デジタル大辞泉
「唐物」の意味・読み・例文・類語
から‐もの【唐物】
1中国、およびその他の外国から輸入された品物。舶来品。とうぶつ。﹁唐物茶器﹂
2 古道具。
とう‐ぶつ︹タウ‐︺︻唐物︼
中国、その他の諸外国から渡来した品物。舶来品。からもの。とうもつ。
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から‐もの【唐物】
(一)〘 名詞 〙
(二)① 中国およびその他の外国から輸入された舶来の品物の総称。とうもつ。とうぶつ。
(一)[初出の実例]﹁今間従二京中一朝使来、収二買唐物一﹂(出典‥園城寺文書‐元慶六年︵882︶正月四日・陳泰信書状)
(二)﹁もろこしの人のくるごとにからものの交易し給て﹂(出典‥宇津保物語︵970‐999頃︶内侍督)
(三)﹁此所唐物(カラモノ)の買置、勝れて安き相場物の年累ねても損ぜぬ物買置きて﹂(出典‥浮世草子・日本永代蔵︵1688︶五)
(三)② =からおりもの︵唐織物︶
(一)[初出の実例]﹁但し、祝ひにはからものは、打ちまかせてはきぬもの也﹂(出典‥満佐須計装束抄︵1184︶三)
(四)③ 古道具の称。
唐物の語誌
(1)平安時代には、舶来品について﹁貨物﹂﹁雑物﹂﹁方物﹂﹁土物﹂﹁遠物﹂等のいろいろな表現がなされるが、﹁唐物﹂は中国製品あるいは中国経由の輸入品に使用され、渤海や新羅からの輸入品には使用されていない。舶来品一般をさす言葉としてではなく、文字どおりの意味で使用されていたと考えられる。
(2)﹁唐物﹂は、﹁とうもつ﹂﹁とうぶつ﹂等︵中世・近世のキリシタン資料・辞書他にある読み方︶と読まれていた可能性もあるが、﹁宇津保物語﹂や﹁源氏物語﹂の仮名書例や、交易唐物使のことを﹁古今集﹂等で﹁からもののつかひ﹂といっていることなどから、日常的に﹁からもの﹂と読まれていた可能性が高い。
とう‐ぶつタウ‥︻唐物︼
(一)〘 名詞 〙 中国および外国から渡来した品物。近代以降にはもっぱら西洋からの輸入品、特に衣料などをさす。舶来品。とうもつ。からもの。
(一)[初出の実例]﹁不レ費二一銭一得二唐物一、寄レ身偏レ愛惜二風霜一﹂(出典‥菅家後集︵903頃︶題竹床子)
とう‐もつタウ‥︻唐物︼
(一)〘 名詞 〙 ( ﹁もつ﹂は﹁物﹂の慣用音 ) 中国、または、その他の諸外国からの輸入品。特に、漢方の薬種についていう。からもの。とうぶつ。
(一)[初出の実例]﹁コノ ヲンワヅライノ ビャウシャウニワ tǒmotmo(タウモツモ) ワヤクモ モチユルニ タラヌ﹂(出典‥天草本伊曾保︵1593︶狼と狐の事)
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唐物 (からもの)
中国から舶載された品物の総称。これを唐物︵とうぶつ︶といったときは,中国以外の外国からの輸入品をも含む場合があり,︿とうぶつ﹀は,江戸時代以後の表現である。唐物の用例は平安時代にさかのぼり,︽源氏物語︾若菜・上に,︿帝,東宮を初め奉りて心苦しく聞召しつつ蔵人所,納殿︵おさめどの︶のからものども多くたてまつらせ給へり﹀などがあげられる。鎌倉時代に入ると,栄西による禅宗の招来をはじめ,中国の文化・文物のおびただしい流入があった。その具体的記録として鎌倉円覚寺の︽仏日庵公物︵ぶつにちあんくもつ︶目録︾貞治2年︵1363︶をあげることができる。室町幕府はさらに中国との交渉を深めたが,この段階では宗教よりも,絵画,磁器,漆器などの美術品に関心が移り,唐物は,これら美術工芸品を指す用語となった。室町幕府には,この鑑識を担当する唐物奉行の職制がおかれた。この職域にあった同朋衆の能阿弥・相阿弥による︽君台観左右帳記︾は,上巻は中国画家の等級分けなどの精査,下巻では,唐・宋・元の書院内部での唐物の装飾法を述べる。能阿弥の影響下にあり,文亀2年︵1502︶に没した,村田珠光による佗茶の展開の中で,唐物は狭義に唐物茶入を指す語となった。茄子︵なす︶,文琳︵ぶんりん︶,丸壺という形状で分類される抹茶の容器であり,これを扱う茶の湯の点前も,唐物点︵からものだて︶,また単に,唐物と呼ばれている。
執筆者‥戸田 勝久
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唐物【からもの】
中国から舶載された品物の総称。︽源氏物語︾に︿からもの﹀の語がみえる。鎌倉時代,禅宗をはじめ,中国の文化・文物などがおびただしく流入。室町時代には絵画,磁器,漆器などの美術品を唐物と通称し,幕府はこの鑑識を担当する唐物奉行をおいた。のち侘茶(わびちゃ)の盛行後,狭義には唐物茶入を指す語になった。
→関連項目茶寄合|新潟奉行
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唐物
からもの
中国などから舶載された物品の総称。本来は中国唐朝の物品というほどの意味だったが,唐の滅亡後も中国を唐とよんだように,明治期に至るまで舶来品の代名詞として使用された。ただし江戸時代には「とうぶつ」と読み,ヨーロッパなど中国以外からの輸入品をも意味した。なお時代によって,唐織物・唐物茶入・唐物点(からものだて)など特定の物品の略称としても用いられた。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
唐物
からもの
﹁とうぶつ﹂とも読み,中国大陸 (唐土︿もろこし﹀) から渡来した物品の総称。後世になると,南洋諸島方面の産である島物 (しまもの) に対して中国,朝鮮から輸入された器物を,唐物と呼んだ。平安時代,﹁唐物の使﹂という役職があり,室町幕府には唐物奉行がおかれた。
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唐物
からもの
中国および諸外国から輸入された舶来品
古代には中国の織物類・香薬類などの輸入品を称したが,江戸時代以来ふつう「とうぶつ」と呼ばれ,中国品以外の西洋外来物をも呼んだ。明治時代はモスリン・毛織物などをいう。
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世界大百科事典(旧版)内の唐物の言及
【唐物】より
…中国から舶載された品物の総称。これを唐物(とうぶつ)といったときは,中国以外の外国からの輸入品をも含む場合があり,〈とうぶつ〉は,江戸時代以後の表現である。唐物の用例は平安時代にさかのぼり,《源氏物語》若菜・上に,〈帝,東宮を初め奉りて心苦しく聞召しつつ蔵人所,納殿(おさめどの)のからものども多くたてまつらせ給へり〉などがあげられる。…
【唐絵】より
…平安時代以来,江戸時代にいたるまで用いられた絵画用語。本来は中国から輸入された物産・工芸品を唐物というのに対応して,中国渡来の絵画をさす言葉と思われるが,その用法は,各時代によって微妙に異なっている。平安時代においては,9世紀の後半から,それまで中国の風物のみを描いていた障屛画に日本の風景,風俗が描かれるようになると,それまでの中国的画題による障屛画との区別の必要が生じ,前者を倭絵(やまとえ),後者を唐絵と呼んだ。…
【茶道】より
…このような闘茶はその後15世紀末まで盛んに行われ,16世紀には衰退していったが,現代でも群馬県中之条のお茶講などの民俗に残照をみせている。一方,南北朝内乱期に活躍した新興の大名たちは闘茶を愛好すると同時に,中国から舶載される器物類([唐物])をもって自分たちを飾り,唐物荘厳の流行を生んだ。ことに︽太平記︾の伝えるところでは,佐々木高氏(道誉)は茶,花,香を組み合わせた風流の会に中国製の美術・工芸品を並べ華美を尽くしている。…
【点前】より
…(b)︿後八ヵ条﹀ 包帛紗︵つつみぶくさ︶,壺荘,炭所望,花所望,入子点︵いりこだて︶,盆香合,軸荘,大津袋。(2)四ヵ伝 茶通︵さつう︶箱,唐物,台天目,盆点︵ぼんだて︶。(3)欄外 和巾点︵わきんだて︶,茶箱点(雪・月・花・卯の花の4課目と他に色紙点,和敬点,千歳︵ちとせ︶盆などがある)。…
【日宋貿易】より
…彼らは明州を拠点に,東シナ海を横断して博多付近に来着した。宋商人のもたらす貨物は唐物と称され,貴族たちに珍重された。それには香料・薬品類,顔料類,豹皮・虎皮などの皮革類,茶碗などの陶磁器,綾錦などの唐織物類,呉竹・甘竹など笛の材料,書籍,経典,筆墨などの文房具,さらにはオウム,クジャクなどの鳥獣までが含まれていた。…
【東山文化】より
…足利義満の北山山荘(鹿苑寺金閣はその遺構)にちなむ,室町前期の北山文化に対する呼称であるが,義政の芸術的な資質に対する評価から,この時代を文化的な高揚期とみなす見方は早くからあった。室町幕府の歴代将軍によって収集された[唐物]︵からもの︶類が義政個人の功に帰せられ,︿[東山御物]︵ひがしやまごもつ︶﹀と称されたのはその一例で,こうした見方は遅くとも16世紀の後半には生まれている。 この時期,政治的,社会的に無力となった公家は,かつての文化的な創造性を失い,和歌をはじめ文芸や芸能を家業として伝えるにすぎなかった。…
【室町時代美術】より
…前代末から行われた[頂相]︵ちんそう︶彫刻においても,この点は変わらない。
﹇唐物の影響﹈
円覚寺に伝わる︽仏日庵公物目録︵ぶつじつあんくもつもくろく︶︾は,当時すでに日本にもたらされていた宋元画や[彫漆]の類の質量ともに豊富なことを物語る資料だが,輸入された唐物︵からもの︶の美術品,文房具の精緻さと異国的な美しさは,京在住の武将の華美を好む︿[ばさ]ら﹀の気風を刺激し,唐物崇拝の風潮を高じさせた。唐物は,室礼︵しつらい︶,すなわち儀式や行事・会合の折の室の荘厳︵しようごん︶(座敷飾)として用いられた。…
※「唐物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」