精選版 日本国語大辞典 「死絵」の意味・読み・例文・類語 しに‐え‥ヱ【死絵】 (一)〘 名詞 〙 (二)① 有名な俳優などが死んだ時つくられる、似顔絵に辞世や法名、菩提寺、没年月日を摺り込んだ藍摺り物。 (一)[初出の実例]﹁古来役者の死画は二三種に限れり﹂(出典‥随筆・守貞漫稿︵1837‐53︶三一) (三)② めくりカルタの﹁よみ﹂で、くばり残った札をいう。 (一)[初出の実例]﹁一枚の死絵はあざよよみがるた﹂(出典‥雑俳・日本国︵1703︶) 出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
百科事典マイペディア 「死絵」の意味・わかりやすい解説 死絵【しにえ】 浮世絵版画の一種。人気のあった俳優や小説家,画家などが死亡した時,死出の道中姿や辞世をよむ姿を描いて,ファンの追慕の情を満たしたもので,江戸時代,寛政のころに始まり明治まで続いた。画面の余白に略歴・没年月日・戒名・墓所などのほか,辞世や追善の歌や句︵おおむね狂歌・狂句の類︶が記されている。ほとんどが歌舞伎役者のもので,なかでも自殺した8世市川團十郎の死絵は100種を越えたという。 出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
改訂新版 世界大百科事典 「死絵」の意味・わかりやすい解説 死絵 (しにえ) 浮世絵版画の一種。人気の高い人物が死んだ直後,その人の似顔絵に没年月日や法名,菩提寺,辞世および追善の歌句などを記して売り出された。対象となった人物はほとんどが歌舞伎役者で,まれに浮世絵師や戯作者が扱われることもあった。1799年︵寛政11︶没の6世市川団十郎の死絵が早い例で,文化・文政年間︵1804-30︶以降さかんに作られるようになった。1854年︵嘉永7︶没の8世市川団十郎のように100種以上制作された場合もある。 →役者絵 執筆者‥小林 忠 出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
世界大百科事典(旧版)内の死絵の言及 【浮世絵】より … また浮世絵は純然たる絵画鑑賞の喜びを提供するばかりでなく,時事的な情報を伝達する機能も果たした。有名人の死没の直後にその肖像を描き,生前の事跡や辞世の和歌や句を記して追悼の意を表した死絵︵しにえ︶,安政2年(1855)の大地震の直後に表れた鯰絵︵なまずえ︶,あるいは開港後の新開地横浜の様子を伝える横浜絵などは,そうしたニュース性を強く織り込んだ浮世絵版画の例である。明治年間に入って一時期盛行した彩色摺の絵入り新聞すなわち︿錦絵新聞﹀なども,浮世絵が本来備えていた時事報道の機能を,時代の要請に応えて一段と強化し,発揮させたものにほかならなかった。… ※「死絵」について言及している用語解説の一部を掲載しています。 出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」