の一般的な運動法則によって基礎づけることは可能であろう。しかし、そのことによって化学に固有なこれら質的概念が物理学的運動法則に解消されてしまうものではない。それは、たとえば、生物を形成している物質が化学的に分析され、生命現象のあるものが物理学や化学によって基礎づけられたといっても、生命が無機的な物質に帰着されたのではない、というのと同様である。

 自然的物質のなかで、「生物」は特別なものであり、物理学の研究対象からはいちおう除外される。もちろん、生物学と物理学の研究領域も浸透しあってきている。しかし、生体物質を物理学の研究対象として取り入れつつあるとはいっても、物理学と生物学との距離は、物理学と化学とのそれよりはるかに大きい。生物の個体の発生・成長、あるいは増殖や進化は生物固有の概念であり、それらを基本的な物質とその一般的な運動法則という物理学の概念から理解するのは、いまだはるかに遠いところにあるというべきであろう。

[宮原将平・高木修二]

物理学の方法

物理学は、他の自然科学の諸分科と同じように、実験的ならびに理論的な方法によって研究される。「実験」を広義に解すれば、観察、観測などもそのなかに含まれる。しかし、物理学においては、狭義の「実験」すなわち環境条件を整え、諸パラメーターの値を制御し、一つの物理量を精密に測定し、あるいは2量間の数量的な関数関係をみいだすという、いわゆる精密実験を重視する。このことは、物理学が運動の量的側面を重視して研究が行われることと深くかかわっている。しかし同時に、実験のもつ質的発見の意義も大きい。X線の発見、放射能の発見、超伝導の発見などがその好例である。

 物理学の理論的方法の特徴は、実験の量的な精密さに応じて数学を広く深く応用するところにみられる。数学の多方面の分科が物理学の理論的研究のための手段として使われている。しかし、理論的方法は数学の応用だけに限られているものではない。類推、理想化、模型の設定なども理論においてきわめて重要な役割をする。このことは、たとえば、原子模型の形成なくして原子理論が成立しえたかどうかを考えてみればわかることであろう。

 また、理論的方法は単に実験結果の解釈のために用いられるだけではない。いろいろな法則の統一的理解という物理学の基本的課題を追究するために、それらの法則をどのような概念の枠組みでとらえるかという、理論的課題の設定が重要な意味をもっている。アインシュタインの相対性理論が、マイケルソン‐モーリーの実験の解釈としてでなく、力学と電磁気学の統一という理論的課題の解決として生み出されたことを忘れてはならない。

 実験的方法と理論的方法とは、単純に直列的あるいは並列的にあるのではなく、複雑に絡み合い、ときには助け合い、ときには互いに矛盾することもありながら、全体として物理学的自然認識を深める役割をしている。ある実験は理論の検証に役だつこともあるが、またある実験的発見はそれまでの理論と矛盾し、そのために理論を発展させ、さらに包括的な新しい理論をつくりだすために役だつことも少なくない。

 実験的方法に加えて考えておかなければならないのは、実験装置、手段の開発である。これは、それ自身自然を知るための研究ではない。しかし、それは実験的研究にとって不可欠のものである。同様に理論的方法における数学的手段そのものの研究も一定の役割をもっている。

 これらの方法を考える場合にもっとも基本的なことは、いうまでもなく、方法は対象によって規定されているということである。それゆえ、物理学の方法にとってもっとも本質的なものは、個々の実験的あるいは理論的な方法、手段でなく、正しい自然観をまず確立することであるというべきであろう。

[宮原将平・高木修二]

物理学の諸分科



 沿2020

 202019

 

 便


原子核物理学と物性物理学(物性論)



 

 

 使

 使Institute for solidstate physics


物理学の分類例



 便200214(1)(2)(3)(4)20036(1)(2)(3)(4)(5)(6)便

 2003(1)(2)(3)(1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)(8)(9)(10)X(11)(12)(13)

 






天文学



 

 


情報科学

使


地学

結晶学は固体物理学の一つの基礎的分科といえるが、もともとは地学の一分科である鉱物学からおこったものであった。X線が結晶の構造解析に使われるようになってから、物理学と鉱物学の境界領域に位置するものと考えられ、さらに化学とも密接に関係するものとなっている。また、地球物理学は地学の分科でもあるが、物理学の周辺分科とも考えられる。地球物理学は、初めは弾性体力学や流体力学や熱力学が、地殻や海洋や陸水や大気というマクロ物体に適用されたものであり、物理学の一つの応用として出発した。しかし、地球を歴史的に変化する複合された対象としてとらえ直すとき、それは地球科学の分科としての地球物理学へと変わりつつある。一方、地質学は地殻を対象としており、元来、地球の歴史性を重視している。それゆえ、現在では、対象の特殊性に即して、地質学と地球物理学を一体とみて固体地球科学という領域が考えられるようになっている。地球物理学の他の分科である海洋学や気象学は、応用科学としての面が大きい。

[宮原将平・高木修二]

生物学

物理学と生物学との境界領域は著しく発達しつつあるものである。物理学の対象はもともとは無機的自然であって生物を含まない。一方、生体物質としてもっとも重要なタンパク質や核酸はそれ自身は生物ではない。それら生体物質の化学的組成や生体内の化学反応を研究するものとして、初め生化学が生まれたが、それら生体物質の原子・分子的構造を研究し、また生物的機能の基礎的なものを物性物理学的方法で研究するものとして生物物理学が生まれた。生物物理学は、初め物理学的手段を用いての生物研究のように考えられたが、現在では、むしろ物理学がその対象として生体物質をも取り入れたものと考えるべきであろう。生物物理学の核心的部分は分子生物学と考えられ、それは生物学の一つの基本的分科とも考えられるまでになってきている。

[宮原将平・高木修二]

生理学・心理学

物理学はさらに生理学や心理学との境界領域をもっている。音響学や色彩学がその例である。色は物理的であるばかりでなく心理的なものである。たとえば、色彩を量的に(座標を用いて)表現しようとすれば、そのスペクトル分布をそのまま使うことは適当ではない。三原色原理がすでに明らかにしているように、色彩の量的表現すなわち色座標は、心理的な色彩空間に対応してつくられている。これらの境界領域もまた応用科学の面と結び付いている。電気音響学、建築音響学、照明学、映像工学などは、これらと深く関係する応用科学である。

[宮原将平・高木修二]

物理学の歴史

物理学史とは



 

 

 

 

 

 

 
ギリシア自然学――自然観と論証の導入



 

 調()

 

 
ルネサンスと実験科学の成立



 ()F()

 ()退()()

 1617

 
ニュートン力学の形成――普遍的論理と決定論

コペルニクス、ガリレイ、ケプラーをそれぞれピークとしてほぼ達成された天体運動の解析と、地上の物体の運動を解明したガリレイの動力学の後を受けて、両者を結合し自然界を統一的に把握する力学的世界をつくりだしたのはニュートンである。万有引力による天上界と地上界の一体化であった。デカルトの慣性法則を力学の基礎に位置づけ、運動の原因としての力の概念を確立し、さらにホイヘンスの業績にかかわる作用と反作用の法則を置いて、ここに力学は論理体系として完成化される。質量概念、力の概念の不明確さや遠隔力としての万有引力の形而上(けいじじょう)学的性格は残っても、その緻密(ちみつ)な論理構成と流率法(微分法)による数学的武装のみごとさは、近代科学の範とするに足るものであった。万有引力の形而上学的性格をめぐるデカルト主義との対立はニュートンをして「われ仮説をつくらず」といわしめたが、これとてフランス革命政府の手による地球子午線の測定によって一つの決着がつけられて以後は、ニュートン主義の確たる勝利として力学的世界像の定着をもたらすこととなる。デカルト的連続世界にかわる粒子的描像、物質とは独立な絶対時間と絶対空間、それらによる因果的・決定論的記述、等々はやがて力学的世界観を基礎づけ、物理学を支配するものとなった。それは「理性の時代」を支える精神的支柱であった。

 なお、ニュートン的決定論では、いままでの全能者神は、初期条件を定める創造者の位置に後退する。名誉革命を経たイギリスの、立憲君主制の成立という時代的背景は、かならずしも偶然ではないであろう。

 やがて現出される数理的科学の時代もこの延長線上に把握することができる。ラプラスの活躍や、静力学と動力学を統一したダランベールに発する解析力学の進展は、力学の内容をより精細に、さらに豊かに内容づけて、海王星の予言と発見に至る力学の勝利の行進を彩った。

[藤村 淳]

物理学的自然の多様性と力学的自然観



 1918219

 

 ()

 ()

 19

 KD

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 19

 
物理学の変革

19()

 ()

 ()()

 Xα()β()γ()()JH

 

 

 19JJ

 

 

 
物理学の多角化と社会化

1932

 ()

 使()

 

 

1219481919651967 111972197812471319801994111982198519831001984 1987199119913010199420021997LM202031999219992000200120032019531965219681973 319741977JD197619781980F1982198319901994201999西2001

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改訂新版 世界大百科事典 「物理学」の意味・わかりやすい解説

物理学 (ぶつりがく)
physics


︿physics︿︿︿︿︿18633調651725771︿81physics

 physicsphysis︿physeinphysika︿physikaphysica使︿de rerum natura︿

 physics16使physicianphysiologiaphysiology︿physics19︿physicistW.1840︿

 



 ︿12西13西姿161712


18︿︿1718

 2︿

 2

 PWVWPVPWV12

 宿


1G.︿anima motrix2

 32fmαmfαPWV18

 18︿1819

 ︿︿mechanisticmechanics
  

19

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 19

 20
   

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「物理学」の意味・わかりやすい解説

物理学
ぶつりがく
physics

 
1920  

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百科事典マイペディア 「物理学」の意味・わかりやすい解説

物理学【ぶつりがく】

自然界全体をできるだけ包括的に説明できるような統一的理論体系を,数学を用い構成することを目標とする自然科学の一分野。化学が物質の構造や質的変化を扱うのに対し,運動とエネルギーを主対象とするが,境界は明確でなく,両者合わせて無生物世界研究の基礎部門をなす。古くから静力学,音響学,光学等が発展,17世紀に動力学,19世紀に電磁気学,熱力学等が建設され,ニュートンの力学とマクスウェルの電磁気学を根幹とする古典物理学の体系がほぼ完成された。また理論物理学と実験物理学の別もある。20世紀に入り相対性理論,量子力学の新理論体系が生まれ,これを用いて原子物理学が急激に発展,素粒子論と物性論が現代物理学の最先端の分野となっている。さらに,生命現象を物理学的な方法で研究する生物物理学も新しい展開を見せ,物理学が包摂する領域は大きな広がりを見せつつある。→分子生物学
→関連項目自然学

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世界大百科事典(旧版)内の物理学の言及

【医学】より


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 12physicsmagistrein physicadoctor medicinae

※「物理学」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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