デジタル大辞泉 「女房詞」の意味・読み・例文・類語 にょうぼう‐ことば〔ニヨウバウ‐〕【女房▽詞】 室町初期ごろから、宮中に仕える女房が、多く衣食に関して用いた一種の隠語。のち、将軍家に仕える女性、さらに町家の女性にまで普及し、現代の一般語になったものもある。省略や言い換えを行ったものが多い。﹁おでん︵田楽︶﹂﹁おひや︵水︶﹂﹁かもじ︵髪・かずら︶﹂など。御(ごし)所(ょこ)詞(とば)。→文字言葉 出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
精選版 日本国語大辞典 「女房詞」の意味・読み・例文・類語 にょうぼう‐ことばニョウバウ‥【女房詞・女房言葉】 (一)〘 名詞 〙 室町初期ごろ、御所や仙洞御所につかえる女房が使い始めた一種の隠語で、主として食物、衣服などに用いた。上品で優雅なことばとして、足利将軍家・徳川将軍家につかえる女性からしだいに町家の女性に普及し、また男性の用語にもはいるようになった。米を﹁うちまき﹂、豆腐を﹁おかべ﹂、田楽を﹁おでん﹂、すしを﹁すもじ﹂、杓子(しゃくし)を﹁しゃもじ﹂、湯巻きを﹁ゆもじ﹂という類。︹大上臈御名之事︵16C前か︶︺ 出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
日本大百科全書(ニッポニカ) 「女房詞」の意味・わかりやすい解説 女房詞にょうぼうことば 室町時代の初期ごろ、御所や仙洞(せんとう)御所に奉仕する女房たちによってつくられた語。それ以後もつくり続けられた。﹃大上﨟御名之事(おおじょうろうおんなのこと)﹄によれば、食料品79語、調度品26語であるから、女房たちの身の回りの品物の異名からなるが、のち動作や官職の語にまで及んだ。宮中でつくられたため、上品で優雅なことばとみられて、将軍家や高家の女性にまねられ、江戸時代には富裕な町家の妻女にまで広まった。現代に残るものが多い。語の作り方には、元の語の一部を残した﹁わら﹂︵わらび︶、﹁まき﹂︵ちまき︶の類、それを繰り返した﹁かうかう﹂︵香の物︶の類、元の語の一部を残しそれに﹁もじ﹂をつけた﹁すもじ﹂︵鮓(すし)︶、﹁そもじ﹂︵そなた︶の類、性質や外観を考えた﹁おひや﹂︵水︶、﹁おかべ﹂︵豆腐︶の類、﹁物﹂﹁の物﹂をつけた﹁青物﹂︵野菜︶、﹁夜の物﹂︵夜着︶の類、縁起によってつけた﹁紫﹂︵鮎︵藍︶にまさる→鰯(いわし)︶、﹁待兼ね﹂︵来ぬか→小糠(こぬか)︶の類などがある。 ﹇真下三郎﹈ 出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「女房詞」の意味・わかりやすい解説 女房詞にょうぼうことば 室町時代,宮中に仕える女房たちが使った一種の位相語。のちには一般化して町家の女性も使うようになった。女房詞の古い文献には﹃海人藻芥 (あまのもくず) ﹄ (1420) ,﹃大上臈御名之事﹄ (1589) などがある。型としては﹁御…﹂﹁…文字﹂のものが多い。今日なお使われている単語としては,オナカ (腹) ,オヒヤ (水) ,ヒモジイ,キナコなどがある。 出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報