日本大百科全書(ニッポニカ) 「歩兵操典」の意味・わかりやすい解説
歩兵操典
ほへいそうてん
旧日本陸軍の主兵であった歩兵の訓練と戦闘の準拠を示したもの。天皇の裁可を経て軍令として施行された。明治初期のものはフランス、ドイツのものを翻訳したにすぎなかったが、日露戦争後の1909年︵明治42︶根本的な改訂が加えられた。以後小改訂はあったが、基本は敗戦まで変わらなかった。その特徴は、忠君愛国と必勝の信念を強調する精神主義にあった。冒頭の綱領は﹁軍紀ハ軍隊ノ命脈ナリ﹂とし、命令に対し絶対服従することを要求した。また攻撃精神をもって軍人精神の精華とした。これらの精神的要素が﹁物質的威力ヲ凌駕(りょうが)シテ戦捷(せんしょう)ヲ完(まっと)ウシ得ル﹂としている。このような非科学的、独善的な思想が、兵士と国民に多くの犠牲を強いることになったのである。
﹇藤井治夫﹈
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