佐賀藩
佐賀藩︵さがはん︶とは、肥前国にあった外様藩。肥前藩︵ひぜんはん︶、鍋島藩︵なべしまはん︶とも言い、現在の佐賀県、長崎県の一部にあたる。藩庁は佐賀城︵佐賀市︶。
藩主は鍋島氏。石高は35万7千石。支藩として小城藩、蓮池藩、鹿島藩があった。
藩史
鍋島氏が大名となる過程において主君であった龍造寺氏を継承した形になるため、藩の成立後もしばしば残存する龍造寺分家との対立がおきた。この対立の構図から生まれたのが﹁佐賀化け猫騒動﹂という話である。 天正12年︵1584年︶龍造寺隆信は島原半島に於いて島津氏・有馬氏の連合軍との戦いで敗死した。その遺児である政家の補佐役として実権を握ったのが重臣の一人であった鍋島直茂である。天正18年︵1590年︶には政家を廃し、その子の高房を擁立、直茂はその後見人として豊臣秀吉より認められた。以後、鍋島氏は主家を圧倒することとなる。文禄・慶長の役、関ヶ原の戦いにおいても直茂が大将として参戦した。 関ヶ原の戦いでは西軍に与したが、同じ西軍の立花宗茂を攻略することで徳川幕府より旧領を安堵された。 慶長12年︵1607年︶江戸において高房が死去。ここに龍造寺本家が絶え、これにより鍋島氏が名実ともに大名となった。 慶長18年︵1613年︶幕府より直茂の嫡子勝茂に領地安堵の沙汰が出たことで漸く安泰をみた。 35万7千石の大封でありながらその実情は、3支藩・鍋島4庶流家︵白石、川久保、村田、久保田︶と龍造寺4分家︵多久、武雄、諫早、須古︶の各自治領があったため、藩主の実質知行高は6万石程度であった。 2代・光茂に仕えた山本常朝の口述を著した﹁武士道とは死ぬことと見つけたり﹂で有名な﹃葉隠聞書﹄は後の佐賀藩の精神的支柱となった。 当藩は長崎に程近いため福岡藩とともにその警備を幕府より命ぜられていたが、文化5年︵1808年︶フェートン号事件において醜態をさらした。 以降、藩政の改革や西洋技術の摂取につとめた。特に10代・直正︵閑叟︶は大がかりなリストラを行い、役人を五分の一に削減、農民の保護育成、陶器・茶・石炭などの産業育成・交易に力を注ぎ藩財政は潤った。これにより幕末期にはアームストロング砲の製造や日本最初の蒸気船﹁凌風丸﹂を進水させる等、日本有数の軍事力と技術力を誇ったが、中央政局に対しては姿勢を明確にすることなくぎりぎりまで静観を続けた。 当藩の出身の明治時代に活躍した人物として江藤新平、大隈重信、大木喬任、佐野常民などがいる。 なお、江藤新平は明治7年︵1874年︶に佐賀の乱を起こし処刑されている。 明治4年︵1871年︶廃藩置県により佐賀県となった。 明治17年︵1884年︶藩主の鍋島氏は侯爵となり華族に列した。歴代藩主
鍋島︵なべしま︶家 (一)勝茂︵かつしげ︶︹従四位下・信濃守、侍従︺ (二)光茂︵みつしげ︶︹従四位下・丹後守、侍従︺ (三)綱茂︵つなしげ︶︹従四位下・信濃守、侍従︺ (四)吉茂︵よししげ︶︹従四位下・丹後守、侍従︺ (五)宗茂︵むねしげ︶︹従四位下・信濃守、侍従︺ (六)宗教︵むねのり︶︹従四位下・丹後守、侍従︺ (七)重茂︵しげもち︶︹従四位下・信濃守、侍従︺ (八)治茂︵はるしげ︶︹従四位下・肥前守、左近衛権少将︺ (九)斉直︵なりなお︶︹従四位下・肥前守、侍従︺ (十)直正︵なおまさ︶︹従四位下・肥前守、侍従︺ (11)直大︵なおひろ︶︹従四位・信濃守︺家臣団
佐賀藩の家臣団の序列は、﹁三家﹂・﹁親類﹂・﹁親類同格﹂・﹁家老﹂・﹁着座﹂・﹁独礼﹂・﹁侍﹂・﹁手明槍﹂・﹁徒歩﹂・﹁足軽﹂となっている。これ以外にも、上級家臣と主従関係を有する陪臣や被官といった身分が存在し、手明槍以下は、日常は農商業に従事して生活を営んでいた。上級家臣団
(一)三家︵小城鍋島家・蓮池鍋島家・鹿島鍋島家の三支藩主︶ (二)親類︵白石鍋島家・川久保神代家・村田鍋島家・村田家︶ (三)親類同格︵諫早家・多久家・武雄鍋島家・須古鍋島家︶ (四)家老︵横岳鍋島家・神代鍋島家・深堀鍋島家・太田鍋島家・倉町鍋島家・山代鍋島家︶ (五)着座︵納富鍋島家・石井家・成富家・岡部家・坂部家・千葉家・岩村家・中野家・大木家・江副家・執行家・有田家・深江家など概ね18家前後︶家臣団の特質
①旧主龍造寺一族の藩政への関与 龍造寺政家・高房父子の没後も、龍造寺一族は健在であり、領内において広大な所領を有していた。それら一族は、鍋島家の藩政のもと、重臣として藩政を左右する枢要にあったが、鍋島家に遠慮して、龍造寺の姓を改めている。村田家︵龍造寺政家の子安良が祖︶・諫早家︵龍造寺鑑兼の子家晴が祖︶・多久家︵龍造寺隆信の弟長信が祖︶・武雄鍋島家︵龍造寺隆信の子家信が祖︶・須古鍋島家︵龍造寺隆信の異母弟信周が祖︶はいずれも龍造寺一族である。 ②手明槍 龍造寺隆信の全盛期、北九州一帯の大小名や地侍を包括して家臣団が形成されたが、天正12年︵1584︶の沖田畷の戦いにおける隆信の横死により、龍造寺家の勢力が衰退し、支配地は大幅な減少を見せた。にも関わらず、全盛期の家臣団をそのまま維持していたため、大きな財政負担になりつつあった。そこで初代藩主鍋島勝茂は、知行50石以下の侍の知行地を召し上げ、無役とし、蔵米から禄を支給することにした。ただし、戦時の際には、槍一本具足一領で軍役を担うこととされた。後年に至っては、手明槍でも諸役に任じられるようになった。 ③地方知行制 佐賀藩では、戦国時代の領国支配の形態を色濃く残しており、幕末まで、家臣の多くは知行地を持ち、そこから独自に年貢を徴収し軍役の備えを行ない、家来を養っていた。上級家臣については、﹁大配分﹂と称され、本藩の統一支配ではなく、知行主の自治が行なわれていた。支藩
小城藩
小城藩︵おぎはん︶は立藩の時期は諸説ありはっきりしないが、江戸時代初期に初代佐賀藩主・鍋島勝茂の長男・元茂が佐賀藩領内の佐嘉郡・小城郡・松浦郡において7万3千石︵佐賀藩の内高︶を与えられたことに始まる。元茂は長男であるが勝茂の後添えの正妻︵徳川家康の養女・菊姫︶の子で二男の忠直が嫡子となった︵忠直は早世したためその長男・光茂が2代佐賀藩主となっている︶。 佐賀城西の丸を、当初、政庁としたが、2代・直能の時に小城︵佐賀県小城郡小城町︶に陣屋を構え政庁とした。 9代・直堯は文化13年︵1816年︶佐賀藩から独立し城主格となることを望んだが佐賀藩より却下された。 明治4年︵1871年︶廃藩置県により小城県となる。その後、伊万里県・佐賀県・三潴県・長崎県を経て佐賀県に編入された。 明治17年︵1884年︶藩主の鍋島氏は子爵となり華族に列した。歴代藩主
(一)元茂︵もとしげ︶︹従五位下・紀伊守︺ (二)直能︵なおよし︶︹従五位下・加賀守︺ (三)元武︵もとたけ︶︹従五位下・紀伊守︺ (四)元延︵もとのぶ︶︹従五位下・加賀守︺ (五)直英︵なおひで︶︹従五位下・加賀守︺ (六)直員︵なおかず︶︹従五位下・紀伊守︺ (七)直愈︵なおます︶︹従五位下・加賀守︺ (八)直知︵なおとも︶︹従五位下・紀伊守︺ (九)直堯︵なおたか︶︹従五位下・紀伊守︺ (十)直亮︵なおすけ︶︹従五位下・加賀守︺ (11)直虎︵なおとら︶︹従五位下・紀伊守︺蓮池藩
蓮池藩︵はすのいけはん︶は立藩の時期は諸説ありはっきりしないが、江戸時代初期に初代佐賀藩主・鍋島勝茂の三男・直澄が佐賀藩領内の佐嘉郡・神埼郡・杵島郡・松浦郡・藤津郡において5万2千石︵佐賀藩の内高︶を与えられたことに始まる。 当初、佐賀城三の丸に政庁を構えたが、後に蓮池︵佐賀市内︶に陣屋を構えた。 小城藩と同じく参勤交代を行っていたが、天保15年︵1730年︶参勤交代の免除を願い出たが佐賀藩より却下された。 明治4年︵1871年︶廃藩置県により蓮池県となる。その後、伊万里県・佐賀県・三潴県・長崎県を経て佐賀県に編入された。 明治17年︵1884年︶藩主の鍋島氏は子爵となり華族に列した。歴代藩主
(一)直澄︵なおずみ︶︹従五位下・甲斐守︺ (二)直之︵なおゆき︶︹従五位下・摂津守︺ (三)直称︵なおのり︶以後、官位は従五位下、官職は奇数藩主が甲斐守・偶数藩主が摂津守 (四)直恒︵なおつね︶ (五)直興︵なおおき︶ (六)直寛︵なおひろ︶ (七)直温︵なおはる︶ (八)直与︵なおとも︶ (九)直紀︵なおただ︶鹿島藩
鹿島藩︵かしまはん︶は鹿島︵佐賀県鹿島市︶周辺を領有した佐賀藩の支藩。佐賀藩初代・鍋島勝茂の兄・忠茂が慶長16年︵1610年︶佐賀藩より2万石分与され忠茂が元々領していた下総国香取郡内の5千石を加え、2万5千石で立藩した。慶長17年︵1611年︶鹿島に陣屋を構えた。慶長19年︵1642年︶2代・正茂の時、佐賀藩主・勝茂は自身の九男・直朝を嗣子の無い正茂の養子に据えようとしたが拒んだため、鹿島の領地2万石を返還させた。以後、正茂は下総香取5千石の旗本に帰した。同年に結局、勝茂は直朝にその領地2万石︵佐賀藩の内高となる︶を与えた。 明治4年︵1871年︶廃藩置県により鹿島県となる。その後、伊万里県・佐賀県・三潴県・長崎県を経て佐賀県に編入された。 明治17年︵1884年︶藩主の鍋島氏は子爵となり華族に列した。歴代藩主
- 忠茂家
- 直朝家
- 直朝（なおとも）〔従五位下・和泉守〕
- 直條（なおえだ）〔従五位下・備前守〕
- 直堅（なおかた）〔従五位下・和泉守〕
- 直郷（なおさと）〔従五位下・備前守〕
- 直熙（なおひろ）〔従五位下・和泉守〕
- 直宜（なおよし）〔従五位下・備前守〕
- 直彜（なおのり）〔従五位下・丹波守〕
- 直永（なおなが）〔従五位下・丹波守〕
- 直晴（なおはる）〔官位官職なし〕
- 直賢（なおかた）〔従五位下・丹波守〕
- 直彬（なおよし）〔従五位下・備前守〕
