視神経(読み)シシンケイ(英語表記)optic nerve

デジタル大辞泉 「視神経」の意味・読み・例文・類語

し‐しんけい【視神経】

網膜視細胞からの刺激を大脳に伝え、視覚をつかさどる神経。第二脳神経。視束。

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精選版 日本国語大辞典 「視神経」の意味・読み・例文・類語

し‐しんけい【視神経】

  1. 〘 名詞 〙 ( [オランダ語] Gezichtszenuw の訳語 ) 眼球の網膜から脳へ視覚を伝える神経。網膜から出る白い神経繊維の束で、視神経が交差するまでの部分をいう。脊椎動物では従来は第二脳神経とみなされてきたが、本来は網膜とともに脳の一部をなす。視束。
    1. [初出の実例]「即ち物を視は其形色悉く眼中の諸膜及び諸液に透映し眼底に系る所の視神経に触て知覚するなり」(出典:医範提綱(1805)一)

視神経の語誌

解体新書‐二」(一七七四)や「重訂解体新書」(一七九八)では、それぞれ「瞳神経」「鑑神経」と訳され、挙例の「医範提綱」以後も用語は定まらなかった。しかし、明治に入り、多くの解剖辞書で「視神経」が採用されるようになって定着した。

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改訂新版 世界大百科事典 「視神経」の意味・わかりやすい解説

視神経 (ししんけい)
optic nerve


1003

 

 11212





1papilledema choked disc

2optic neuritis papillitisretrobulbar neuritisACTHB

3optic atrophy a b c d e 尿f g 

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「視神経」の意味・わかりやすい解説

視神経
ししんけい

視覚情報を脳に伝える視覚路の一部で、視神経乳頭部から視神経交叉(こうさ)(視交叉)部までのかなり太い円柱状(径4~7ミリメートル)の神経線維の束をさし、視束ともよばれる。脳神経の一つに数えられるが、視神経は脳の末梢(まっしょう)神経ではなく、発生学的、組織学的あるいは機能的にも脳の膨出部とみられている。

 色彩と明暗の感覚は、網膜の刺激受容器である視細胞が光刺激として受け取り、神経の機能単位であるニューロンを三度かえて脳後極の視覚領(線条野)まで電磁波として送られる。すなわち、1億個に近い視細胞(第1ニューロン)は双極細胞(第2ニューロン)を経て神経節細胞(第3ニューロン)約100万に集約され、これから出た神経線維は眼球後端の視神経乳頭部に集まる。ここから強膜篩状板(しじょうばん)を貫き、髄膜3層からなる視神経鞘(しょう)に包まれて眼窩(がんか)内を後走し、視神経管を通って頭蓋(とうがい)内に入る。この視神経は左右それぞれ約100万本の神経線維よりなり、視交叉部で60~80度の角度で合流したのち、ふたたび左右に分かれて視索とよばれ、外側膝状体(しつじょうたい)に入って次の第4ニューロンに伝達される。視神経乳頭から外膝側状体までの長さは約70ミリメートルで、電線の役をしているが、そのうち視神経の長さは35~55ミリメートルで、個体差がある。また、視神経内では網膜の耳側、黄斑部(おうはんぶ)、鼻側より発した神経線維がそれぞれ整然と特定の部分を束状になって後走し、頭蓋内に入って視交叉部に達すると、鼻側線維だけが左右互いに反対側の視神経のほうへ交叉合流(約半分交叉)し、それぞれ網膜耳側より発した線維とともに視索として外側膝状体接合部に達する。視神経の一部には、視覚に関係のある反射運動、すなわち瞳孔(どうこう)反射や調節機能などに関与する求心性伝導路が含まれ、この神経線維は外側膝状体よりさらに進んで上丘に達している。

 視神経は神経膠細胞(こうさいぼう)や結合組織に包まれ、眼動脈由来の豊富な血管網によって栄養補給を受けており、血流障害、感染、中毒、圧迫など、つまり髄膜炎や脳腫瘍(のうしゅよう)などによって障害を受けやすく、また視神経鞘でくも膜下腔(くう)の髄液に包囲されているので、髄液変化によっても障害されやすい。なお、視神経内の神経線維は整然とした走行を脳内でも維持されており、もし脳や視神経の途中でなんらかの障害があれば、逆に乳頭所見や視力・視野の変化などによって障害の位置、原因、強さなどを診断する有力な手段となりうる。

[井街 譲]


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家庭医学館 「視神経」の解説

ししんけい【視神経】

 視神経は、網膜(もうまく)に投射された光刺激(目から入ってくる視覚情報)を、視覚中枢(しかくちゅうすう)である大脳後頭葉(だいのうこうとうよう)(後頭部のあたり)に伝える経路(視路(しろ))の一部です(図「ものが見えるしくみ」)。
 この視神経は、髄鞘(ずいしょう)という、絶縁体の役目をしているカバー部分と、電流が流れる電線のような、約100万本もの神経線維からできています。
 これが直接障害されたり、視神経を栄養している血管がつまったり、あるいは、腫瘍(しゅよう)のようなものによって圧迫されたりすると、視覚情報がうまく大脳に伝わらなくなり、視力低下、視野欠損、色覚異常といったさまざまな症状が現われてきます。
 視神経のはたらきを調べる検査には、どれくらいまで目のちらつきがわかるかというフリッカー検査、どのくらいのコントラスト(明暗差)まで認識できるかを調べるコントラスト視力検査のほか、客観的なものとして、光刺激に誘発される脳波を抽出する視覚誘発電位検査などがあります。
 視神経の機能を直接測定するものではありませんが、視神経の栄養血管の状態を調べるためには、蛍光眼底検査(けいこうがんていけんさ)(蛍光色素を注射して眼底の写真を撮る検査)があります。また、視神経の周辺の状態を調べるためには、CTやMRIなどの画像検査がよく行なわれます。

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百科事典マイペディア 「視神経」の意味・わかりやすい解説

視神経【ししんけい】

脊椎動物の第2脳神経で,視覚を伝える。眼球の後極につく円柱状の柄で,被膜に包まれた有髄神経繊維束で,本来網膜の神経細胞の繊維束であるので視束とも呼ばれる。網膜からの情報を大脳・中脳に伝達する神経で,眼窩(がんか)の奥の視神経孔を通って頭蓋腔に入り,その半分の繊維は交叉(こうさ)して反対側に移り,残りの半分はそのまま同側にとどまって視覚中枢に至る。この交叉部を視交叉(視神経交叉)と呼ぶ。視神経の眼球に近い部分の中軸には網膜に分布する網膜中心動静脈が含まれる。
→関連項目盲人盲点網膜

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「視神経」の意味・わかりやすい解説

視神経
ししんけい
optic nerve

視覚を伝える神経。網膜の多極細胞が集合し,かなり太い線維束となったものが視神経で,眼窩を後内側に進み,視神経管を経て頭蓋腔に入り,間脳の底部に達する。ここで一部または半分が視束交叉を行なって視索となり,間脳後部の外側膝状体に入り,一部は上丘に入る。視神経は発生学的には間脳の一部が突出した眼胞柄といわれる部分であり,脳の一部とみなされている。また組織学的にも,神経膠を有し,シュワン鞘を欠くなど,中枢神経的特徴をもつ。

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栄養・生化学辞典 「視神経」の解説

視神経

 第II脳神経.眼球後極から始まり,眼窩,視神経管を経て頭蓋腔に入り間脳の底部に達する神経線(織)維束.

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世界大百科事典(旧版)内の視神経の言及

【視覚】より

… 光刺激により視細胞には膜電位変化が起こる。脊椎動物の網膜には双極細胞や水平細胞,アマクリン細胞などの介在神経があり,視細胞に起こった変化はこれらに伝えられ,最後に視神経のインパルスとなり,大脳皮質に伝わる。光刺激に対する視神経繊維の応答の特徴の一つは,側抑制がみられることである。…

【脳神経】より

…鼻腔上部の嗅細胞(嗅覚刺激に応じる感覚細胞)の突起が直接脳に到達している点が特徴的である。 第2脳神経は視神経nervus opticusである。網膜の神経節細胞の軸索で部分交差して間脳や中脳に達する。…

【目∥眼】より

…【立田 栄光】
[目の発生]
 眼球の発生のようすは脊椎動物の各系統を通じて共通である。眼球の構成要素のうち,網膜,視神経,色素上皮,毛様体と虹彩の上皮は中枢神経の一部である眼胞optic vesicleがもとになって形成される。水晶体,角膜の上皮,結膜の上皮は外胚葉性の表皮由来であり,角膜の支質と内皮,強膜,脈絡膜,毛様体と虹彩の上皮以外の部分は中胚葉性の間充織由来である。…

※「視神経」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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