デジタル大辞泉 「破壊」の意味・読み・例文・類語 は‐かい〔‐クワイ〕【破壊】 [名](スル)建造物・器物・秩序・組織などをこわすこと。また、それらがこわれること。「堤防を破壊する」「環境破壊」[類語]損壊・破損・破砕・砕破・全壊・壊滅(―する)壊こわす・叩たたき壊す・打ち壊す・ぶち壊す・取り壊す・打ち砕く・打ち崩す・毀損 は‐え︹‐ヱ︺︻破▽壊︼ やぶれこわれること。やぶりこわすこと。はかい。 ﹁御所の―したるを修(しゅ)理(り)して﹂︿平家・六﹀ 出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
精選版 日本国語大辞典 「破壊」の意味・読み・例文・類語 は‐かい‥クヮイ【破壊】 (一)〘 名詞 〙 器物、建物、組織などをやぶりこわすこと。また、やぶれこわれること。はえ。 (一)[初出の実例]﹁右、件庄々者、為二有限之御炊殿庄一、而為レ令二勤造一、以二去安元年中一令レ成二一円庄号神領一之以降、毎レ臨二破壊之期一、令二造勤一者例也﹂(出典‥到津文書‐弘安元年︵1278︶一二月四日・宇佐大宮司宇佐公有下文案) (二)﹁岬の暗礁に触て遂に其船破壊(ハクヮイ)に及び﹂(出典‥近世紀聞︵1875‐81︶︿染崎延房﹀一一) (三)[その他の文献]︹史記‐匈奴伝︺ は‐え‥ヱ【破壊】 〘 名詞 〙 ( 「え」は「壊」の呉音 ) =はかい(破壊)[初出の実例]「正倉伍拾間 破壊一間」(出典:正倉院文書‐天平五年(733)隠岐国正税帳)「御所の破壊(ハヱ)したるを修理して」(出典:高野本平家(13C前)六) 出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
改訂新版 世界大百科事典 「破壊」の意味・わかりやすい解説 破壊 (はかい)failurerupture 固体材料が,外力の作用のもとに二つ,またはそれ以上の部分に分離する現象をいう。このときの応力︵単位断面積当りの荷重︶,すなわち破壊応力を破壊強さ,または破壊強度という。とくに平滑材料を引張り,あるいは曲げ変形した場合の破壊強さを,それぞれ引張強さ,曲げ強さと呼び,破壊を取り扱うもっとも基本的な値となる。 破壊現象は,材料自身の特性,負荷の条件および化学的環境により,さまざまな形態に分類することができるが,原子レベルで見れば,原子間結合がへき開,またはせん断︵すべり︶により分断される現象である。原子間結合を引き離すのに必要な応力,すなわち理論的破壊強さは,縦弾性係数︵ヤング率︶,表面エネルギーおよび原子面間隔に支配されている。しかしながら,この理論的破壊強さは,ふつう用いられている材料の強さに比べてかなり大きい場合が多い。その原因は,実際の固体内には,原子の配列の乱れや原子の欠落などによるいわゆる格子欠陥,あるいは,それよりも大きな尺度の微小な空孔,亀裂が存在するためで,これらの欠陥および材料内に存在する分散粒子,介在物の近傍に応力集中が生じ,この応力集中のために理論強さより低い荷重で材料は破壊する。近年,材料の破壊を,材料に負荷された応力のみならず,これら材料内の欠陥,とくにもっとも危険な亀裂状欠陥を考慮して,定量的に取り扱う破壊力学が発展してきた。この破壊力学により,欠陥を含む材料の破壊抵抗,すなわち,破壊靱性︵じんせい︶を評価することが可能になり,さらに構造物の寿命・余寿命をも評価する可能性が生じ,破壊の取扱いに大きな発展をもたらしている。 破壊の様式は,いくつかの方法により分類しうる。よく用いられるのが,欠陥の成長の速さによって,破壊を脆性︵ぜいせい︶破壊と延性破壊に大別する分類法である。微視的に見ると,前者は塑性変形を伴わないへき開破壊に,後者はすべり面分離破壊におのおの対応するものである。走査型電子顕微鏡による微視破面は,前者の場合へき開面を示し,後者はディンプル模様を呈している。また,巨視破面は,前者では垂直破断を,後者ではカップアンドコーン,またはすべり面分離を示す。しかし,微視的に見ると,延性の大きな材料でも負荷の条件および環境により,巨視的には亀裂進展速度の大きい脆性破壊を起こす場合がある。例えば,板厚が小さいときに延性を示す材料も,板厚が増すと脆性挙動を示す。これは材料内部の力学的条件が平面応力状態から平面歪状態に遷移するためである。また,軟鋼は,低温で脆性破壊を生ずる場合がある︵低温脆性︶。このほかに,水素に起因する水素脆性,焼戻しにより生ずる焼戻し脆性など,化学的環境および材料内の不純物原子が引き起こす脆性破壊も存在する。 もう一つの分類法として重要なのが,金属組織学的に,結晶粒内破壊と結晶粒界破壊とに分けるもので,とくに粒界破壊は,応力腐食,クリープ破壊などにおいて重要な役割を果たす。このほかに,巨視的な観点から,破壊は,クリープ破壊,疲労破壊などに分類できるが,破壊の微視機構は,応力集中により材料組織の不均一部分に微視割れが生じ,それが成長するか,合体する過程を経て,最終的な破壊につながる場合が多い。このとき,荷重の低下を伴わない破壊を安定破壊︵安定亀裂成長︶,荷重低下を伴う最終破壊を不安定破壊︵不安定亀裂成長︶と呼ぶ。 →延性破壊 →脆性破壊 執筆者‥岸 輝雄 出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
普及版 字通 「破壊」の読み・字形・画数・意味 【破壊】はかい(くわい) うちこわす。︹宋書、五行志五︺︵孫︶初めを武昌にし、(つ)いで業にり、新を興す。~壯麗甚、宮を破壞し、囿を修す。を犯し農を妨げ、官民疲怠す。 字通﹁破﹂の項目を見る。 出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「破壊」の意味・わかりやすい解説 破壊はかいfracture 物体に応力が作用して,二つの部分またはそれ以上に分離することを破断 ruptureという。物体にいったん亀裂が発生し,その亀裂が進展してついには破断することを破壊といい,破壊にはいたらなくても,ある大きさの変形が生じて所要の機能を失う場合を破損 failureという。たとえば,弾性の状態が要求されるものに対して塑性変形︵→永久ひずみ︶の開始は弾性破損になる。破壊現象は非常に複雑で難しく,まだ完全に解明されてはいないが,巨視的な取り扱い︵物体内の欠陥や切り欠きの寸法以上を対象︶では,破壊条件として次の4説が有力である。(1) 最大剪断応力説 物体内の主剪断応力が物体固有の限界値に達すると,破損・破壊が生じるという説。(2) 剪断ひずみエネルギー説 物体内の単位体積あたりのひずみエネルギーが固有の限界値になれば破損・破壊が起こるという説。(3) 最大主応力説 物体内の主応力のうち,いずれかがある限界値に達したときに破損・破壊が生じるという説。(4) 内部摩擦説 圧縮荷重負荷時に,面上の剪断応力とその内部摩擦力の差が限界値に達したときに破損・破壊が起こるという説。延性材料に対しては (1) (2)が,脆性材料に対しては (3)が適用され,一般の鉄鋼材料では (1)と (2)の中間において,また鋳鉄や石膏のようなもろい材料では (3)に近い条件で破損・破壊が生じる。脆性材料に圧縮荷重が作用するときは (4)が適用される。 出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報