デジタル大辞泉 「競技」の意味・読み・例文・類語 きょう‐ぎ〔キヤウ‐〕【競技】 [名](スル)一定の規則に従って、技術や運動能力の優劣を互いにきそうこと。「陸上競技」「珠算競技」[類語]競争・プレー・競合・角逐かくちく・勝負・競せり合い・競きそう・争う・張り合う・対抗する・比べる・競せる・せめぎ合う・渡り合う・遣り合う・先を争う・鎬しのぎを削る・火花を散らす・対決・敵対・向かう・突っかかる・挑む・立ち向かう・かかる・ぶつかる・対する・相手取る・向こうに回す・向こうを張る 出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
精選版 日本国語大辞典 「競技」の意味・読み・例文・類語 きょう‐ぎキャウ‥【競技】 〘 名詞 〙 互いに技術を競い合い、優劣をあらそうこと。おもに、運動競技をいう。[初出の実例]「万雷の出来ぬ事して、此競技(キョウギ)に勝なん物と」(出典:今弁慶(1891)〈江見水蔭〉二) 出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
日本大百科全書(ニッポニカ) 「競技」の意味・わかりやすい解説 競技きょうぎ 個人または団体が相対して一定の規則に従って特定の技を競い合い、その優劣勝敗を決する広い意味での﹁遊戯﹂の一型。競技の発生はきわめて古いが、多くは呪術(じゅじゅつ)、宗教上の儀礼から分化発達するか、あるいは戦闘、格闘の手段や狩猟などの生産技法の演練のうちに発展し分派したものである。いまなお、宗教儀礼や呪術的行事に随伴して行われるものも広くみられ、また武技、体技などの修錬を主目的とするものも少なくはない。とくに未開社会などではそうした未分化の形がむしろ一般的であった。ともかく競技の本質はその行為自体のもたらす精神的・肉体的な快感、満足感を主目的とするところにあるとはいうものの、その実態はきわめていろいろで、単に﹁遊び﹂の世界にとどまらない。近代競技の源流の一つであり、今日その演技の最大の﹁場﹂ともなっているオリンピック競技も、古代ギリシアでオリンポスの神々に捧(ささ)げる宗教的行事として形を整えたもので、その先蹤(せんしょう)はさらに古く、かつての守護神ヘラの神殿への奉納行事にさかのぼるといわれている。 イギリスに発達したサッカー競技も、その原始的な形は、二つの村の対抗で、遠く球を運んで相手の村の城門にけり込むことで勝負を決したというから、やはり呪術的意味をもっていたのであろう。弓技、剣技、格闘技、馬技、戦車競走なども、武技演練のうちに競技の形を整えたもので、﹁遊び﹂だけのものにはなっていない。また近代スポーツのあるもの︵野球など︶は興行化して、それは観客にとっては﹁遊び﹂であっても、演技者自体にはむしろ﹁職業﹂として厳しい現実的意義をもっている。現在、世界各地に行われる競技種目はきわめて多く、民族ごとに特徴もあり、また国際的交流で広く伝播(でんぱ)流布して、各国ごとにさらに特殊な展開を示してもいる。 近代日本の競技はほとんどが欧米からの移入であるが、しかし古くからの伝統的競技もかなり多く、また祭礼や年中行事に随伴する競技の類も少なくない。とくに﹁年占(としうら)﹂神事の多くは競技の形をとり、その結果で神意を伺い、あるいは農作の豊凶、人々の運勢の吉凶を占うのである。綱引き、競馬(くらべうま)、射弓(しゃきゅう)、競舟(せりふね)、石合戦、相撲(すもう)などその﹁技比べ﹂の種目も多彩で、伝統久しい祭事の一部ではあっても、むしろ演技の興趣とそれをめぐる群集感覚の異常な高まりに支えられて、いまに久しく伝存してきた。﹁玉せせり﹂の類は神符の木球・木札、あるいは幣束などを奪い合い、神殿にいち早く納めるのを﹁勝ち﹂とする、ラグビー競技にも似た勇壮な﹁競い技﹂であり、また別段のルールはなくとも、山車(だし)、舞台、神輿(みこし)の練行に、押し合い、突き合いその優劣を競い、あるいは神幸の先後を争う形なども広くみられる。﹁背比べ﹂﹁力比べ﹂を神役奉仕者が行う奇祭もあり、神事相撲などにも神の力による精霊鎮圧を意味するらしく、一方的勝利に終始する演技の型も残っている。また芋(いも)比べ、イタドリ比べなどという祭りに奉納する特定供物の優劣を競う奇抜な形もみられる。 現在はまったくの﹁子供遊び﹂に化した凧(たこ)あげ、根木(ねっき)、羽根突き、ハンマなども、かつては﹁年占﹂行事の形で行われたものの脱化らしく、今日でも村対抗の﹁凧あげ﹂や破魔弓(はまゆみ)行事は一部に残っている。こうした多彩な﹁年占﹂行事には独自の競技として分化発達する素因が多分に存在していたが、しかし綱引、相撲以外にはそうした発展を示すものがなく、むしろ外来の競技の移入が日本では古くから主となっていた。打毬(だきゅう)と蹴鞠(けまり)は古く中国から伝わって、宮廷貴族の間で盛んに行われ、その余流は近世にも及び、今日も古典的な残存を一部にとどめる。囲碁(いご)、将棋(しょうぎ)、双六(すごろく)盤技あるいは香合(こうあわせ)、貝合などの室内競技の由来も古く、今日なお隆盛を極めるものもあるが、ここでは室内遊戯の類は省略する。闘犬、闘鶏、闘牛などの動物競技の由来も古く、競馬もむしろこの類に属しよう。なかには一種の﹁年占﹂として行われたものもあるが、早くから博奕(ばくえき)に利用されて、種々弊害も生じた。そして近代競馬をはじめ闘牛、闘犬は、いまもかなり盛んである。 武士階層の進出、支配の時代を迎えて武技の演練が重視され、各種の武術競技がおこった。そして流鏑馬(やぶさめ)、犬追物(いぬおうもの)、小笠懸(おがさかけ)などの馬上射技の競技型も生まれた。しかし武術競技︵剣術、柔術、水錬、槍(そう)術、弓術など︶の一般化と専門武芸者の出現は近世泰平の世に入ってからで、多くの流派がそれぞれに生じて、競技の規制、演練の組織も確立していく。そして明治以降は学校体育にも取り入れられて﹁武道競技﹂として面目を改め、近代競技としても確立する。しかし明治以降の近代競技は﹁学校体育﹂をおもなよりどころとして多様な発展を示すに至ったとはいえ、そのほとんどは欧米スポーツの移植であって、武道と相撲以外には伝統のうちから新しい野外競技に発展したものはない。にもかかわらず今日、日本の競技はその種目の多様さと競技参加人口の多さにおいて、断然他国をしのぐ勢いを示している。 ﹇竹内利美﹈ 出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例