芦屋河原の合戦
芦屋河原の合戦︵あしやがわらのかっせん︶は、戦国時代初期の永正8年︵1511年︶7月26日-8月10日、摂津国鷹尾城と芦屋河原周辺で行われた合戦。細川澄元軍は、一隊が阿波国より堺に上陸、同年7月13日深井城の合戦となり、もう一隊が兵庫に上陸、芦屋河原の合戦となった。別名葦屋河原の戦いや鷹の尾城の戦いとも呼ばれている。
| 芦屋河原の合戦 | |
|---|---|
 鷹尾城と芦屋河原 | |
| 戦争：攻城戦 | |
| 年月日：永正8年（1511年）7月26日-8月10日 | |
| 場所：鷹尾城とその周辺 | |
結果：細川澄元軍 の勝利
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| 交戦勢力 | |
| 赤松義村軍 細川尚春軍 灘五郷衆 |
細川高国軍
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| 指導者・指揮官 | |
| 赤松義村 細川尚春
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瓦林政頼 柳本宗雄 波多野元清 能勢頼豊 荒木大輔 |
| 戦力 | |
| 約20,000兵 | 不明 |
| 損害 | |
| 200兵以上 | 鷹尾城開城、死傷者3,000兵 |
開戦までの経緯
永正の錯乱で室町幕府管領細川氏の跡目をめぐる内紛がおき、如意ケ嶽の戦いで細川高国、大内義興連合軍は勝利し、細川澄元軍は阿波国に帰国し兵馬を休め再び上京の機会を狙っていた。
永正8年︵1511年︶5月1日鷹尾城の築城をめぐる小規模な戦いがおこる。細川高国は被官であった瓦林政頼に鷹尾城築城を命じる。同地域は阿波国から京に向かう進路にあたり、古来より西国との交通の要街であり、また肥沃な灘筋を抑える意味でもここに進出したものと思われている。しかし、同地域にある灘五郷には惣と呼ばれる村落自治組織があり、権門の所領荘園という事を口実に守護の命にも従わず、﹃瓦林政頼記﹄によると、誇張された表現も含まれるが灘五郷には地侍が3千名とも4千名ともいたと記され、同地域を支配していた。武家の封建権力に抵抗していた灘五郷は、鷹尾城の築城に刺激された。灘五郷は多年にわたり不和であった、本庄衆と西宮衆と同盟を組み鷹尾城に対抗する動きに出る。この動きを察知した瓦林政頼は鷹尾城より討手20余人を出し、中心人物を討ち取った。この中心人物は瓦林政頼とは同族でありながら細川澄元方であったと見られ、これが5月1日になる。この時瓦林政頼は、本庄衆に対して細川高国の命に従わず討手に敵対した処罰として、鷹尾城の外堀を作らせ用水を樋でかけよと命じる。用水は田畑を耕すもので、これを取り上げられることに納得のいかなかった本庄衆は、同年5月6日灘五郷衆の応援を得て2000名で攻め寄せた。鷹尾城に詰めていた23名の与力衆は神水を飲み、主力の本庄衆300名に突入し20余名余りを討ち取ると、本庄衆は敗走しこれを見た他の寄せ手は逃亡してしまった。
細川高国像/東林院所蔵
鷹尾山城、芦屋城と周辺地域の空中写真/国土交通省 国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスの空中写真を基に作成
この報は細川澄元に通じ兵をあげることになる。まず同年6月近江国に退避していた足利義澄と呼応して、京を接撃する手はずを整え、四国の兵を集め総大将に細川政賢、細川元常を任じ、同年7月7日堺に上陸深井城に陣をはった。これに対して細川高国は摂津国国人衆、池田氏、伊丹氏、三宅氏、茨木氏、安威氏、福井氏、太田氏、入江氏、高槻氏の総勢2万兵に出軍を命じ、同月13日深井城の合戦となったが敗れ、細川澄元軍は中嶋城まで攻めのぼった。
- この時の戦いの様子は深井城の合戦も参照。
戦いの状況
一方、鷹尾城は淡路国守護細川尚春が総大将となり兵庫に上陸との報が入ると、瓦林政頼は細川高国に注進、細川高国は精鋭の馬廻り衆として、柳本宗雄、波多野元清、能勢頼豊、荒木大輔ら30余名と援軍3000兵を派兵、芦屋浜に布陣、瓦林政頼は鷹尾城を中心に山方を固めた。細川尚春軍には灘五郷の地侍衆が加わり、両軍は同年7月26日戦闘が開始された。細川高国の増援軍は芦屋川の河原で戦いとなり、瓦林政頼は山方で戦闘になったようである。この時の戦闘の様子を﹃瓦林政頼記﹄では、
| 「 | マクツマクラリツ、逐ツヲワレ花火ヲチラシ戦 | 」 |
—瓦林政頼記 | ||
とありかなりの激戦であった。またこの時瓦林政頼の一族と思われ、細川澄元に与していた瓦林新五郎なる人物が、鷹尾城へ詰め、外城を落城させたことにより、細川澄元から感状が賞されている。﹃兵庫県の不思議事典﹄によると、本城は山頂にあった主郭部分︵鷹尾山城︶、山麓には外構え︵芦屋城︶が形成されたとしている。鷹尾城の外城は落城したが、瓦林政頼は激戦を勝ちぬき、細川尚春軍の200余人を討ち取った。その後追撃戦となり有馬郡湯原村まで追いたてた。
ここに播磨国守護赤松義村という人物がいる。赤松義村の義母洞松院は細川勝元の娘であったことから、赤松義村は細川澄元に与した。また細川澄元の兄、備中国守護細川之持は赤松義村の姉婿という縁より、細川高国とは敵対関係にあった。そのような関係より細川澄元は援軍を要請、同年8月上旬赤松義村は御着城を出立、加古川周辺で軍勢を整え、大蔵谷周辺で細川尚春、灘五郷敗残軍と合流、同年8月5日兵庫浦に到着する。この時の総数は2万兵まで膨らんだ。
同年8月8日には鷹尾城を包囲、戦闘は翌9日より開始されようである。﹃細川両家記﹄によると﹁さかしき谷、高き岸ともいわず﹂攻め立てとあり、﹃瓦林政頼記﹄では﹁息もさせず﹂攻め立てたとあることから、赤松義村軍は猛攻を仕掛けた。戦闘は10日も続き、城方は何回も応戦したが死傷者が3千名も出した。翌11日には火攻めがあるという噂が流れ、瓦林政頼は開城を決意、10日夜城方を引き連れ伊丹城に退却した。
戦後の影響
赤松義村、細川尚春、灘五郷連合軍は、鷹尾城をただちに占領、米、銭、兵具を略奪し城に火をかけたようである。この敗戦の様子を聞いた三条西実隆は、
世上安危知り難し、如何々々 — 実隆公記 永年八年八月十一日条
船岡山の石標
ファイル:Takao2.jpg鷹尾城案内板と登山口
と記しており、この戦いは京都の安危にも影響をあたえ、憂慮している事が伺え知れる。その後赤松義村軍は伊丹城を攻囲。瓦林政頼の手勢は伊丹城に留め置き小者一人を伴い、援軍として駆け付けた波多野元清の居城八上城で籠った。
一方、細川尚春軍は深井城の合戦で勝利した細川政賢軍と合流し京都に向けて進軍、これに危機感を覚えた征夷大将軍足利義稙は、細川高国、大内義興連合軍を引き連れ、同年8月16日京を離れ但馬国に逃れ、細川政賢、細川尚春連合軍は入京した。しかし同月24日には細川高国、大内義興連合軍は細川澄元軍が陣をはっていた船岡山城を攻城、勝利した。
この時の戦いの様子は船岡山合戦も参照。
伊丹城では瓦林政頼が居なかったせいか、それほど厳しくは攻めてこなかった。攻囲していた赤松義村軍は船岡山合戦での敗報を聞き、同年8月26日攻囲をとき生瀬口より帰国した。翌永正9年︵1512年︶6月、細川高国と洞松院は大物城で会談し、赤松義村の罪を放免することで両者の和議がまとまった。これにより、瓦林政頼は鷹尾城を復した。また近江国で接撃を狙っていた足利義澄は船岡山合戦の直前に水茎岡山城で病死していた。
船岡山合戦の勝利、赤松義村との和睦により細川高国、大内義興は安定した政権を運営し、細川高国と細川澄元の内紛は以後8年間休戦状態となる。
戦場跡へのアクセス
参考文献
