過ごす（読み）スゴス

デジタル大辞泉 「過ごす」の意味・読み・例文・類語

すご・す【過ごす】

 
﹇動サ五︵四︶﹈︽﹁すぐす﹂の音変化︾
1 何かをして時間を費やす。﹁休日は子供と遊んで―・した﹂
2 月日を送る。暮らす。﹁その後は、いかがお―・しですか﹂
3 そのままの状態にしておく。
﹁お前はどうかして一寸それをぼかして―・そうと云うのだ﹂︿鴎外・半日﹀
4 物事の程度を越す。特に、酒を飲み過ぎる。または、酒を飲む。﹁冗談も度を―・すと不愉快だ﹂﹁友達にすすめられて、ついつい―・してしまった﹂﹁どうぞ一つ、お―・しください﹂
5 生活の面倒を見る。養う。
﹁二十三にもなって親を―・す所か﹂︿二葉亭・浮雲﹀
6 物事を終わらせる。済ませる。すぐす。
﹁えさらず思ふべき産屋の事もあるを、これ―・すべしと思ひて﹂︿かげろふ・中﹀
7 年をとる。老いる。すぐす。
﹁久我の少将通宣、いたく―・したる程にて﹂︿増鏡・秋のみ山﹀
8 ︵動詞の連用形に付いて︶
㋐適当な程度を越して事をする。﹁遊び―・す﹂﹁寝―・す﹂
㋑そのままにしておく。﹁見―・す﹂﹁やり―・す﹂
[補説]上代には﹁すぐす﹂が普通で﹁すごす﹂はほとんど見られない。平安時代には両者が併用され、中世末期ごろから﹁すごす﹂が普通になった。
[可能]すごせる
[類語]︵1︶︵2︶送る・費やす・暮らす・明かし暮らす・明け暮れる・消光する  

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精選版 日本国語大辞典 「過ごす」の意味・読み・例文・類語

すご・す【過】

 

(一)〘 他動詞 サ行五︵四︶ 〙
 (二)① 日時、年月が移って行くのに任せる。時を経過させる。すぐす。
(一)[初出の実例]﹁さきざきも申さんとおもひしかども、必ず心まどはし給はん物ぞと思ひて、今まですごし侍りつる也﹂(出典‥竹取物語︵9Ｃ末‐１０Ｃ初︶)
 (二)﹁ここなる人のわづらひければ折あしかるべし。︿略﹀このほどをすごして迎へ奉らむ﹂(出典‥堤中納言物語︵11Ｃ中‐１３Ｃ頃︶はいずみ)
 (三)② この世に生きて暮らす。また、生計を立てる。すぐす。
(一)[初出の実例]﹁夕暮となれば、いみじくくし給へば、かくてはいかですごし給はむと泣く﹂(出典‥源氏物語︵1001‐14頃︶若紫)
 (二)﹁イノチヲ sugosu(スゴス)︿訳﹀生活をする﹂(出典‥日葡辞書︵1603‐04︶)
 (四)③ 生活のめんどうをみる。養う。すぐす。
(一)[初出の実例]﹁よろづの営みをして母をすごさんために﹂(出典‥御伽草子・蛤の草紙︵室町末︶)
 (二)﹁壱人のはたらきにて大勢をすごすは、町人にても大かたならぬ出世﹂(出典‥浮世草子・日本永代蔵︵1688︶六)
 (五)④ そばを通過させる。通り過ぎるのを待つ。やりすごす。すぐす。
(一)[初出の実例]﹁さきに出たれば、すこしたてて、太刀をぬきて打ければ﹂(出典‥宇治拾遺物語︵1221頃︶一一)
 (六)⑤ そのままにしておく。うちすてておく。すぐす。
(一)[初出の実例]﹁小菅ろの浦吹く風の何(あ)ど為為(すす)か愛(かな)しけ児ろを思ひ須吾左(スゴサ)む﹂(出典‥万葉集︵8Ｃ後︶一四・三五六四)
 (二)﹁ふりはなれてながめ侍つる月影のすごしがたさを、折うれしう﹂(出典‥夜の寝覚︵1045‐68頃︶一)
 (七)⑥ 盛りの時期を過ぎさせる。また、人が年をとる。すぐす。
(一)[初出の実例]﹁久我の少将通宣、いたくすごしたる程にて、ひげがちにねび給へるかたちして﹂(出典‥増鏡︵1368‐76頃︶一三)
 (八)⑦ 物事の終わるのを待つ。また、物事をすませる。すぐす。
(一)[初出の実例]﹁えさらず思ふべき産屋のこともあるを、これすごすべしと思ひて﹂(出典‥蜻蛉日記︵974頃︶中)
 (九)⑧ 適当な度合を超えさせる。動詞の連用形に付けて用いることが多い。すぐす。
(一)[初出の実例]﹁日たくるまで御殿籠りすこしたれば、人目もいとやすし﹂(出典‥夜の寝覚︵1045‐68頃︶二)
 (二)﹁勉強を過して体を壊すなとか﹂(出典‥少年行︵1907︶︿中村星湖﹀一六)
 (十)⑨ 特に、酒を過度に飲む。また、単に酒を飲む。
(一)[初出の実例]﹁上戸の曲として、かならずすごすと見えたり﹂(出典‥仮名草子・身の鏡︵1659︶中)
 (二)﹁そんなことは後目にしてマアマア一杯すごしなせへ﹂(出典‥西洋道中膝栗毛︵1870‐76︶︿仮名垣魯文﹀一一)
 (11)⑩ 過失を犯す。すぐす。
(一)[初出の実例]﹁すこしたる事にてもあれ、又ふりょの事にてもあれ、なげかしき事のいできたらんをも﹂(出典‥極楽寺殿御消息︵13Ｃ中︶第九三条)
 (二)﹁それがしがすごしたるとがはなけれども﹂(出典‥幸若・景清︵寛永版︶︵室町末‐近世初︶)

過ごすの語誌


(1)上代では﹁すぐす﹂が普通で、﹁すごす﹂は⑤の挙例﹁万葉集﹂の東歌に見られる﹁思ひすごす﹂の例だけである。平安時代頃から次第に﹁すごす﹂が併用されるようになり、室町時代以降は﹁すごす﹂の方が普通の形となった。
(2)意味は両者共通している点が多いが、﹁すごす﹂には⑨のような新しい意味が現われている。

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