哲学者のジョルジョ・アガンベンが新型コロナウイルスの流行にかんして最初の発言をしたのは、今からおもうと比較的早い時期、2020年2月26日のことだった。彼は「エピデミックの発明」と題した文章のなかでCovid-19をインフルエンザの亜種と断じ、メディアを通じて醸成されていたパニックの雰囲気に釘を指した。彼の目には新しい感染症の流行はさして新しいものではなく、第一次大戦以来というものその歴史的役割を終えていた近代国家権力が、「テロとの戦い」についで危機を統治パラダイムとする絶好の機会として用いようとしているようにみえていた。まさにアガンベンがこの文章を発表した前後に、イタリアでは感染者数とともに死者数も増加していき、医療制度は崩壊し、西側における新型コロナウイルスのパンデミックの地獄のような中心地と化していったことはひとも知るところである。 アガンベンが感染症にたいする政府とメディアの反応を
「なぜ人を殺してはいけないのか?」に対するニーチェの答えが「すごい」と騒がれているが、実はもっとぶっ飛んですごい 『たまたま「これがニーチェだ(永井均)」を読んでいたら「なぜ人を殺してはいけないのか?」という問いにニーチェがどう答えたかという話があったので一部引用してみます。』 という小野ほりでいさんのツイートに対し、「ニーチェの答えがすごい」というコメントがいくつも寄せられています。 その小野ほりでいさんのツイートで引用されたのは永井均『これがニーチェだ』の以下の部分です: この問いに不穏さを感じ取らずに、単純素朴に、そして理にのみ忠実に、答える方途を考えてみよう。相互性の原理に訴える途しかないー きみ自身やきみが愛する人が殺される場合を考えてみるべきだ。 それが嫌なら、自分が殺す場合も同じことではないか、と。だが、この原理は、それ自体が道徳的原理であるがゆえに、究極的な説得力を持たない
後世の研究によって評価が変わった偉人は少なくない。 2014年、死後40年近くを経て公刊された「黒ノート」によって、20世紀最大の哲学者マルティン・ハイデガーが反ユダヤ主義者だった疑惑が浮上した。 同じく2014年、別の疑惑が浮上する。 ハイデガーと不倫関係にあったユダヤ人の哲学者ハンナ・アーレントが黒人差別主義者だった可能性が、アメリカの哲学者によって指摘された。 アーレントの人種差別的語り口 アメリカで黒人に対する人種差別の撤廃を訴える運動「Black Lives Matter/ブラック・ライヴズ・マター」が盛り上がっている。ナチスドイツの排外主義を研究したアーレント著『全体主義の起原』が参考になると思い、手に取って読み進めた。 これまで何度か再読しているのに気づいていなかった記述に不意を突かれた。アーレントが黒人差別と読み取れる文章を書いていたなんて。 Googleで「アーレント 黒
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