「としまえんの水上設置遊具による溺水事故」の版間の差分
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{{実名|可否=否|説明=女児A、その他関係者|仮名=A、B、C、D}} |
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{{注意|女児Aその他関係者の実名は掲載しないでください。出典に実名またはその一部が掲載されている場合は、A、B、C、Dの伏字に置き換えてください。実名が掲載された場合、[[WP:DEL#B-2|ウィキペディアの方針]]により削除の対象となります。}}
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{{Infobox 事故 |
{{Infobox 事故 |
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|also known as = としまえんプール死亡事故 |
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|cause = [[ライフジャケット]]の着用、監視の不足 |
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|first reporter = 定時点検を行った監視員 |
|first reporter = 定時点検を行った監視員 |
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[[ファイル:Toshimaen main gate 2019-01-13 (1).jpg|サムネイル|事故が発生したとしまえんの正門(2019年1月撮影)]] |
[[ファイル:Toshimaen main gate 2019-01-13 (1).jpg|サムネイル|事故が発生したとしまえんの正門(2019年1月撮影)]] |
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'''としまえんの水上設置遊具による溺水事故'''(としまえんのすいじょうせっちゆうぐによるできすいじこ)とは、[[2019年]]([[令和]]元年)[[8月15日]]に[[東京都]][[練馬区]]に当時あった遊園地「[[としまえん]]」のプールにある、[[エア遊具]]タイプ{{Sfn|報告書|2020|p=9}}の水上設置遊具を備えたアトラクション「ふわふわウォーターランド」において、[[ライフジャケット]]を着用した{{Sfn|報告書|2020|p=19}}女児(以下Aとする)が遊具下に浮いているのが見つかり、その後[[溺死]]した事故である{{Sfn|報告書|2020|p=4}}。この事故は[[消費者庁]]による調査対象となり{{Sfn|報告書|2020|p=4}}、水中に落下した後に遊具の下に入り込んでしまい、ライフジャケットの[[浮力]]が原因で脱出不能になったのが原因だと結論付けられた{{Sfn|報告書|2020|p=40-41}}。この事故を教訓に、[[経済産業省]]が水上遊具の保安についてのガイドラインを策定するに至った<ref name="guideline"/>。 |
'''としまえんの水上設置遊具による溺水事故'''︵としまえんのすいじょうせっちゆうぐによるできすいじこ︶とは、[[2019年]]︵[[令和]]元年︶[[8月15日]]に[[東京都]][[練馬区]]に当時あった遊園地﹁[[としまえん]]﹂のプールにある、[[エア遊具]]タイプ{{Sfn|報告書|2020|p=9}}の水上設置遊具を備えたアトラクション﹁ふわふわウォーターランド﹂において、[[救命胴衣|ライフジャケット]]を着用した{{Sfn|報告書|2020|p=19}}女児︵以下Aとする︶が遊具下に浮いているのが見つかり、その後[[水死|溺死]]した事故である{{Sfn|報告書|2020|p=4}}。この事故は[[消費者庁]]による調査対象となり{{Sfn|報告書|2020|p=4}}、水中に落下した後に遊具の下に入り込んでしまい、ライフジャケットの[[浮力]]が原因で脱出不能になったのが原因だと結論付けられた{{Sfn|報告書|2020|p=40-41}}。この事故を教訓に、[[経済産業省]]が水上遊具の保安についてのガイドラインを策定するに至った<ref name="guideline"/>。
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== 事故現場 == |
== 事故現場 == |
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事故現場となったとしまえんは[[1926年]]に開業し、プールが開業したのは3年後の[[1929年]]であった<ref name="東京01">{{Cite news|title=94年の歴史に幕を下ろす「としまえん」の知られざる歴史 地元出身の記者が愛を込めて|newspaper=[[東京新聞]]|date=2020-08-26|author=神谷円香|url=https://www.tokyo-np.co.jp/article/51150|accessdate=2021-09-15|publisher=[[中日新聞東京本社]]|language=ja|archiveurl=https://web.archive.org/web/20210915135537/https://www.tokyo-np.co.jp/article/51150|archivedate=2021年9月15日}}</ref>。「ふわふわウォーターランド」は[[2016年]]から供用が開始されていた{{Sfn|報告書|2020|p=4}}。「ふわふわウォーターランド」が設置されていたのは、8レーンがある[[競泳]]用のプールで、長さ50[[メートル]]、幅20メートル、水深は1.2メートルから1.9メートルあり、Aの身長では水底に足が届かない場所もあった{{Sfn|報告書|2020|p=4}}<ref name="朝日01">{{Cite news|title=としまえんのプールで8歳女児死亡 浮かぶ遊具の下で|newspaper=[[朝日新聞デジタル]]|date=2019-08-15|author=|url=https://www.asahi.com/articles/ASM8H5PX4M8HUTIL02R.html|accessdate=2021-09-15|publisher=[[朝日新聞社]]|language=ja|archiveurl=https://web.archive.org/web/20210915135540/https://www.asahi.com/articles/ASM8H5PX4M8HUTIL02R.html|archivedate=2021年9月15日}}</ref><ref name="産経01">{{Cite news|title=〈独自〉としまえんプール死亡事故 小3女児遺族、運営会社など提訴へ|newspaper=[[産経新聞ニュース|産経ニュース]]|date=2020-05-07|author=|url=https://www.sankei.com/article/20200507-7HGZW4LDLVJ55K36DFYRHK3LXE/|accessdate=2021-09-15|publisher=[[産業経済新聞社]]|language=ja|archiveurl=https://web.archive.org/web/20210818101357/https://www.sankei.com/article/20200507-7HGZW4LDLVJ55K36DFYRHK3LXE/|archivedate=2021年8月18日}}</ref>。「ふわふわウォーターランド」には、エア遊具タイプと呼ばれる水上設置遊具が10個以上設置されていた<ref name="産経01"/>{{Sfn|報告書|2020|p=9}}。これは、専門的には空気膜構造遊具と呼ばれ<ref name="note01">{{Cite web|url=https://sonae.uminohi.jp/n/n0b4a5caf76d7?gs=64b2d718ef09|title=水上エア遊具にまつわるリスクと安全対策とは?消費者安全調査委員会が公開した“報告書”をふまえた見解を専門家に聞きました|accessdate=2021-09-15|publisher=[https://uminohi.jp/ 海と日本PROJECT]|author=栗橋寿(一般社団法人日本エア遊具安全普及協会 代表理事)|date=2021-03-23|website=[[note (配信サイト)|海の事故ゼロの未来をつくるノート]]|language=ja|archiveurl=https://web.archive.org/web/20210915135604/https://sonae.uminohi.jp/n/n0b4a5caf76d7?gs=64b2d718ef09|archivedate=2021-09-15}}</ref>、空気を入れることによって水面に浮く遊具であり、空気を抜いておけば保管しやすいこと、遊具の形状を何通りにも変更することができることが長所である{{Sfn|報告書|2020|p=9}}。しかし、遊具下への進入防止用の網などは未設置だった<ref name="産経01"/>。「ふわふわウォーターランド」の企画並びに設計はとしまえんが独自に行ったもので、遊具は[[中華人民共和国]]のメーカーから調達したものだった{{Sfn|報告書|2020|p=17}}。Aが落下した遊具は、大人と子供を合わせて一度に15人が遊べる程度の大きさであった{{Sfn|報告書|2020|p=18}}。[[東京スポーツ]]が毎年子供と「ふわふわウォーターランド」を利用しているという男性の話として伝えたところによれば、遊具の厚みは30センチメートル以上ありかつ、表面はツルツルしているため、子供が独力で水中から遊具に上ることは不可能で、後述するライフジャケットを着用した状態で遊具の下に入ってしまった場合、大人でも脱出することはできないだろうという<ref>{{Cite news|title=ライフジャケットが命取りに?としまえんプール小3死亡事故で指摘|newspaper=[[東京スポーツ]]|date=2019-08-16|url=https://www.tokyo-sports.co.jp/social/incident/1513248/|accessdate=2021-09-15|publisher=東京スポーツ新聞社|language=ja|archiveurl=https://web.archive.org/web/20210915135519/https://www.tokyo-sports.co.jp/social/incident/1513248/|archivedate=2021年9月15日}}</ref>。 |
事故現場となったとしまえんは[[1926年]]に開業し、プールが開業したのは3年後の[[1929年]]であった<ref name="東京01">{{Cite news|title=94年の歴史に幕を下ろす「としまえん」の知られざる歴史 地元出身の記者が愛を込めて|newspaper=[[東京新聞]]|date=2020-08-26|author=神谷円香|url=https://www.tokyo-np.co.jp/article/51150|accessdate=2021-09-15|publisher=[[中日新聞東京本社]]|language=ja|archiveurl=https://web.archive.org/web/20210915135537/https://www.tokyo-np.co.jp/article/51150|archivedate=2021年9月15日}}</ref>。「ふわふわウォーターランド」は[[2016年]]から供用が開始されていた{{Sfn|報告書|2020|p=4}}。「ふわふわウォーターランド」が設置されていたのは、8レーンがある[[競泳]]用のプールで、長さ50[[メートル]]、幅20メートル、水深は1.2メートルから1.9メートルあり、Aの身長では水底に足が届かない場所もあった{{Sfn|報告書|2020|p=4}}<ref name="朝日01">{{Cite news|title=としまえんのプールで8歳女児死亡 浮かぶ遊具の下で|newspaper=[[朝日新聞デジタル]]|date=2019-08-15|author=|url=https://www.asahi.com/articles/ASM8H5PX4M8HUTIL02R.html|accessdate=2021-09-15|publisher=[[朝日新聞社]]|language=ja|archiveurl=https://web.archive.org/web/20210915135540/https://www.asahi.com/articles/ASM8H5PX4M8HUTIL02R.html|archivedate=2021年9月15日}}</ref><ref name="産経01">{{Cite news|title=〈独自〉としまえんプール死亡事故 小3女児遺族、運営会社など提訴へ|newspaper=[[産経新聞ニュース|産経ニュース]]|date=2020-05-07|author=|url=https://www.sankei.com/article/20200507-7HGZW4LDLVJ55K36DFYRHK3LXE/|accessdate=2021-09-15|publisher=[[産業経済新聞社]]|language=ja|archiveurl=https://web.archive.org/web/20210818101357/https://www.sankei.com/article/20200507-7HGZW4LDLVJ55K36DFYRHK3LXE/|archivedate=2021年8月18日}}</ref>。「ふわふわウォーターランド」には、エア遊具タイプと呼ばれる水上設置遊具が10個以上設置されていた<ref name="産経01"/>{{Sfn|報告書|2020|p=9}}。これは、専門的には空気膜構造遊具と呼ばれ<ref name="note01">{{Cite web|和書|url=https://sonae.uminohi.jp/n/n0b4a5caf76d7?gs=64b2d718ef09|title=水上エア遊具にまつわるリスクと安全対策とは?消費者安全調査委員会が公開した“報告書”をふまえた見解を専門家に聞きました|accessdate=2021-09-15|publisher=[https://uminohi.jp/ 海と日本PROJECT]|author=栗橋寿(一般社団法人日本エア遊具安全普及協会 代表理事)|date=2021-03-23|website=[[note (配信サイト)|海の事故ゼロの未来をつくるノート]]|language=ja|archiveurl=https://web.archive.org/web/20210915135604/https://sonae.uminohi.jp/n/n0b4a5caf76d7?gs=64b2d718ef09|archivedate=2021-09-15}}</ref>、空気を入れることによって水面に浮く遊具であり、空気を抜いておけば保管しやすいこと、遊具の形状を何通りにも変更することができることが長所である{{Sfn|報告書|2020|p=9}}。しかし、遊具下への進入防止用の網などは未設置だった<ref name="産経01"/>。「ふわふわウォーターランド」の企画並びに設計はとしまえんが独自に行ったもので、遊具は[[中華人民共和国]]のメーカーから調達したものだった{{Sfn|報告書|2020|p=17}}。Aが落下した遊具は、大人と子供を合わせて一度に15人が遊べる程度の大きさであった{{Sfn|報告書|2020|p=18}}。[[東京スポーツ]]が毎年子供と「ふわふわウォーターランド」を利用しているという男性の話として伝えたところによれば、遊具の厚みは30センチメートル以上ありかつ、表面はツルツルしているため、子供が独力で水中から遊具に上ることは不可能で、後述するライフジャケットを着用した状態で遊具の下に入ってしまった場合、大人でも脱出することはできないだろうという<ref>{{Cite news|title=ライフジャケットが命取りに?としまえんプール小3死亡事故で指摘|newspaper=[[東京スポーツ]]|date=2019-08-16|url=https://www.tokyo-sports.co.jp/social/incident/1513248/|accessdate=2021-09-15|publisher=東京スポーツ新聞社|language=ja|archiveurl=https://web.archive.org/web/20210915135519/https://www.tokyo-sports.co.jp/social/incident/1513248/|archivedate=2021年9月15日}}</ref>。 |
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「ふわふわウォーターランド」においては、利用者は身長1.1メートル以上でありかつ、溺水並びに遊具下への進入防止のため、貸し出される[[ライフジャケット]]を着用している必要があった{{Sfn|報告書|2020|p=17}}。「ふわふわウォーターランド」において貸し出されるライフジャケットは、[[発泡スチロール]]を利用して浮力を得る固形式構造の物であり、形状は[[チョッキ]]のようになっていた。チョッキに両腕を通して前で留め、調節を行う形式であった{{Sfn|報告書|2020|pp=10-11}}。この他、「ふわふわウォーターランド」の利用者に対しては、一人で泳げる<ref group="注釈">「一人で泳げる」というのが、浮き具([[浮き輪]]等)を使わずに己の力だけで泳げることを指すのか、浮き具を使用してもよいので、保護者等の同伴なしに泳げることを意味するのかは、出典に記載がないため不明。</ref>かを口頭で確認していた{{Sfn|報告書|2020|p=17}}。さらに多くの利用者は腕に浮き輪を着けていたと、本事故の目撃者が証言している<ref name="NHK01"/>。「ふわふわウォーターランド」においては、遊具から水中に落下する者は決して少なくなく、その上、1時間に2人の割合で、水中に[[ゴーグル#水泳用|ゴーグル]]を落とす人がいたという{{Sfn|報告書|2020|p=18}}。 |
「ふわふわウォーターランド」においては、利用者は身長1.1メートル以上でありかつ、溺水並びに遊具下への進入防止のため、貸し出される[[ライフジャケット]]を着用している必要があった{{Sfn|報告書|2020|p=17}}。「ふわふわウォーターランド」において貸し出されるライフジャケットは、[[発泡スチロール]]を利用して浮力を得る固形式構造の物であり、形状は[[チョッキ]]のようになっていた。チョッキに両腕を通して前で留め、調節を行う形式であった{{Sfn|報告書|2020|pp=10-11}}。この他、「ふわふわウォーターランド」の利用者に対しては、一人で泳げる<ref group="注釈">「一人で泳げる」というのが、浮き具([[浮き輪]]等)を使わずに己の力だけで泳げることを指すのか、浮き具を使用してもよいので、保護者等の同伴なしに泳げることを意味するのかは、出典に記載がないため不明。</ref>かを口頭で確認していた{{Sfn|報告書|2020|p=17}}。さらに多くの利用者は腕に浮き輪を着けていたと、本事故の目撃者が証言している<ref name="NHK01"/>。「ふわふわウォーターランド」においては、遊具から水中に落下する者は決して少なくなく、その上、1時間に2人の割合で、水中に[[ゴーグル#水泳用|ゴーグル]]を落とす人がいたという{{Sfn|報告書|2020|p=18}}。 |
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== としまえんその他の対応 == |
== としまえんその他の対応 == |
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としまえんは、事故当日、「ふわふわウォーターランド」の営業並びに夜間のプール営業([[ナイトプール]])を中止し、翌[[8月16日]]からプール全体を休止した<ref name="朝日01"/>。[[8月23日]]にプールは再開されたが、大型浮き輪の貸し出しは中止されたほか<ref>{{Cite news|title=「としまえん」23日からプールの営業再開|newspaper=[https://media.neriman.jp/archives/8682 ネリマンタイムス]|date=2019-08-22|url=https://media.neriman.jp/archives/8682|accessdate=2021-09-15|publisher=|language=ja|archiveurl=https://web.archive.org/web/20210915142850/https://media.neriman.jp/archives/8682|archivedate=2021年9月15日}}</ref>、2019年はプール営業が終了するまで「ふわふわウォーターランド」の営業を行わないことになった<ref>{{Cite news|title=としまえん女児死亡事故 エア遊具、水上の安全基準なし|newspaper=朝日新聞デジタル|date=2019-08-26|author=高橋健次郎|author2=野村杏実|url=https://www.asahi.com/articles/ASM8N61W7M8NUTFL00X.html|accessdate=2021-09-15|publisher=朝日新聞社|language=ja|archiveurl=https://web.archive.org/web/20210818101359/https://www.asahi.com/articles/ASM8N61W7M8NUTFL00X.html|archivedate=2021年8月18日}}</ref>。「ふわふわウォーターランド」は翌[[2020年]]も営業中止になったまま<ref>{{Cite web|url=http://www.toshimaen.co.jp/pool/fuwafuwa.html|title=ふわふわウォーターランドとは|accessdate=2021-09-15|publisher=としまえん|archiveurl=https://web.archive.org/web/20200616111311/http://www.toshimaen.co.jp/pool/fuwafuwa.html|archivedate=2020-6-16|deadlinkdate=2021-09-15}}</ref>、 |
としまえんは、事故当日、﹁ふわふわウォーターランド﹂の営業並びに夜間のプール営業︵[[ナイトプール]]︶を中止し、翌[[8月16日]]からプール全体を休止した<ref name="朝日01"/>。[[8月23日]]にプールは再開されたが、大型浮き輪の貸し出しは中止されたほか<ref>{{Cite news|title=﹁としまえん﹂23日からプールの営業再開|newspaper=[https://media.neriman.jp/archives/8682 ネリマンタイムス]|date=2019-08-22|url=https://media.neriman.jp/archives/8682|accessdate=2021-09-15|publisher=|language=ja|archiveurl=https://web.archive.org/web/20210915142850/https://media.neriman.jp/archives/8682|archivedate=2021年9月15日}}</ref>、2019年はプール営業が終了するまで﹁ふわふわウォーターランド﹂の営業を行わないことになった<ref>{{Cite news|title=としまえん女児死亡事故 エア遊具、水上の安全基準なし|newspaper=朝日新聞デジタル|date=2019-08-26|author=高橋健次郎|author2=野村杏実|url=https://www.asahi.com/articles/ASM8N61W7M8NUTFL00X.html|accessdate=2021-09-15|publisher=朝日新聞社|language=ja|archiveurl=https://web.archive.org/web/20210818101359/https://www.asahi.com/articles/ASM8N61W7M8NUTFL00X.html|archivedate=2021年8月18日}}</ref>。﹁ふわふわウォーターランド﹂は翌[[2020年]]も営業中止になったまま<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.toshimaen.co.jp/pool/fuwafuwa.html|title=ふわふわウォーターランドとは|accessdate=2021-09-15|publisher=としまえん|archiveurl=https://web.archive.org/web/20200616111311/http://www.toshimaen.co.jp/pool/fuwafuwa.html|archivedate=2020-6-16|deadlinkdate=2021-09-15}}</ref>、同年[[8月31日]]のとしまえん自体の閉園を迎えることとなった<ref name="東京01"/>。
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事故を受けて、NPO法人の[[Safe Kids Japan]]が今回の事故と似たような事故の情報収集を行ったところ、としまえんでの事故後にも、水上遊具から落下して骨折する事故が報告されたという<ref name=NHK02/>。同団体が2019年[[8月27日]]に東京工業大学で行った会合では遊具の大型さゆえに遊具の下に落下した人が全く見えなくなり、しかも遊具の下から遊具に上がる階段がないこと、監視員が少なくその場所や高さも不適当であったこと、場所を知らせる装置がなかったことが指摘された<ref name=NHK02/>。Safe Kids Japan理事長の[[山中龍宏]]は、似た事故の情報をまとめて共有したうえで対策を徹底し、同じ事故が二度と起こらないようにすべきだと指摘した<ref name=NHK02/>。 |
事故を受けて、NPO法人の[[Safe Kids Japan]]が今回の事故と似たような事故の情報収集を行ったところ、としまえんでの事故後にも、水上遊具から落下して骨折する事故が報告されたという<ref name=NHK02/>。同団体が2019年[[8月27日]]に東京工業大学で行った会合では遊具の大型さゆえに遊具の下に落下した人が全く見えなくなり、しかも遊具の下から遊具に上がる階段がないこと、監視員が少なくその場所や高さも不適当であったこと、場所を知らせる装置がなかったことが指摘された<ref name=NHK02/>。Safe Kids Japan理事長の[[山中龍宏]]は、似た事故の情報をまとめて共有したうえで対策を徹底し、同じ事故が二度と起こらないようにすべきだと指摘した<ref name=NHK02/>。 |
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== 原因調査・再現実験 == |
== 原因調査・再現実験 == |
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=== 消費者庁の初期対応 === |
=== 消費者庁の初期対応 === |
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2019年[[8月21日]]に行われた[[消費者庁]]長官の[[伊藤明子]]による記者会見で、本事故に伴う注意喚起や原因調査、安全対策の検討の是非について問われた伊藤は、﹁今の段階で、何をどうしてほしいということを申し上げるという段階ではない﹂と回答した<ref>{{Cite press release|title=伊藤消費者庁長官記者会見要旨|publisher=[[消費者庁]]|date=2019-08-21|url=https://www.caa.go.jp/notice/statement/ito/016291.html|language=ja|accessdate=2021-09-15|archiveurl=https://web.archive.org/web/20210915143925/https://www.caa.go.jp/notice/statement/ito/016291.html|archivedate=2021-09-15}}</ref>。[[8月23日]]に行われた消費者庁[[消費者安全調査委員会]]会長の[[中川丈久]]と同代理の[[持丸正明]]による記者会見では、[[幼稚園]]などのプール事故を対象とした基礎調査を開始していることが明かされた<ref>{{Cite press release|title=記者会見要旨|publisher=消費者庁|date=2019-08-23|url=https://www.caa.go.jp/policies/council/csic/statement/017822.html|language=ja|accessdate=2021-09-15|archiveurl=https://web.archive.org/web/20210915144108/https://www.caa.go.jp/policies/council/csic/statement/017822.html|archivedate=2021-09-15}}</ref>。
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2019年[[8月21日]]に行われた[[消費者庁]]長官の[[伊藤明子]]による記者会見で、本事故に伴う注意喚起や原因調査、安全対策の検討の是非について問われた伊藤は、﹁今の段階で、何をどうしてほしいということを申し上げるという段階ではない﹂と回答した<ref>{{Cite press release|和書|title=伊藤消費者庁長官記者会見要旨|publisher=[[消費者庁]]|date=2019-08-21|url=https://www.caa.go.jp/notice/statement/ito/016291.html|language=ja|accessdate=2021-09-15|archiveurl=https://web.archive.org/web/20210915143925/https://www.caa.go.jp/notice/statement/ito/016291.html|archivedate=2021-09-15}}</ref>。[[8月23日]]に行われた消費者庁[[消費者安全調査委員会]]会長の[[中川丈久]]と同代理の[[持丸正明]]による記者会見では、[[幼稚園]]などのプール事故を対象とした基礎調査を開始していることが明かされた<ref>{{Cite press release|和書|title=記者会見要旨|publisher=消費者庁|date=2019-08-23|url=https://www.caa.go.jp/policies/council/csic/statement/017822.html|language=ja|accessdate=2021-09-15|archiveurl=https://web.archive.org/web/20210915144108/https://www.caa.go.jp/policies/council/csic/statement/017822.html|archivedate=2021-09-15}}</ref>。
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同年[[11月28日]]に行われた消費者安全調査委員会の第88回委員会では、本事故においては死者が出ていること(被害の程度)、同様の遊具が全国に少なくとも26か所設置されていること(公共性)、なぜ水上設置遊具が危険なのか不明であるため、使用者が自ら危険回避の行動をとることが困難であること(消費者による回避可能性)、2019年までの5年間において、新規に多くの水上設置遊具が設置されており、今後も数多く設置されると見込まれること(多発性)から、本事故について、[[消費者安全法]]第23条第1項に基づく事故等原因調査の対象とすることが決定され、国立研究開発法人[[産業技術総合研究所]]人工知能研究センター主任研究員の[[北村光司]]、国立大学法人[[長岡技術科学大学]]大学院技術経営研究科システム安全専攻准教授の[[木村哲也 (工学者)|木村哲也]]、公益財団法人[[日本ライフセービング協会]]副理事長の[[松本貴行]]の3人が、調査を担当する専門委員に指名された{{Sfn|報告書|2020|p=7}}。その後、2020年[[1月10日]]に行われた調査委員会第35回サービス等事故調査部会と、同年[[1月27日]]に行われた第90回調査委員会において、再現実験の計画が審議された{{Sfn|報告書|2020|p=7}}。 |
同年[[11月28日]]に行われた消費者安全調査委員会の第88回委員会では、本事故においては死者が出ていること(被害の程度)、同様の遊具が全国に少なくとも26か所設置されていること(公共性)、なぜ水上設置遊具が危険なのか不明であるため、使用者が自ら危険回避の行動をとることが困難であること(消費者による回避可能性)、2019年までの5年間において、新規に多くの水上設置遊具が設置されており、今後も数多く設置されると見込まれること(多発性)から、本事故について、[[消費者安全法]]第23条第1項に基づく事故等原因調査の対象とすることが決定され、国立研究開発法人[[産業技術総合研究所]]人工知能研究センター主任研究員の[[北村光司]]、国立大学法人[[長岡技術科学大学]]大学院技術経営研究科システム安全専攻准教授の[[木村哲也 (工学者)|木村哲也]]、公益財団法人[[日本ライフセービング協会]]副理事長の[[松本貴行]]の3人が、調査を担当する専門委員に指名された{{Sfn|報告書|2020|p=7}}。その後、2020年[[1月10日]]に行われた調査委員会第35回サービス等事故調査部会と、同年[[1月27日]]に行われた第90回調査委員会において、再現実験の計画が審議された{{Sfn|報告書|2020|p=7}}。 |
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=== 再発防止策の検討 === |
=== 再発防止策の検討 === |
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[[ファイル:Safety of water athletics.png|サムネイル|水上設置遊具の下に隙間がない場合は、水上設置遊具の下に身体が入ってしまった際に抜け出すことができず呼吸できない︵左︶が{{sfn|報告書|2020|p=41}}、水上設置遊具の下に隙間がある場合は、この隙間のところに浮かぶことによって顔が水面から出るため、呼吸を確保することができる︵右︶{{sfn|報告書|2020|p=28}}。]]
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[[ファイル:Safety of water athletics.png|サムネイル|水上設置遊具の下に隙間がない場合は、水上設置遊具の下に身体が入ってしまった際に抜け出すことができず呼吸できない︵左︶が{{sfn|報告書|2020|p=41}}、水上設置遊具の下に隙間がある場合は、この隙間のところに浮かぶことによって顔が水面から出るため、呼吸を確保することができる︵右︶{{sfn|報告書|2020|p=28}}。]]
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本事故の再発防止策について、報告書においては、遊具の底面を凸にし、遊具の下に入ってしまっても自然に浮き上がって呼吸ができるような仕組みを導入したり、ライフジャケットの着用を中止してより浅い場所に遊具を設置するようにしたりすることが有効であるとされた{{Sfn|報告書|2020|p=45}}。落水防止・遊具下への進入防止用のガードを設置することも有効であるが、水中に落下した場合にガードに絡まって浮きあがれなくなってしまう可能性もあり、安全性については検証が必要であるとされた{{Sfn|報告書|2020|pp=45-46}}。この他、落とし合う行為や水中の覗き込みの禁止、万一の落水時の遊具からの距離確保の徹底、監視体制の見直しや[[ドローン]]・監視カメラ等の活用、身長・年齢・人数制限の見直し、事前の落水・浮上訓練、マニュアルの標準化、ライフジャケットの品質管理の徹底、浮島の広範囲への敷設の中止等の事故対策を当面は優先し、水中に落下するスリルを求めるべきではないとされた{{Sfn|報告書|2020|pp=46-47}}。また、危険性についての掲示や遊具自体への表示、安全指導体制の構築も重要とされた{{Sfn|報告書|2020|pp=46-47}}。 |
本事故の再発防止策について、報告書においては、遊具の底面を凸にし、遊具の下に入ってしまっても自然に浮き上がって呼吸ができるような仕組みを導入したり、ライフジャケットの着用を中止してより浅い場所に遊具を設置するようにしたりすることが有効であるとされた{{Sfn|報告書|2020|p=45}}。落水防止・遊具下への進入防止用のガードを設置することも有効であるが、水中に落下した場合にガードに絡まって浮きあがれなくなってしまう可能性もあり、安全性については検証が必要であるとされた{{Sfn|報告書|2020|pp=45-46}}。この他、落とし合う行為や水中の覗き込みの禁止、万一の落水時の遊具からの距離確保の徹底、監視体制の見直しや[[無人航空機|ドローン]]・監視カメラ等の活用、身長・年齢・人数制限の見直し、事前の落水・浮上訓練、マニュアルの標準化、ライフジャケットの品質管理の徹底、浮島の広範囲への敷設の中止等の事故対策を当面は優先し、水中に落下するスリルを求めるべきではないとされた{{Sfn|報告書|2020|pp=46-47}}。また、危険性についての掲示や遊具自体への表示、安全指導体制の構築も重要とされた{{Sfn|報告書|2020|pp=46-47}}。 |
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事故直後の段階でも、[[日本プール安全管理振興協会]]理事長の[[北條龍治]]が、遊具下への網やフェンスの設置、遊具を透明にして溺れている人を発見しやすくすることなどの対策を提案していた<ref name="産経02"/>。また、安全工学を専門とする[[東京工業大学]]准教授の[[西田佳史]]は、光が水面で反射することで監視が行き届きにくくなることを指摘した<ref name=NHK02/>。Safe Kids Japan理事長の山中も、「ふわふわウォーターランド」の「ふわふわ」という表現が、負傷事故が多発している現状と乖離していることを指摘し、このような表現は避けるように申し合わせるべきだと指摘した<ref name="山中"/>。日本エア遊具安全普及協会代表理事の[[栗橋寿]]は、継続して定期的な安全講習を実施すること、エア遊具の保安を行う人材の育成、水上活動における安全を目的に活動している団体との連携が必要であると指摘した<ref name="note01"/>。栗橋は、水上のエア遊具のリスクとして、遊具の下に入ってしまうリスク以外に、遊具上での衝突・転倒、落水時の溺水、飛込時の他人との激突のリスクがあると指摘し、海上のエア遊具ではこれらに加えて潮流に流される危険もあることを指摘した<ref name="note01"/>。 |
事故直後の段階でも、[[日本プール安全管理振興協会]]理事長の[[北條龍治]]が、遊具下への網やフェンスの設置、遊具を透明にして溺れている人を発見しやすくすることなどの対策を提案していた<ref name="産経02"/>。また、安全工学を専門とする[[東京工業大学]]准教授の[[西田佳史]]は、光が水面で反射することで監視が行き届きにくくなることを指摘した<ref name=NHK02/>。Safe Kids Japan理事長の山中も、「ふわふわウォーターランド」の「ふわふわ」という表現が、負傷事故が多発している現状と乖離していることを指摘し、このような表現は避けるように申し合わせるべきだと指摘した<ref name="山中"/>。日本エア遊具安全普及協会代表理事の[[栗橋寿]]は、継続して定期的な安全講習を実施すること、エア遊具の保安を行う人材の育成、水上活動における安全を目的に活動している団体との連携が必要であると指摘した<ref name="note01"/>。栗橋は、水上のエア遊具のリスクとして、遊具の下に入ってしまうリスク以外に、遊具上での衝突・転倒、落水時の溺水、飛込時の他人との激突のリスクがあると指摘し、海上のエア遊具ではこれらに加えて潮流に流される危険もあることを指摘した<ref name="note01"/>。 |
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=== 報告書の検討と発表 === |
=== 報告書の検討と発表 === |
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消費者安全調査委員会の会合は、2020年3月から4月にかけては[[日本における2019年コロナウイルス感染症の流行状況|新型コロナウイルス感染症]] |
消費者安全調査委員会の会合は、2020年3月から4月にかけては[[日本における2019年コロナウイルス感染症の流行状況|新型コロナウイルス感染症]]︵COVID-19︶の流行により開催されず、委員が各自で報告書案を確認したのみであった{{Sfn|報告書|2020|p=8}}。[[5月21日]]になって第92回調査委員会で、[[6月11日]]には調査委員会第37回サービス等事故調査部会において報告書の審議が行われ、さらに[[6月19日]]に第93回調査委員会で報告書が決定された{{Sfn|報告書|2020|p=8}}。この報告書においては、[[経済産業省]]に対し、水上設置遊具の安全基準の整備、設置者への安全指導の他、水中の覗き込みの禁止、点検の強化など、応急的な再発防止策の実施を求めた{{Sfn|報告書|2020|pp=48-49}}。また、[[文部科学省]]に対しては、浮島を小学校の授業で使用することについての注意喚起を[[教育委員会]]に行うよう求めた{{Sfn|報告書|2020|p=49}}。
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これらを受けて経済産業省は、検討会を開催したうえで、2020年[[12月25日]]に﹁水上設置遊具の安全に関するガイドライン﹂を策定した<ref name="guideline">{{Cite web|url=https://www.meti.go.jp/press/2020/12/20201225010/20201225010.html|title=﹁水上設置遊具の安全に関するガイドライン﹂を策定しました|accessdate=2021-09-15|publisher=[[経済産業省]]|date=2020-12-25|language=ja|archiveurl=https://web.archive.org/web/20210915135532/https://www.meti.go.jp/press/2020/12/20201225010/20201225010.html|archivedate=2021-09-15}}</ref>。このガイドラインは、遊具を提供する事業者、遊具を運営する事業者、並びにすべての関係事業者のそれぞれについて、取り組むべきことを定めている<ref>{{Cite press release|title=水上設置遊具の安全に関するガイドライン|publisher=経済産業省|date=2020-12-25|url=https://www.meti.go.jp/press/2020/12/20201225010/20201225010-1.pdf|format=PDF|language=ja|accessdate=2021-09-15|archiveurl=https://web.archive.org/web/20210903231507/https://www.meti.go.jp/press/2020/12/20201225010/20201225010-1.pdf|archivedate=2021-09-15}}</ref>。また、文部科学省の下部組織である[[スポーツ庁]]は[[2021年]][[4月26日]]に発出した通知﹁水泳等の事故防止について︵通知︶﹂の中で本報告書に言及し、浮島を授業で使用する際の監視体制の強化や、安全確保が不可能な場合の使用中止を求めた<ref>{{Cite press release|title=水泳等の事故防止について︵通知︶|publisher=[[スポーツ庁]]|date=2021-04-26|url=https://www.meti.go.jp/press/2020/12/20201225010/20201225010-1.pdf#page=5|format=PDF|page=5|language=ja|accessdate=2021-09-15|archiveurl=https://web.archive.org/web/20210818101401/https://www.caa.go.jp/policies/council/csic/report/report_018/assets/csic_cms101_210518_01.pdf#page=5|archivedate=2021-09-15}}</ref>。日本エア遊具安全普及協会代表理事の栗橋は、このガイドラインには法的拘束力がないため、同協会に加盟していないメーカーにまでどのようにこのガイドラインを普及させていくかが課題であると指摘した<ref name="note01"/>。
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これらを受けて経済産業省は、検討会を開催したうえで、2020年[[12月25日]]に﹁水上設置遊具の安全に関するガイドライン﹂を策定した<ref name="guideline">{{Cite web|和書|url=https://www.meti.go.jp/press/2020/12/20201225010/20201225010.html|title=﹁水上設置遊具の安全に関するガイドライン﹂を策定しました|accessdate=2021-09-15|publisher=[[経済産業省]]|date=2020-12-25|language=ja|archiveurl=https://web.archive.org/web/20210915135532/https://www.meti.go.jp/press/2020/12/20201225010/20201225010.html|archivedate=2021-09-15}}</ref>。このガイドラインは、遊具を提供する事業者、遊具を運営する事業者、並びにすべての関係事業者のそれぞれについて、取り組むべきことを定めている<ref>{{Cite press release|和書|title=水上設置遊具の安全に関するガイドライン|publisher=経済産業省|date=2020-12-25|url=https://www.meti.go.jp/press/2020/12/20201225010/20201225010-1.pdf|format=PDF|language=ja|accessdate=2021-09-15|archiveurl=https://web.archive.org/web/20210903231507/https://www.meti.go.jp/press/2020/12/20201225010/20201225010-1.pdf|archivedate=2021-09-15}}</ref>。また、文部科学省の下部組織である[[スポーツ庁]]は[[2021年]][[4月26日]]に発出した通知﹁水泳等の事故防止について︵通知︶﹂の中で本報告書に言及し、浮島を授業で使用する際の監視体制の強化や、安全確保が不可能な場合の使用中止を求めた<ref>{{Cite press release|和書|title=水泳等の事故防止について︵通知︶|publisher=[[スポーツ庁]]|date=2021-04-26|url=https://www.meti.go.jp/press/2020/12/20201225010/20201225010-1.pdf#page=5|format=PDF|page=5|language=ja|accessdate=2021-09-15|archiveurl=https://web.archive.org/web/20210818101401/https://www.caa.go.jp/policies/council/csic/report/report_018/assets/csic_cms101_210518_01.pdf#page=5|archivedate=2021-09-15}}</ref>。日本エア遊具安全普及協会代表理事の栗橋は、このガイドラインには法的拘束力がないため、同協会に加盟していないメーカーにまでどのようにこのガイドラインを普及させていくかが課題であると指摘した<ref name="note01"/>。
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== 訴訟 == |
== 訴訟 == |
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第1回口頭弁論は2020年[[9月14日]]に行われたが、被告側はいずれも争う姿勢を示し、原告の請求を棄却するよう求めた<ref>{{Cite news|title=としまえん運営会社など争う姿勢 プール事故死訴訟で初弁論|newspaper=産経ニュース|date=2020-09-14|author=|url=https://www.sankei.com/article/20200914-RLXJAF27QFLZHDFMH7E4DO5EXU/|accessdate=2021-09-15|publisher=産業経済新聞社|language=ja|archiveurl=https://web.archive.org/web/20210915142424/https://www.sankei.com/article/20200914-RLXJAF27QFLZHDFMH7E4DO5EXU/|archivedate=2021年9月15日}}</ref>。西武鉄道は「改めてお悔やみ申し上げます。主張は訴訟の中で明らかにする」とコメントするにとどまった<ref>{{Cite news|title=としまえんプール死亡事故 女児の両親が運営側を提訴|newspaper=朝日新聞デジタル|date=2020-09-14|author=新屋絵理|url=https://www.asahi.com/articles/ASN9G64S3N9GUTIL03H.html|accessdate=2021-09-15|publisher=朝日新聞社|language=ja|archiveurl=https://web.archive.org/web/20210915144116/https://www.asahi.com/articles/ASN9G64S3N9GUTIL03H.html|archivedate=2021年9月15日}}</ref>。被告の4社がいずれも事故の責任を押し付け合っていることから、裁判が長引くことは確実だと、[[文春オンライン]]は報じている<ref>{{Cite news|title=「としまえん」のプールで小3女児が溺死…責任を押し付け合う“被告4社”の言い分|newspaper=[[週刊文春|文春オンライン]]|date=2020-09-27|url=https://bunshun.jp/articles/-/40444?page=2|accessdate=2021-09-15|publisher=[[文藝春秋]]|page=2|language=ja|archiveurl=https://web.archive.org/web/20210915135813/https://bunshun.jp/articles/-/40444?page=2|archivedate=2021年9月15日}}</ref>。 |
第1回口頭弁論は2020年[[9月14日]]に行われたが、被告側はいずれも争う姿勢を示し、原告の請求を棄却するよう求めた<ref>{{Cite news|title=としまえん運営会社など争う姿勢 プール事故死訴訟で初弁論|newspaper=産経ニュース|date=2020-09-14|author=|url=https://www.sankei.com/article/20200914-RLXJAF27QFLZHDFMH7E4DO5EXU/|accessdate=2021-09-15|publisher=産業経済新聞社|language=ja|archiveurl=https://web.archive.org/web/20210915142424/https://www.sankei.com/article/20200914-RLXJAF27QFLZHDFMH7E4DO5EXU/|archivedate=2021年9月15日}}</ref>。西武鉄道は「改めてお悔やみ申し上げます。主張は訴訟の中で明らかにする」とコメントするにとどまった<ref>{{Cite news|title=としまえんプール死亡事故 女児の両親が運営側を提訴|newspaper=朝日新聞デジタル|date=2020-09-14|author=新屋絵理|url=https://www.asahi.com/articles/ASN9G64S3N9GUTIL03H.html|accessdate=2021-09-15|publisher=朝日新聞社|language=ja|archiveurl=https://web.archive.org/web/20210915144116/https://www.asahi.com/articles/ASN9G64S3N9GUTIL03H.html|archivedate=2021年9月15日}}</ref>。被告の4社がいずれも事故の責任を押し付け合っていることから、裁判が長引くことは確実だと、[[文春オンライン]]は報じている<ref>{{Cite news|title=「としまえん」のプールで小3女児が溺死…責任を押し付け合う“被告4社”の言い分|newspaper=[[週刊文春|文春オンライン]]|date=2020-09-27|url=https://bunshun.jp/articles/-/40444?page=2|accessdate=2021-09-15|publisher=[[文藝春秋]]|page=2|language=ja|archiveurl=https://web.archive.org/web/20210915135813/https://bunshun.jp/articles/-/40444?page=2|archivedate=2021年9月15日}}</ref>。 |
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2023年3月6日、東京地裁で和解が成立。和解内容は非公表<ref>{{Cite news|title=女児プール死亡事故で和解 19年に﹁としまえん﹂で発生|newspaper=[[47NEWS]]|date=2023-03-06|url=https://www.47news.jp/9025978.html|accessdate=2023-05-21|publisher=[[共同通信社]]|language=ja|archiveurl=https://web.archive.org/web/20230520202550/https://www.47news.jp/9025978.html|archivedate=2023年5月21日}}</ref>。
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== 脚注 == |
== 脚注 == |
2024年5月9日 (木) 15:24時点における版
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日付 | 2019年8月15日 |
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時間 | 14時頃 |
場所 |
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座標 | 北緯35度44分36.8秒 東経139度38分41.3秒 / 北緯35.743556度 東経139.644806度座標: 北緯35度44分36.8秒 東経139度38分41.3秒 / 北緯35.743556度 東経139.644806度 |
別名 | としまえんプール死亡事故 |
原因 | ライフジャケットの着用、監視の不足 |
レポーター | 定時点検を行った監視員 |
関係者 | 女児の母親B、父親C、妹D |
結果 | 死亡 |
死者 | 埼玉県朝霞市在住の女児(8歳) |
行方不明者 | なし |
負傷者 | なし |
損害 | なし |
訴訟 | 2020年5月、遺族が運営者を相手取り民事裁判を提起 |
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/6/6e/Toshimaen_main_gate_2019-01-13_%281%29.jpg/220px-Toshimaen_main_gate_2019-01-13_%281%29.jpg)
事故現場
事故現場となったとしまえんは1926年に開業し、プールが開業したのは3年後の1929年であった[6]。﹁ふわふわウォーターランド﹂は2016年から供用が開始されていた[3]。﹁ふわふわウォーターランド﹂が設置されていたのは、8レーンがある競泳用のプールで、長さ50メートル、幅20メートル、水深は1.2メートルから1.9メートルあり、Aの身長では水底に足が届かない場所もあった[3][7][8]。﹁ふわふわウォーターランド﹂には、エア遊具タイプと呼ばれる水上設置遊具が10個以上設置されていた[8][1]。これは、専門的には空気膜構造遊具と呼ばれ[9]、空気を入れることによって水面に浮く遊具であり、空気を抜いておけば保管しやすいこと、遊具の形状を何通りにも変更することができることが長所である[1]。しかし、遊具下への進入防止用の網などは未設置だった[8]。﹁ふわふわウォーターランド﹂の企画並びに設計はとしまえんが独自に行ったもので、遊具は中華人民共和国のメーカーから調達したものだった[10]。Aが落下した遊具は、大人と子供を合わせて一度に15人が遊べる程度の大きさであった[11]。東京スポーツが毎年子供と﹁ふわふわウォーターランド﹂を利用しているという男性の話として伝えたところによれば、遊具の厚みは30センチメートル以上ありかつ、表面はツルツルしているため、子供が独力で水中から遊具に上ることは不可能で、後述するライフジャケットを着用した状態で遊具の下に入ってしまった場合、大人でも脱出することはできないだろうという[12]。 ﹁ふわふわウォーターランド﹂においては、利用者は身長1.1メートル以上でありかつ、溺水並びに遊具下への進入防止のため、貸し出されるライフジャケットを着用している必要があった[10]。﹁ふわふわウォーターランド﹂において貸し出されるライフジャケットは、発泡スチロールを利用して浮力を得る固形式構造の物であり、形状はチョッキのようになっていた。チョッキに両腕を通して前で留め、調節を行う形式であった[13]。この他、﹁ふわふわウォーターランド﹂の利用者に対しては、一人で泳げる[注釈 1]かを口頭で確認していた[10]。さらに多くの利用者は腕に浮き輪を着けていたと、本事故の目撃者が証言している[14]。﹁ふわふわウォーターランド﹂においては、遊具から水中に落下する者は決して少なくなく、その上、1時間に2人の割合で、水中にゴーグルを落とす人がいたという[11]。事故状況
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/3/34/Splash_Waterpark_%28Zushi%29_cropped.jpg/500px-Splash_Waterpark_%28Zushi%29_cropped.jpg)
としまえんその他の対応
としまえんは、事故当日、﹁ふわふわウォーターランド﹂の営業並びに夜間のプール営業︵ナイトプール︶を中止し、翌8月16日からプール全体を休止した[7]。8月23日にプールは再開されたが、大型浮き輪の貸し出しは中止されたほか[19]、2019年はプール営業が終了するまで﹁ふわふわウォーターランド﹂の営業を行わないことになった[20]。﹁ふわふわウォーターランド﹂は翌2020年も営業中止になったまま[21]、同年8月31日のとしまえん自体の閉園を迎えることとなった[6]。 事故を受けて、NPO法人のSafe Kids Japanが今回の事故と似たような事故の情報収集を行ったところ、としまえんでの事故後にも、水上遊具から落下して骨折する事故が報告されたという[22]。同団体が2019年8月27日に東京工業大学で行った会合では遊具の大型さゆえに遊具の下に落下した人が全く見えなくなり、しかも遊具の下から遊具に上がる階段がないこと、監視員が少なくその場所や高さも不適当であったこと、場所を知らせる装置がなかったことが指摘された[22]。Safe Kids Japan理事長の山中龍宏は、似た事故の情報をまとめて共有したうえで対策を徹底し、同じ事故が二度と起こらないようにすべきだと指摘した[22]。原因調査・再現実験
消費者庁の初期対応
2019年8月21日に行われた消費者庁長官の伊藤明子による記者会見で、本事故に伴う注意喚起や原因調査、安全対策の検討の是非について問われた伊藤は、﹁今の段階で、何をどうしてほしいということを申し上げるという段階ではない﹂と回答した[23]。8月23日に行われた消費者庁消費者安全調査委員会会長の中川丈久と同代理の持丸正明による記者会見では、幼稚園などのプール事故を対象とした基礎調査を開始していることが明かされた[24]。 同年11月28日に行われた消費者安全調査委員会の第88回委員会では、本事故においては死者が出ていること︵被害の程度︶、同様の遊具が全国に少なくとも26か所設置されていること︵公共性︶、なぜ水上設置遊具が危険なのか不明であるため、使用者が自ら危険回避の行動をとることが困難であること︵消費者による回避可能性︶、2019年までの5年間において、新規に多くの水上設置遊具が設置されており、今後も数多く設置されると見込まれること︵多発性︶から、本事故について、消費者安全法第23条第1項に基づく事故等原因調査の対象とすることが決定され、国立研究開発法人産業技術総合研究所人工知能研究センター主任研究員の北村光司、国立大学法人長岡技術科学大学大学院技術経営研究科システム安全専攻准教授の木村哲也、公益財団法人日本ライフセービング協会副理事長の松本貴行の3人が、調査を担当する専門委員に指名された[25]。その後、2020年1月10日に行われた調査委員会第35回サービス等事故調査部会と、同年1月27日に行われた第90回調査委員会において、再現実験の計画が審議された[25]。再現実験
再現実験は、プールに、今回の事故が発生した際に設置されていたものと同等の遊具を設置したうえで実施された[2]。被験者が着用するライフジャケットの浮力は、Aが着用していたライフジャケットの浮力と体重比が等しくなるように設定された[26]。再現実験は、ライフジャケットを着用した状態で様々な行動をし、遊具下に入り込まないか検証する調査実験と、ライフジャケットを着用したまま遊具下に入り込んでしまった場合に脱出できるか検証する確認実験とが行われた[2]。![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/0/08/%E6%B0%B4%E4%B8%8A%E8%A8%AD%E7%BD%AE%E9%81%8A%E5%85%B7%E3%81%AB%E5%85%A5%E3%82%8A%E8%BE%BC%E3%82%93%E3%81%A0%E6%A7%98%E5%AD%90.svg/290px-%E6%B0%B4%E4%B8%8A%E8%A8%AD%E7%BD%AE%E9%81%8A%E5%85%B7%E3%81%AB%E5%85%A5%E3%82%8A%E8%BE%BC%E3%82%93%E3%81%A0%E6%A7%98%E5%AD%90.svg.png)
ライフジャケットの検証
Aの着用していたライフジャケット自体に不具合は確認されなかったものの、ライフジャケットの構造上の問題が事故を引き起こす可能性についても検証が行われた[37]。検証の結果、正常なライフジャケットでは浮力材の枚数は左右前面に各6枚、背面に4枚であったが、としまえんの水上設置遊具の運営者が不良品として保管していた不具合品のライフジャケット2点においては、左前面の浮力材のうち2枚が背面に移動してしまったり、右前面の浮力材のうち2枚、左前面のそれでは1枚が背面に移動し、さらに左前面の浮力材2枚が背面側にずれていたことが確認された[38]。このことから、使用中に前面の浮力材がずれ、肩口を介して背面に移動したことにより、使用者の顔を水面上に保つことが難しくなった場合、溺水事故の原因となる可能性が指摘された[39]。なお、ライフジャケットの安全性を認定するマークである﹁桜マーク﹂﹁CSマーク﹂﹁RAC川育ライフジャケット認定マーク﹂はいずれもついていなかった[39]。類似事故の調査
過去に発生した類似の事故についても調査が実施された結果、2件の類似事故が確認された[40]。このうち1件は2000年6月に発生し、小学校1年生の水泳の授業中に自由遊びを行っていたところ、女子児童が浮島の下に潜り込んでしまい意識不明となり、その後死亡したもので、もう1件は、2012年7月に発生し、同じく小学校1年生の夏休みのプール指導において、児童69人を一度にプールに入れてプールに大型ビート板を16枚浮かべ、その下で女子児童が溺死したものである[40]。これらの事故はいずれも、としまえんの事故とは異なり、浮島タイプの水上設置遊具において発生したものであった[1]。なお、2000年の事故で死亡した女児の親はとしまえんの事故の後NHKの取材に対し、﹁同じ事故がまた起きたかと思った﹂と述べ、事故の教訓を共有し、原因を究明するよう求めた[22]。いずれも浮島タイプの遊具による事故であるため、エア遊具タイプの水上設置遊具による事故は今回が初である[9]。 この他、Safe Kids Japanに投稿された体験談によれば、事故の前年にあたる2018年7月に、同じとしまえんのふわふわウォーターランドにおいて、10歳以下の男子が遊具の下に潜り込んでしまったものの、自ら救命胴衣を外し脱出することができたという[41]。理事長の山中は、救命胴衣が緩かったからこのような対応が可能になったのであり、きちんと着けていた場合脱出に失敗していた可能性を指摘した[41]。同様に山中は、この体験談が2018年夏に投稿され、検討が行われていれば、事故を回避できた可能性があることを指摘した[41]。類似施設における安全対策の検証
﹁ふわふわウォーターランド﹂にあったような水上設置遊具は、軽いため雨天時には撤去しやすい上、素材が柔らかいため、事故前の数年間で多くの海水浴場やプールに設置されていたが、地面に固定された遊具ではないため建築基準法は適用されない[9]。このため、国土交通省などによる具体的な保安基準はなく[注釈 2]、安全対策は事業者の裁量になっていた[18]。そのため、消費者安全調査委員会においては、日本国内において水上設置遊具を設置している26施設に対して、事業運営、規模・製造事業者、運用状況・利用条件、危険情報・安全管理状況の4項目についてのアンケートを取った[43]。 設立年についての調査では、2011年以前が3施設に対し、2018-2019年が10施設と多く、2020年時点での近年に増加傾向であるとされた[44]。遊具の個数については、30個以上と回答したのが9施設と最も多かった[44]。遊具の製造事業者については、回答のあった22施設中12施設が、販売事業者については、回答のあった25施設中19施設が、国内の事業者であると回答した[45]。遊具が設置されている場所の水深については、プールにおいては5施設すべてが2メートル以下であった一方、海においては19施設中15施設が2メートル超であった[45]。単独利用時の制限については、身長と年齢を制限していたのが10施設、身長のみを制限していたのが2施設、年齢のみを制限していたのが11施設、どちらも制限していなかったのが3施設で、2施設を除いてライフジャケットの着用を義務付けていた[46]。身長制限として最も多いのは﹁1.1メートル以上﹂で10施設、年齢制限として最も多いのは﹁6歳以上﹂または﹁小学校1年生以上﹂が最も多く、合わせて9施設であった[45]。なお、ライフジャケットの着用を求めていなかった2施設のうち1施設は、水深1メートルであり、身長1.5メートル未満の人にのみライフジャケットの着用を求めていた[47]。また、2メートル以下の水深の場所に遊具を設置しており且つ、身長制限を設けている4施設すべてにおいて、設置場所の水深は利用できる最低の身長より深かった[47]。さらに、10施設においては保護者1人に対する子供の人数の制限がなかった[48]。 危険情報・安全管理状況について、飛び込みは26施設中23施設で禁止されていることが明らかになった[48]。しかし、その22施設︵未回答の1施設を除く︶のうち19施設で、繁忙期には10分間当たりに水中に落下する利用者の人数が、監視員の人数より多くなっていることが明らかになった[48]。利用者に対する安全指導の方法を複数回答で尋ねた結果においては、﹁注意事項の掲示﹂が24施設、﹁口頭による安全指導﹂が19施設、﹁書面に基づく安全指導及び署名﹂が15施設で、ライフジャケットを着用したまま誤って遊具の下に進入してしまう危険性について、8施設が想定していないと回答した[49]。8施設は外部に監視を委託しており、1人の監視員が監視する人数は2人から33人と差が大きかった[49]。整備しているマニュアルについては、監視方法についてが約88パーセント、事故対応についてが約85パーセント、運用従事者への教育・訓練についてが約50パーセントで、ライフジャケットに﹁桜マーク﹂﹁CSマーク﹂﹁RAC川育ライフジャケット認定マーク﹂のいずれかがあるものを貸し出していたのは10施設、そうでないものを貸し出していたのが15施設であった[50]。さらに、水中に落下した利用者が遊具の下に進入しそうになる事案が1件、同じく水中に落下した利用者が遊具を固定する縄に絡まりかけた事案が1件それぞれあったという[50]。再発防止策の検討
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