デジタル大辞泉
「土葬」の意味・読み・例文・類語
ど‐そう〔‐サウ〕【土葬】
[名](スル)死骸を焼かずに土中に埋葬すること。また、その葬法。
[類語]火葬・水葬・風葬・鳥葬
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ど‐そう‥サウ【土葬】
(一)〘 名詞 〙 葬制の一つ。死体をそのまま土中に埋葬すること。土埋(どまい)。
(一)[初出の実例]﹁去九日早旦、於二山作所一丞相云、土葬、并法皇御陵側可レ奉レ置之由、御存生所レ被レ仰也﹂(出典‥権記‐寛弘八年︵1011︶七月二〇日)
(二)﹁このときまでは、琉球国に、土葬火葬の葬式なく、水葬のみをもはらとせしかば﹂(出典‥読本・椿説弓張月︵1807‐11︶続)
(三)[その他の文献]︹南史‐夷貊伝上・扶南国︺
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土葬
どそう
死体を土の中に埋める葬法で、普通は埋葬といっている。埋葬は、葬制のなかでも非常に古い歴史をもつ。ヨーロッパではすでに中期旧石器時代から行われていて、ネアンデルタール人は赤色の酸化土で死体を覆って埋葬していた。埋葬の姿勢には違いがあり、眠るときの姿勢で膝(ひざ)を軽く曲げ、横向きに置く伸展葬、しゃがんだ形に手足を折り曲げる屈葬あるいは座葬ともよばれる葬法などがある。屈葬にする理由は、死者が戻ってくるのを恐れるから、または、屈葬は母胎内の胎児の姿勢をかたどったもので、死者は母なる大地に胎児の形で送り返され、そこから再生すると考えたから、などの理由が考えられる。埋葬の方法としては、このほかに死体を棺に納めて土中に埋めるやり方もかなり古い。また、ただ一度の埋葬のみで完了せず、改葬を伴う複葬の形態をとることもしばしばある。複葬には、台上葬ののち埋葬するもの、火葬ののち埋葬するもの、一度埋葬したのち、取り出して骨化した遺骸(いがい)をさらに埋葬しなおすものなどさまざまな形態がある。埋葬は、現在でも採集狩猟民をはじめ、農耕民や牧畜民の間にも広がっている。さらにキリスト教、イスラム教のような組織宗教も、葬法として埋葬を採用しており、これらの宗教の布教活動とともに埋葬は世界各地に広がった。
中国、朝鮮でも埋葬が行われるが、この地域では、風水(ふうすい)によって墓地の場所を決め、吉地に墓をたてると子孫が繁殖し、一人の栄華がもたらされると信じられている。朝鮮では仏教の盛んであった新羅(しらぎ)、高麗(こうらい)の時代は、火葬の風が貴族社会に流行したが、朱子学の興隆とともに火葬は不仁不孝の至りとされて衰え、風水信仰の普及とともに土葬が広がって定着した。日本では、縄文時代には屈葬が、弥生(やよい)時代には石棺や甕棺(かめかん)を用いた埋葬があったことが知られている。
﹇清水 純﹈
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土葬
どそう
interment; burial
埋葬ともいう。遺体を土中に埋めて葬る葬法で,湿葬の一種。葬法のなかでは最も一般的であるが,死者を縛って屈葬にしたり,伸展葬の場合にもその上を厳重に石でおおうことがあるのは,単に死体を隠すだけでなく,死者の霊魂が地上に出現して,生者に災厄をもたらすことを恐れる態度の現れと理解される。土葬は旧石器時代のネアンデルタール人の間にもみられ,新石器時代では初期エジプトのターサ遺跡やメリムデ遺跡にみられる。今日でもイスラム教文化圏,キリスト教文化圏をはじめ多くの社会で最も一般的に行われる葬法である。マレー半島のセマン族では,側室を設けた壁龕 (へきがん) 葬 (→洞窟葬 ) が行われ,インドネシアでは洗骨を随伴しない単純埋葬や,甕棺 (かめかん) による埋葬が行われる。メラネシア南部の原始農耕民では,土葬も必ず屈位で,期間を経たのち発掘して洗骨する。日本では弥生時代以降に遺体を箱式石棺,または甕棺に納めて土葬にする例がみられ,近代まで一般的な葬法であった。奄美,沖縄諸島では,埋葬ののち,改葬,あるいは洗骨による遺骨の複葬が行われる。
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土葬 (どそう)
地中に穴を掘って死体を埋める葬法。世界中に分布しており,各種の葬法のなかでも非常に古くから行われていたものである。一方で,キリスト教やイスラムのような世界宗教も土葬を採用しているため,現在最も広く見られる葬法でもある。地下に石室を設けて遺体を納める葬法︵例えば南アフリカのズールー族︶は純粋な土葬とは区別すべきである。納棺の後に埋めるにせよ,遺体をそのまま埋めるにせよ,死体を自然の腐敗過程にまかせてしまうため,死体の処理に関しては,完全火葬とならんでその無化をはかる葬法だといってよい。これは肉体よりも霊魂を人間の実質と見る組織宗教および土葬を行ういくつかの伝統宗教の立場とも適合的である。土葬の際の死体の姿勢は体を横たえる伸展葬が一般的であるが,アフリカに広く見られるように屈葬の例も多い。
→火葬 →土壙墓
執筆者‥内堀 基光
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土葬
どそう
遺体を土中に埋める葬法。火葬が普及する以前には最も広く行われた。遺体を直接土に埋葬するほか,土壙(どこう)を設けたり,甕棺(かめかん)・木棺・石棺などの棺や石組の中に納めて埋葬した。縄文時代以来,土葬の例は数多くみられ,古墳時代には大小の墳丘を築いて竪穴式石室や横穴式石室に副葬品とともに木棺・石棺に遺体を納めて埋葬した。遺体の姿勢によって屈葬(くっそう)・伸展(しんてん)葬・蹲葬(そんそう)などがある。平安時代以降は,釈迦入滅時の姿をまねて北枕,西向きの体位がみられるようになる。農山村では,近年まで土葬を行っていた地域もあるが,衛生上の問題や墓域拡大の困難などの事情から,条例によって禁じられ火葬に転じた例も多い。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
土葬【どそう】
死体を土中に埋める葬法。屈葬と伸葬があり,古来世界各地で広く行われた。日本でも死者の国が地下にあるという観念とも結合して,葬法の主流を占めてきたが,現在では公衆衛生面からの規制もあって減少,禁ずる自治体も多い。→火葬
→関連項目葬制
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普及版 字通
「土葬」の読み・字形・画数・意味
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世界大百科事典(旧版)内の土葬の言及
【死】より
…(2)埋葬,火葬,水葬 死体の葬り方は国により文化によってさまざまである(遺灰を川に流す国,鳥葬が行われている国など)。日本では,︿墓地,埋葬等に関する法律﹀(1948)によって,埋葬(土葬をいう),火葬を原則とし,特別な場合として,船員法15条で船舶の乗員の水葬が認められている。火葬は,火葬場以外の施設で行ってはならず,埋葬または焼骨の埋蔵は,墓地以外の区域に行うことはできない。…
【葬式組】より
…葬儀の執行には,近隣,[同族],親類,友人など死者の出た家をめぐる各種の社会関係が関与するが,そのなかで葬式組は葬儀の裏方をもっぱら担当する。おもな仕事としては,関係者への死亡通知,葬式道具の製作・準備,炊事,土葬の場合の穴掘りなどである。葬式組の各戸は分担してこれらの仕事に従事するが,もっとも重要な役である穴掘りは,各家が均等に従事するように,記録を帳面につけ,それに基づいて担当を決めることが多い。…
【葬制】より
…
﹇葬制の要素﹈
葬制のうち最も明白な要素はさまざまな方法での死体の処理すなわち狭義での葬法である。[火葬],[土葬],[水葬],[風葬],[鳥葬]などが世界的に広く分布している葬法であり,それぞれ民族文化のまとまりと大体のところ一致している。しかし文化史的に葬法の変化あるいは進化を位置づけることは困難であり,せいぜいのところ採集狩猟民のもとでは単純な死体の遺棄ないし風葬が,また未開農耕民のあいだでは土葬が卓越していると言える程度である。…
【チベット族】より
…葬礼は,ダライ・ラマやパンチェン・ラマの場合,ミイラ化してまつられるが,高位の僧は火葬,一般の人々,下位の僧は鳥葬(チャトル)される。水葬は罪人に,土葬は疫病死者に限られた。鳥葬は死者に捨身供養により善業を積ませる意義づけもあった。…
【墳墓】より
…なお,あわせて︿[葬制]﹀の項目も参照されたい。
︻葬法と墳墓の構造︼
﹇各種の葬法﹈
人を葬るには[土葬],[火葬],[風葬],[水葬]などがあり,また,いったん土葬か風葬によって骨だけとした後に本格的に葬る,いわゆる洗骨葬がある。これらのうち旧石器時代(ネアンデルタール人)以来,最も広く行われているのは,穴を掘って遺体を埋める土葬である。…
※「土葬」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」