ごみ問題︵ごみもんだい︶とは、日常生活や経済活動、災害などに伴い発生したごみ、廃棄物︵一般廃棄物、産業廃棄物を含む︶に関する問題のこと。不法投棄などによる環境汚染[注1]や健康被害に加えて、適切な処理をする場合でも、ごみの発生に焼却や最終処分場での埋め立てが追い付かなかったり、ごみの搬入や収集・処理施設の新増設に地元側が反対したりする場合もある[注2]。
産業廃棄物の野焼き
海岸に漂着したごみ
ごみに関する主な問題は、排出をめぐる問題、収集をめぐる問題、運搬をめぐる問題、処理をめぐる問題、処分をめぐる問題、再生資源化・減量をめぐる問題、市民の役割をめぐる問題、事業者の役割をめぐる問題、自治体の内部協力と役割をめぐる問題に分けられる[1]。
●排出をめぐる問題
廃棄物中の水分の問題、粗大ごみの増加、排出方法、緊急処理︵火災など災害時の多量廃棄物や引越し等による廃棄物︶、廃棄物の多様化など[1]
●収集をめぐる問題
ごみの出し方による収集能率の低下、季節によるごみの量や質の変化、ごみ集積場の汚染、不法投棄問題、分別収集など[1]
●運搬をめぐる問題
ごみの運搬上の道路事情の問題や公害対策など[1]
●処理をめぐる問題
施設建設、施設管理、処理困難物、エネルギー回収など[1]
●処分をめぐる問題
処分地の確保と処分地の維持管理の問題[1]
●再生資源化・減量をめぐる問題
製品の有効利用、再生資源の需要不足などの問題[1]
●市民の役割をめぐる問題
使い捨てによるごみの増大、ごみの収集等への協力、所有地の清潔保持や管理など[1]
●事業者の役割をめぐる問題
適正処理困難物の自主規制、PPPの原則など[1]
●自治体の内部協力と役割をめぐる問題
行政広報、内部の恒常的な協力など[1]
フィリピンでは1999年の大気浄化法によりごみ焼却炉の非合法化が行われ、指定されたごみ収集所への集積が義務付けられた[3]。だが同時期に、従来使用されていた処分場が水質汚染等によって次々と閉鎖され、収集ごみが空き地や河川に不法投棄される事態が起きた[3]。
塩素を含む廃棄物の焼却によってダイオキシンが発生することが問題視されてから、焼却についても様々な規制が行われるようになってきている。
日本では廃掃法により、農村部で伝統的に行われてきたごみの野焼きも禁止された[4]。
フィリピンでは2000年代にはマニラ首都圏で1日約6000tのごみが排出されていた[5]。ごみが不法投棄されたり、街からの収集が進まず放置されたりすることもある。2000年7月には200人以上の犠牲者を出したともいわれるパヤタス・ダンプサイト︵処分場︶ごみ崩落事件が発生している[3]。2001年には固形廃棄物管理法が制定された[3]。
なおマニラ首都圏にかつて存在した処分場スモーキーマウンテンを含めて、発展途上国では、処分場のごみから有価物を探して売り、生活の糧とする貧しい人々︵スカベンジャー︶が存在し、健康被害などが問題になっている。
マレーシアで稼働中の最終処分場は2001年には168か所であったが、その大部分は野ざらしの状態であり、土壌汚染や地下水汚染が懸念されている[6]。
リサイクル可能な古紙や金属スクラップを中心に廃棄物は海外に搬出されることもある。だが再資源化される過程での汚染防止や残渣の処理が不十分だったり、リサイクルを口実とした有害廃棄物の国外投棄だったりすることもある。このため有害廃棄物の国際移動を規制するバーゼル条約が1992年に発効している[7]。
中華人民共和国は2017年12月末、一部廃棄物の輸入を禁止した。リサイクル目的の廃棄物輸入に伴う汚染問題を告発した映画『PLASTIC CHINA』(塑料王国)[8]が規制のきっかけになったとみられている[9]。
感染症防止のため医療器具の使い捨てが進む中で、医療廃棄物[注3]
が適切な処理・処分がなされず、各地で発見されていた。不法投棄︵下記の﹁不法投棄の問題﹂参照︶の取り締まり強化に合わせ、古い廃棄物︵感染性廃棄物の区分規定がない以前は、不燃物などとして処理・処分が行われており、安定5品目とされていたケースもあった︶が発見される以外、新しい不法投棄は減ってきている。
コンクリートや木材などは産業廃棄物処分場に大量に搬入されていたため、2002年度より建設リサイクル法がスタートして対策が始まった。日本の住宅は、英国が平均75年間、米国が平均44年間で建て替えるのに対し、平均26年と短い周期で建て替えられていることが知られている[10]。このため政府・与党では、初期投資は高くても住宅寿命を伸ばせるような住宅を支援するために﹁200年住宅ビジョン﹂を検討している[11]。一方で、日本では人口の減少や都市集中による空き家が全国的に増えており[12]、家財や解体家屋のごみ処理が課題となっている。
基本方針として「廃棄物管理のための共同戦略に関する1997年2月24日の理事会決議」があり、一般廃棄物については廃棄物に関する理事会指令(91/156/EEC)、有害廃棄物については理事会指令(94/31/EC)がある[13]。
基本法として「循環経済の促進及び廃棄物の環境に適合した処分の確保に関する法律」があり、容器包装に関する「包装廃棄物政令」、自動車に関する「廃自動車政令」、電子機器に関する「使用済情報通信機器政令」などの個別法令がある[13]。
基本法として資源保護回収法と有害固形廃棄物修正法があり、有害廃棄物以外の家庭ごみ等に関しては連邦法はなく州法による[13]。
落ち葉や天然繊維といった有機物が腐敗などによって分解されるのに対して、現代において排出されるごみには、プラスチック製品など自然界では分解されないか、分解に極めて長期間かかる物質も多い。このため、廃棄量そのものを減らす取り組みも必要となっている。
公共経済学を根拠に、処理費用の内部化であるとして援護する動きも手伝い、日本ではごみ収集にあたって有料化を実施している自治体が増えている。その反面、ごみ分別を厳しく課すものの、ごみ収集は有料になっていない横浜市のような自治体もある。[15]
有料化に踏み切った自治体は、ごみ収集量が一時的に大幅に減ることが多い。ただしその後、次第にごみ排出量が増え、元の排出量に戻ってしまうリバウンド現象が発生する。有料化の徴収方法は以下の通りである。
ごみの排出量に関係なく、世帯または世帯員一人当たりに付き一定額を負担する方法である。
ごみの排出量に応じて処理手数料を負担する方法である。
●単純方式
指定袋やシールが1枚目から有料となる仕組みである。日本各地の自治体で導入されている。
●超過量方式
一定枚数の指定袋やシールを無料配布し、それを上回る場合は、有料で販売する仕組みである。千葉県野田市、岐阜県高山市などが導入している。
●二段階方式
一定枚数まで指定袋を原価で販売し、それを上回ると高い価格で販売する仕組みである。滋賀県守山市、宮崎県都城市、山口県柳井市、静岡県御殿場市、岐阜県関市などが導入している。
日本の自治体では生ごみ処理機もしくはコンポストの購入に助成金する制度を導入しているところもある。一方、制度を取り入れていたが、収支不足で打ち切った自治体もある。
リサイクルを行うためにもエネルギーが必要であり、単純にリサイクルをすれば環境に良いとは限らないので注意が必要である。一般に、エネルギー消費量の削減には、リデュース︵減らす︶・リユース︵再利用︶・リサイクル︵繰り返し使う︶の順が良い。
ごみの中には資源として使用可能なものもある。有価物の純度を下げないことが、リサイクルの鍵であり、そのためにゴミの分別が行われている。ごみ分別の方法は市町村によって異なっているが、最も分別が多い例としては、徳島県上勝町ではごみを34分類まで増やしている[16]。また、それらを確実にリユース・リサイクルするための仕組みを作り上げることが課題となっている。中国等へ輸出されたあと、有効利用されないケースもあり、世界的な環境汚染問題が発生している。
これらの方式も含めたリユース・リデュース・リサイクルの事は、一般に3Rとよばれている。
更に、自動車のリサイクルに関しては
また、飲料容器については
生ゴミや汚泥などの廃棄物に関しては、バイオガスとしての利用なども進んでいる。積水化学工業は2017年、ごみを蒸し焼きにして一酸化炭素(CO)と水素ガスに分解し、それらを菌で発酵させてエタノール(燃料や石油化学製品の原料となる)に変える比較的低コストな技術を開発したと発表した[17][18]。
- ^ 一例として、瀬戸内海にある豊島 (香川県)の産廃不法投棄事件がある。豊島問題ホームページ(香川県庁、2018年1月20日閲覧)参照。
- ^ 一例として、「水戸市ごみ最終処分場満杯 市外搬送も立地自治体怒らせ」 (『毎日新聞』朝刊2016年8月11日)参照
- ^ 医療廃棄物とは、日本の廃棄物処理法では「感染性廃棄物」と言い「特別管理廃棄物」に区分される。この区分ができたのは、平成4年の改正からである。それ以前は、平成元年11月13日付け衛環第174号厚生省水道環境部通知「医療廃棄物の適正処理について」があったが、さらにそれ以前は特に規定はなかった。なお特別管理廃棄物とは「爆発性、毒性、感染性その他の人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を有する廃棄物」として規定され、必要な処理基準を設け、通常の廃棄物よりも厳しい規制を行っている。感染性廃棄物は、排出される施設により「感染性一般廃棄物」「感染性産業廃棄物」に分けられている。