米国株にぴたり連動
今年に入って急激に株価が上昇し、3月上旬には日経平均株価が4万円台を付けた。この上昇が一過性のものなのか、それとも継続的な流れなのかを考えてみた。
日本株の変化は、ほとんど米国株に連動したものであることは、投資家の間ではよく知られている事実だ。特に、米国の新興企業の株価であるナスダック総合指数は、ほとんどぴったりと日経平均株価と連動している。つまり、米国株に投資して運用資産額が増加した世界の投資家が同時に日本株に分散投資をしてくるから、両者はほぼ一致して動くことになる。
投資家の運用資産額は、もちろん米国株が巨大な割合を占めていて、規模の小さい日本株は海外から流入してくる資金量に大きく揺さぶられてしまう。米国株が何に動かされているのかを調べれば、日本株の今後の動向も見えてくると考えることができる。
世界中が情熱燃やし調べるのは…
ナスダック指数を動かす経済データはいくつかある。米国の株価だから、やはり米経済の変動には敏感なのだろう。さまざまなデータ分析をしている人の間で共通して言われるのは、米国の株価と経済データは本当によく連動しているということだ。一方、日本の株価は、日本の経済データと必ずしも連動せずバラバラの動きをする。だから、日本のデータを情熱を燃やして調べようという人は少ない。
それに対して、投資のパフォーマンスと直結してくる米国のデータは、世界中の投資家たちが全エネルギーを投じて調べている。たとえ英語で書かれていて、手間がかかるとしても、私たち日本人も米国のデータを細かく調べることになる。
ナスダック指数とよく連動している経済データとして筆者が注目するのは、毎月の半導体売り上げデータ「世界半導体市場統計(WSTS)」だ。このデータは2023年秋ごろから上向き始めて、それに連れてナスダック指数の前年比も、24年1~4月に高い伸びを記録している。これは、半導体ブームが1年半から2年の周期で再び到来していることを反映している。
失速はいつから?
世界の半導体ブームが、株価にも強い影響力を及ぼしているという見方には説得力がある。新型コロナウイルス禍の中で、中国経済は20年後半から急激に立ち上がった。その原動力も半導体ブームだった。そのブームは22年には終了し、23年前半まで、中国以外の国々でも経済成長率を鈍化させた。
しかし意外なことに、日米の景気は23年後半には底堅く、24年前半もその上向きの流れが続いている。株式市場では、米国の利下げ開始が遠のくので、株価はもう上がりにくいとみる人が多いが、筆者は、いずれ半導体サイクルが上向きになる力が強くなり、24年秋以降に米国株は再び上がるとみてよいと考える。日本株もそうした米国株の動きに連動し、秋に再加速すると予想される。
株価失速があるとすれば、25年に入った後から26年前半になると予想できる。楽観ばかりしてはいられない。
(時事通信社「コメントライナー」の一部を加筆修正しました)
︻筆者紹介︼熊野 英生︵くまの・ひでお︶ 1967年生まれ。横浜国立大学卒業後、90年日本銀行に入り、調査統計局、情報サービス局勤務。2000年第一生命経済研究所に移り、11年より現職。22年日本FP協会常務理事を兼任。専門は金融・財政政策、為替市場、経済統計。著書に﹁なぜ日本の会社は生産性が低いのか?﹂﹁本当はどうなの?日本経済﹂など。
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