太陽などの主系列星または矮星(わいせい)に比べて文字どおり大きな星をいい,例えばスペクトル型がG型に属する巨星はG型矮星である太陽に比べて,その半径は10倍前後大きい。さらにK型かM型の巨星になると,その半径は太陽半径の数十倍から数百倍に達する。このような星の存在は20世紀初頭にE.ヘルツシュプルングやH.N.ラッセルにより明らかにされた。すなわち当時集積しつつあった恒星視差のデータをもとに星の絶対等級を推定することが可能となり,その結果とくにG,K,M型の星ではスペクトル型が同じでも絶対等級の明るい星と暗い星の2種類があることが明らかにされた。スペクトル型が同じであることは星の表面温度がほぼ同じであることを意味し,したがって絶対等級の明るい星は暗い星に比べて表面積が大きいことを意味する。ラッセルはこのような巨星の存在は星の進化を考えるうえで重要であることを直ちに指摘し,星が誕生するとまず巨星になり,これが重力収縮して矮星に進化すると考えた。しかし,その後A.S.エディントンによる《恒星内部構造論》(1926)を経て巨星の本質が理解されたのは20世紀中葉になってからである。すなわち星は誕生後その生涯の大部分を主系列星として過ごすが,その間に中心部で水素の核融合によりエネルギーを発生する。その結果,やがて星の中心部にはヘリウムの核が形成され水素はその周辺の殻で燃え続ける。この段階になると星の中心部でのエネルギー発生は止まり重力収縮が起こるので質量の中心集中度が増大し,同時に星の外層部は膨張してここに巨星への進化が始まる。すなわち巨星はむしろ主系列星の次の進化の進んだ段階に対応し,このような星ができるのは恒星進化の結果として内部に不均質構造が形成されるためであることが明らかにされた。高温の星も主系列を離れた星は巨星または光度階級Ⅲに分類される星になるが,高温の主系列星は質量が大きいため,とくに主系列を離れた後の進化の時間尺度が早く,このため高温の巨星が存在する確率は小さい。結局,主系列より進化した星は大部分G,K,M型のいわゆる赤色巨星の領域に集中してくる。
執筆者:辻 隆
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