デジタル大辞泉
「白鯨」の意味・読み・例文・類語
はくげい︻白鯨︼
大な白鯨に片足を食い切られて復讐を誓った捕鯨船船長エイハブが、白鯨との死闘の末に船もろとも海底に没するまでを描く。
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はくげい【白鯨】
(一)( 原題[英語] Moby-Dick ) 長編小説。メルビル作。一八五一年刊。巨大な白鯨モビー=ディックに片足を食い取られた捕鯨船長エイハブが、乗組員とともに太平洋に白鯨を追う悲壮な心理と闘いを描く。海洋文学の代表作。
しろ‐くじら‥くぢら【白鯨】
- 〘 名詞 〙 小鯨から取った鯨ひげ。色が白く美しいので、籠目などに編んで汗衫(かざみ)などにする。
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白鯨
はくげい
Moby-Dick;or The Whale
アメリカの作家メルビルの長編小説。1851年刊。19世紀前期、初老の捕鯨船長エイハブが巨大な白いマッコウクジラ、モービィ・ディックに片脚を咬(か)み取られ、その報復を求めて執拗(しつよう)に巨鯨を追跡し、太平洋の赤道近くで3日間に及ぶ死闘を繰り広げたあとついに敗北、捕鯨船ピークォド号もろとも海底の藻屑(もくず)と消える物語で、これをただ一人生還した青年イシュメールに語らせる仕組みになっている。エイハブ船長や一等航海士らの白人を頂点とし、これにインディアン、南海の先住民、拝火教徒のアジア人、黒人などの乗組員が続き、いわば人類の代表者たちが無垢(むく)と魔性の混在する原初的自然に果敢な戦いを挑み、ついには敗北と破滅に至る。一種、黙示録暗喩(あんゆ)の世界が壮絶に展開する。通常の小説構造とは著しく異なり、巻頭には語源部や文献部が付され、物語のなかに鯨学や捕鯨業、自然に関する衒学(げんがく)的エッセイが無数に混じる。しかも該博な百科全書的認識論がいつしか壮大な詩的幻想に変貌(へんぼう)していくところに、この作品の大きな特徴がある。そして雄渾(ゆうこん)な文章で語られる詩的饒舌(じょうぜつ)につられて、原初的自然と近代人との確執、不気味な悲劇的関係がより効果的に読者に迫ってくる。
﹇杉浦銀策﹈
﹃幾野宏訳﹃白鯨﹄︵1980・集英社︶﹄▽﹃八木敏雄著﹃﹁白鯨﹂解体﹄︵1986・研究社出版︶﹄▽﹃前田礼子著﹃白鯨 そのヘレニズムとキリスト教思想﹄︵1994・大阪教育図書︶﹄▽﹃阿部知二訳﹃白鯨﹄上中下︵岩波文庫︶﹄▽﹃田中西二郎著﹃白鯨﹄上下︵新潮文庫︶﹄▽﹃千石英世訳﹃白鯨﹄上下︵講談社文芸文庫︶﹄
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白鯨 (はくげい)
Moby-Dick, or The Whale
アメリカの作家メルビルの長編小説。1851年出版。陸上の生活に絶望したイシュマエルは,南海の原住民クイークエグとともに捕鯨船ピークオド号に乗り組む。船長エーハブCaptain Ahabは,自分の片足を嚙み取った白い鯨モービー・ディックこそこの世のあらゆる悪の化身だと信じ,復讐を誓っている。一等運転士スターバックは,理性と信仰の立場からエーハブに反対するが,彼の強烈なエゴの前には無力である。さまざまな者を乗せた世界の縮図のような船は,モービー・ディックとの3日にわたる死闘の末沈み,ただ語り手イシュマエルだけが生き残る。筋立ては海洋冒険談であり,また冒険談としても十分おもしろいが,哲学的随筆,劇,詩など多様な要素をとりこんだ雄勁︵ゆうけい︶で格調の高い文体で,旧約聖書,シェークスピア,ミルトンの︽失楽園︾などを巧みに利用しながら,悪の意味を問いかける象徴的な傑作である。
執筆者‥島田 太郎
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白鯨【はくげい】
メルビルの小説。︽Moby Dick︾。1851年刊。巨大な白鯨モビー・ディックに片足を奪われたエーハブ船長は,復讐(ふくしゅう)のため世界の海を巡り,ついに発見した宿敵とともに海底に沈む。善と悪の対決等,深い象徴性を秘めた叙事詩的大作。発表当時は不評だったが,1920年代以後評価が高まる。
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はくげい【白鯨】
鹿児島の米焼酎。白麹を使用し、常圧蒸留で造る。原料は米、米麹。アルコール度数25%。蔵元の﹁薩摩酒造﹂は昭和11年(1936)﹁薩摩合同酒精﹂として設立。同24年(1949)現社名に変更。所在地は枕崎市立神本町。
出典 講談社[日本酒・本格焼酎・泡盛]銘柄コレクションについて 情報
白鯨
鹿児島県、薩摩酒造が製造・販売する焼酎の商品名。貯蔵熟成タイプの本格米焼酎。
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出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報
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世界大百科事典(旧版)内の白鯨の言及
【デーナ】より
…ハーバード大学で海洋法を専攻したが,学業を中断して船乗りになり,その航海の経験をもとに《水夫としての2年間Two Years before the Mast》(1840)を書いた。これはアメリカ海洋小説の古典と目されており,《白鯨》の著者メルビルもこの作品に啓発された。デーナはまた海員の権利の確立と奴隷解放運動にも力を尽くした。…
【ヒューストン】より
…監督第1作︽マルタの鷹︾(1941)で戦後のハリウッドの︿[フィ]ルム・ノワール﹀あるいは︿[ハードボイルド映画]﹀の流れをつくり,主演のハンフリー・[ボガート]とは続いて︽黄金︾(1947),︽キー・ラーゴ︾(1948),︽アフリカの女王︾(1951),︽悪魔をやっつけろ︾(1953)で組み,その魅力をひき出す。さらにボガートのために︽白鯨︾でエーハブ船長の役を,︽王になろうとした男︾でクラーク・ゲーブルとの︿夢の競演﹀を考えたが,ボガートの死で実現せず,︽白鯨︾は1956年にグレゴリー・ペックで,︽王になろうとした男︾は1976年にマイケル・ケインとショーン・コネリーで映画化しているが,このボガートで撮りそこなった2作も含めた︿ボガート映画﹀にもっともヒューストン的なテーマ(人間,とくに男の野望とその挫折)が色濃く出ている。︻広岡 勉︼。…
※「白鯨」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」