嶋中事件ともいう。《中央公論》は1960年12月号に深沢七郎の創作《風流夢譚》を掲載したが,この作品は皇室を侮辱したものであるとした右翼団体は中央公論社に対する圧力を強めた。61年2月1日夜,大日本愛国党の元党員の少年が中央公論社嶋中社長宅に侵入し,社長夫人に重傷を負わせ,お手伝いさんを刺殺した。当初,中央公論社は《風流夢譚》掲載について,実名小説の取扱いに配慮を欠いていたことを認め,世間を騒がせたことに遺憾の意を表し,殺傷事件発生後は,この種の暴力に対し,〈社業をとおして言論の自由を守る〉ことを社告によって誓ったが,その直後,この社告を否定し,全面的に謝罪する〈おわび〉を発表して右翼の攻撃を回避した。この事件の中央公論社に対する衝撃は大きく,61年12月,当時同社が発売を引き受けていた《思想の科学》天皇制特集号(1962年1月号)を自主的に発売中止,断裁した,いわゆる《思想の科学》事件を発生させた。またこの殺傷事件は,社会的には1960年10月12日の浅沼稲次郎社会党委員長刺殺事件とともに,60年安保闘争中からみられた右翼の台頭とそのテロリズムの復活を示すものとされた。
執筆者:京谷 秀夫
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…共同研究が積極的に行われ,昭和20年代に《アメリカ思想史》,30年代には《転向》があり,多くの研究者,評論家を育成,《思想の科学》はその機関誌として講談社(1954‐55),中央公論社(1959‐61)と発行所を変えて刊行された。61年2月中央公論社に風流夢譚事件が起こり,これに関連して《思想の科学》は62年1月号に〈天皇制〉を特集,中央公論社は周囲の事情を考慮して発売を中止し,破棄断裁を行った。いわゆる《思想の科学》事件である。…
※「『風流夢譚』事件」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
タコノキ科の常緑高木。小笠原諸島に特産する。幹は直立して太い枝をまばらに斜上し,下部には多数の太い気根がある。葉は幹の頂上に密生し,長さ1〜2m,幅約7cmで,先は細くとがり,縁には鋭い鋸歯(きょし)...
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