デジタル大辞泉 「古気候」の意味・読み・例文・類語 こ‐きこう【古気候】 過去の気候。現在の気候に対し、特に地質時代の気候を指す。繰り返し起きた氷期や間氷期をはじめ、過去の気候変動を研究する学問分野は古気候学とよばれる。 出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
日本大百科全書(ニッポニカ) 「古気候」の意味・わかりやすい解説 古気候こきこう 地質時代における気候。動植物化石の種類、古動物相、古植物相とその分布、氷河遺跡、酸素の同位体︵アイソトープ︶比、堆積(たいせき)岩・堆積物の性質と堆積環境、地形、古地磁気、炭素14年代測定︵炭素14法︶などの手段を用いて研究される。実際に推定が可能で研究の対象になっているのは、露頭やボーリング・コアの連続試料を用いての古気候︵古植生︶の変遷や温度︵古水温︶変化、気候帯を特徴づける示相化石や堆積物︵岩︶の分布を手がかりに過去の気候帯の特定︵たとえば浅海生物礁石灰岩の分布から地質時代の熱帯域を特定するなど︶、風成塵(じん)や黄土︵レス︶、黒土堆積物の分析から乾燥気候︵氷期︶および湿潤気候︵間氷期︶、風向などを明らかにする研究などである。たとえば、ラテライトという土壌は、岩石が著しく風化して、鉄とアルミニウムに富むようになった赤褐色の土壌であるが、温暖で雨期と乾期が交互に訪れるモンスーン︵季節風︶地方、サバナ地方によく発達する。現在の日本では九州最南端がその分布の北限であるが、更新統中には日本各地からこの土壌がみられる。したがって、この土壌が形成された時期は更新世︵洪積世︶の氷河時代中の間氷期にあたり、日本は温暖であったと考えられる。 地球の過去には、この第四紀更新世のほかにも、数多くの氷河時代があり、とりわけ先カンブリア時代最末期と古生代ペルム紀︵二畳紀︶に大規模な氷河時代があったことが知られている。 ﹇阿部勝巳・小澤智生 2015年8月19日﹈ ﹃鈴木秀夫著﹃氷河期の気候﹄︵1977・古今書院︶﹄▽﹃町田洋・大場忠道・小野昭・山崎晴雄・河村善也・百原新編著﹃第四紀学﹄︵2003・朝倉書店︶﹄▽﹃安田喜憲著﹃気候変動の文明史﹄︵2004・NTT出版︶﹄▽﹃ブライアン・フェイガン著、東郷えりか訳﹃古代文明と気候大変動――人類の運命を変えた二万年史﹄︵2005・河出書房新社︶﹄▽﹃成瀬敏郎著﹃世界の黄砂・風成塵﹄︵2007・築地書館︶﹄ [参照項目] | 化石 | 間氷期 | 気候帯 | 更新世 | 古気候学 | 古地磁気 | 示相化石 | 先カンブリア時代 | 炭素14法 | 地質時代 | 氷河時代 | 氷期 | ペルム紀 | ラテライト | 露頭 出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
世界大百科事典(旧版)内の古気候の言及 【気候変化】より …歴史時代,地質時代に及ぶ気候変化を抽出するためには,さまざまな指標を用いる。すなわち,歴史時代の古気候は古文書,古日記,伝説,民族の移動などの記録・伝承や樹木の年輪の間隔などを用い,地質時代については,地形,堆積物(たとえば氷河地形やその跡),古地磁気,古生物,貝などの古生物が摂取した酸素の同位元素比(18O/16O。生息時の海水温を推定する),植物の花粉(花粉分析)などを指標にして気候変化を探る。… ※「古気候」について言及している用語解説の一部を掲載しています。 出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」