デジタル大辞泉 「引」の意味・読み・例文・類語 いん【引】[漢字項目] ﹇音﹈イン︵呉︶︵漢︶ ﹇訓﹈ひく ひける ﹇学習漢字﹈2年 ︿イン﹀ 1 こちらへひき寄せる。ひっぱる。﹁引見・引力/吸引・牽(けん)引(いん)・勾(こう)引(いん)・強(ごう)引(いん)﹂ 2 ひき伸ばす。﹁延引﹂ 3 連れていく。﹁引率・引導/誘引﹂ 4 後方にひき下がる。﹁引退﹂ 5 身にひき受ける。﹁引責/承引﹂ 6 必要な例を取り出す。﹁引用・引例/援引・索引・博引旁証﹂ ︿ひき︵びき︶﹀﹁忌引・字引・手引・友引・福引・孫引・万引・水引・股(もも)引(ひき)・割引﹂ ﹇名のり﹈のぶ・ひき・ひさ いん︻引︼ 1漢文の文体の名。序の類で短いもの。はしがき。 2 俳諧で、本文を導き出すための句。 3 楽(が)府(ふ)の一体。 出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
精選版 日本国語大辞典 「引」の意味・読み・例文・類語 ひき【引】 (一)[1] 〘 名詞 〙 ( 動詞﹁ひく︵引︶﹂の連用形の名詞化 ) (一)[ 一 ] (一)① 引っぱること。﹁綱引き﹂﹁車引き﹂のように、多く複合して用いられる。 (二)② 引っぱる力。引き込む力。 (一)[初出の実例]﹁宇宙ノ引キ﹂(出典‥物理学術語和英仏独対訳字書︵1888︶︿山口鋭之助﹀) (二)﹁彼等のうちの一人の竿が、突然強い引きを伝へて﹂(出典‥医師高間房一氏︵1941︶︿田畑修一郎﹀三) (三)③ 引く力に耐える力。特に紙などの腰が強いこと。﹁引きのある紙﹂ (四)④ 謡曲の節の一つ。一音節を基本より長く引いて謡うこと。また、その符号。 (五)⑤ ( 多く﹁おひき﹂の形でいう ) ﹁ひきでもの︵引出物︶﹂の略。 (一)[初出の実例]﹁猶々御使へも、我等へも、御ひきを被レ下候﹂(出典‥高野山文書‐︵文祿元年︵1592︶か︶四月五日・興山上人応其書状) (二)[ 二 ] (一)① 率いること。導き。手引き。案内。 (一)[初出の実例]﹁新世の 事にしあれば 大君の 引(ひき)のまにまに 春花の うつろひかはり﹂(出典‥万葉集︵8C後︶六・一〇四七) (二)② 特別に目をかけて便宜をはかること。 (一)(イ) 好意。ひいき。力添え。 (一)[初出の実例]﹁おもしろの駒はいかに。此のごろ年かへらば、御ひきにて白馬に出し給へ﹂(出典‥落窪物語︵10C後︶二) (二)(ロ) 頼り。つて。縁故。得意先。また、縁故などによるひき立て。立場上、あてにできるもの。 (一)[初出の実例]﹁かの中納言殿の少納言、かく落窪の君とも知らで、辨の君がひきにて参りたり﹂(出典‥落窪物語︵10C後︶二) (三)③ 歩行の助けとしてすがる綱。引き綱の類。 (一)[初出の実例]﹁かちよりおはしますさまにて、御輿の綱を長くなされたりしにや、ひきにしなしてかかれてぞ、末ざまはおはしましける﹂(出典‥今鏡︵1170︶五) (四)④ ﹁ひきあわせ︵引合︶⑥﹂の略。ひきあわせがみ。 (一)[初出の実例]﹁将軍家にも、女房達皆異名を申す︿略﹀引合をばひきと申也﹂(出典‥海人藻芥︵1420︶) (三)[ 三 ] 数量の差引き。減法。 (一)(イ) 江戸時代、田畑の貢租を減除すること。一年限のものを一作引といい、長期のものを年々引、連々引という。 (一)[初出の実例]﹁石盛違引︿略﹀勿論地不足無地だか石盛違の分、古検新検石盛の差ひにて引に立たる分は﹂(出典‥地方凡例録︵1794︶六) (二)(ロ) さいころ博打(ばくち)で、三または四個のさいころの目の合計数から、規定の数を差引いた数をいう。 (一)[初出の実例]﹁筒目(どうめ)、なり目などありて、此引をつくるといふ事﹂(出典‥随筆・独寝︵1724頃︶下) (三)(ハ) 値引き。値下げ。﹁三割引(び)き﹂﹁百円引(び)き﹂ (四)[ 四 ] 後ろへさがること。 (一)① 潮が引くこと。また、その力。 (一)[初出の実例]﹁ひきとは、水が沖の方に退(ひ)いて行く時の力のことです﹂(出典‥溺れかけた兄妹︵1921︶︿有島武郎﹀) (二)② 写真撮影で、カメラを後ろへ下げる余地をいう。﹁引きがない﹂ (二)[2] 〘 接頭語 〙 動詞の上に付けて勢いよくする意を添え、または、語調を強める。﹁ひき失う﹂﹁ひき移す﹂﹁ひき劣る﹂﹁ひきかえる﹂など。さらに強めて、﹁ひっ﹂﹁ひん﹂と音変化した用法も多い。﹁ひっつかむ﹂﹁ひんまげる﹂など。 いん︻引︼ (一)〘 名詞 〙 (二)① 漢文の文体の名。本文を引きだすための短めの序。 (一)[初出の実例]﹁講二四子一引﹂(出典‥南郭先生文集‐三編︵1745︶九) (二)[その他の文献]︹文体明弁‐引︺ (三)② 俳諧で本文を導きだすための句や短い文。︹俳諧・本朝文選︵1706︶︺ (四)③ 昔の中国における楽曲の名称。また、それに合わせた歌詞である楽府(がふ)の題名に用いられる。箜篌引(こうこういん)など。 (一)[初出の実例]﹁観芙蓉図引﹂(出典‥南郭先生文集‐三編︵1745︶一) (二)[その他の文献]︹文体明弁‐楽府︺ (五)④ 来世の果報を引き起こすべき力のある所業。引業(いんごう)。 (一)[初出の実例]﹁業に引(イン)と満とあり﹂(出典‥雑談集︵1305︶五) ひかし【引】 〘 形容詞シク活用 〙 ( 四段動詞「ひく(引)」の未然形に、形容詞を作る接尾語「し」が接した上代語 ) 引きたい。引き留めるようだ。[初出の実例]「足柄(あしがり)の安伎奈の山に引こ船の尻比可志(ヒカシ)もよここばこがたに」(出典:万葉集(8C後)一四・三四三一) ひっ【引】 〘 接頭語 〙 ( 接頭語「ひき(引)」の変化したもの ) 動詞の上につけて、勢いよくする意を添えたり、語調を強めたりする。「ひっかく」「ひっくるめる」「ひっぱたく」など。 ひこ【引】 四段動詞「ひく(引)」の連体形「ひく」の上代東国方言。 出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
世界大百科事典(旧版)内の引の言及 【度量衡】より … 度量衡という語の日本での初見は,︽続日本紀︾の大宝2年(702)に記す︿はじめて度量を天下諸国にわかつ﹀であろう。この記載は,大宝律令の制定に対応するもので,その内容は,基本的には,中国の唐の制度の引き写しと考えてよい。下って︽延喜式︾(927)には,度量権衡の語が見られる。… ※「引」について言及している用語解説の一部を掲載しています。 出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」