分解されたドクターグリップ
中央の金属パイプが振り子
振るだけで芯が出てくる機能のついたシャープペンシル。PILOTの2020︵フレフレ︶シリーズの﹁フレフレ﹂機構が最初であり、同社のドクターグリップや、ゼブラの﹁フリシャ﹂機構︵テクトツゥーウェイ等︶、三菱鉛筆の﹁シャカシャカ﹂機構︵ユニ アルファゲル等︶などがある。内部に重量のある金属パイプが仕込まれており、ペンを振ることによってこれを上下させ金属パイプの反動で繰り出し機構を作動させる。金属パイプの分、そうでない種類より重く握りが太目のものが多い。芯を出すのに持ち替える必要がないため、安定したリズムでの筆記が可能。一般のものと比較して価格に大差がないため日本国内では広く普及している。内部の錘は、金属の板を巻いた形状の物や、針金をコイルスプリング状に巻いたものなどが多い。元々は比較的高価であったが、最近は普及したことにより100円ショップなどでも売られている。
サイドノック式を採用したシャープペンシル
ノックパーツが真横にあるシャープペンシル。古くは三菱鉛筆「PECKER」などで見られた形状で、1980年台から1990年台にはメーカー各社から販売されていたが、現在では廃番が多くなり少数派になっている[54]。1996年発売に大ヒットしたぺんてるの「ピアニッシモ」は一時期廃番となっていたが、2020年に復刻したことで再度大ヒットした。最近は100円ショップなどでも売られている。
ペン上部または下部にあるノックパーツをスライドさせて芯を送り出す機構。パイロットの「2020フラッグ」やトンボ鉛筆の「モノグラフ」などが該当する。
軸を握り、中程を浅く折り曲げる動作でノックが働き、芯が繰り出される。先軸と後軸に分割された構造を持ち、先軸側は芯タンクなどになっており、後軸側はノック棒が当たるすり鉢形状の部品が組み込まれており、継目付近は可動性を持たせてある。折り曲げる動作をすると、ノック棒がすり鉢形状の厚い周縁部に押されて動作する[55]。ボディノックのアイデアは昭和40年代には既に公知技術となっていた。製品にはロットリングの900やコクヨのミストラル、トンボ鉛筆のオルノなどがあるが現在は全て生産終了している。
また、オートから﹁Body Knock﹂というボディーノック式のシャープペンが発売されていたが、ノック部分が真ん中でグリップと軸を上下にノックすることにより芯を繰り出す機構のため、中折れ式︵ボディーノック式︶とは別の機構である[56][57]。
自動芯繰り出し機構を採用したシャープペンシル﹁orenznero﹂。0.2mmは﹁ガンメタル﹂0.3mmは﹁ブルーブラック﹂という限定色。
オートマチック機構、自動芯出し機構とも言われ、書きながら芯が出るためノンストップで筆記ができ、使うときにもノックする必要がない。基本的にはボールチャックを利用し、ガイドパイプが紙に擦れることにより芯が自動で送り出されることで継続的に筆記ができる仕組みとなっている。
ドイツのファーバーカステルが発売したアルファマチックによって実現した構造[要出典]で、日本ではパイロットが初めてその機構を採用した。日本製ではパイロットのオートマック[58]ペンシル、オートのオートシャープシリーズ、ぺんてるのオレンズネロとオレンズAT、パイロットのS30、uniのクルトガダイブなどさまざまなモデルが発売されている。また、ダイソーやセリアなどの100円ショップでも売られている。
ペン先の出し入れを深いノック動作で行い、芯繰り出しを浅いノック動作で行う方式[32]。保管・携帯時のペン先・衣服などの破損や怪我を防ぐ。ダブルノックで収納する製品としてはサクラクレパスのライトル、ロットリングのラピッド(生産終了)、パイロットのデルフル(生産終了)、ぺんてるのテクニカEX(生産終了)などが該当する。
ペン先のガイドパイプをスライドして口金内部に格納できる方式[32]。ペン先を押し戻しながらノックするなどして格納でき、保管・携帯時のペン先・衣服などの破損や怪我を防ぐほか、筆記面にガイドパイプが触れればスライドするため、芯をほとんど露出させずに筆記でき、芯折れを防ぐ[59]。ぺんてる﹁オレンズ﹂0.2 mmのような極細芯の製品で芯折れ防止のために採用されているほか、パイロット﹁REXGRIP﹂などの100円台の製品にも幅広く搭載されている。
残芯が少なく、資源を有効活用できるシャープペンシル。従来、芯を固定するチャックとペン先との間には距離があり、10mm程度まで摩耗した芯は固定できず使用不能な残芯になる[60]。残芯を減らす仕組みには、ペン先端にチャックを備えたものや、チャックとペン先の距離を縮めたり、後続芯と密着させるようにしたものなどがある[61][60]。先端チャック式は原理的に最後の1mmまで使いきれるが、その他は3.5mmや0.5mmなど製品によって公称残芯に違いがある。昭和50年代に発売されたPILOTのトップチャックや、その後継モデルであるクラッチポイント、プラチナのゼロシンなどがある。
低価格化も進み、2001年にはぺんてるの﹁.eシャープ﹂で100円製品での残芯3.5mmが初めて実現された[60]。﹁.eシャープ﹂では芯を送り出すチャックとペン先のスライダー部分を密着連動させる構造を初めて実用化している。残芯0.5mmの100円製品も登場している[62]。
強い筆圧がかかると芯の固定機構がバネの様にスライドして圧力を和らげ、芯折れを防ぐ[32]。メーカーによってはセーフティスライド機構などとも呼ばれる。パイプスライド式と併用し、クッション動作を芯の露出に利用するものもある︵プラチナ万年筆のポイントプッシュ機能など︶。プラチナ万年筆の﹁オ・レーヌ﹂、ゼブラの﹁デルガード﹂などが該当する。
三菱鉛筆の「クルトガ」が該当。仕組みとしては、芯が紙に当たる度にシャープメカについたギアが回転し、芯を均等に減らす仕組み。ペン先が回転することにより、「字が太らない」シャープペンシルを実現している。偏減りなどをなくすことが目的で、開発した三菱鉛筆は「中高生をターゲットとした」と語っている。[63]
シャープペンシル後端の消しゴムは、従来は小さなものが嵌められているだけであるが、回転繰出式のホルダー消しゴムと同様に、より大型の消しゴムを内蔵して、任意の長さに繰り出せるようにした製品がある。ぺんてる﹁タフ﹂、トンボ鉛筆﹁モノグラフ﹂など。
2009年に「芯が折れないシャープペンシルの第1号」としてプラチナ万年筆より「オ・レーヌ」が発売された。その後、発売順にぺんてるの「オレンズ」、ゼブラの「デルガード」、パイロットの「モーグルエアー」などが該当する。
芯送り出し調整機構とも呼ばれ、一回のノックで出る芯の量を調節できる機構である。この機構は、オートの﹁スーパープロメカ﹂と﹁コンセプション﹂、ステッドラーの﹁925 95﹂と﹁925 85 REG﹂に採用された。しかし、現在はオートの﹁MS01﹂にしか採用されていない機構である[64]。
ペン先から出ている芯の収納を深いノック動作で行い、芯繰り出しを浅いノック動作で行う方式。リングチャックが2つあるノが特徴である。オートの「ピストンシャープ」や三菱鉛筆の「リターンズ 」に採用されていたが現在は全て生産終了している。
●FFマティック式︵先端ノック機構︶ - 口金︵グリップ︶をノックすることで芯を出すことができる機構。三菱鉛筆の﹁Hi-uni5050﹂︵生産終了︶に採用された。現在ではサンスター文具の﹁トッププルシャープ topull シリーズ﹂に採用されている[65]。
●先端プッシュ式︵ポイントプッシュ式︶ - パイプ︵先端︶を押しつけることにより芯が繰り出される仕組み。プラチナ万年筆の﹁Hayaai﹂﹁Hayaai2﹂やぺんてるの﹁テクノマティック﹂﹁テクノプレス﹂﹁QX﹂などに採用された[56]。しかし、現在では全て生産終了である。
マルチ機能ペンシルの内部
多機能ペン、マルチペンとも呼ばれる。国内における先駆けは1977年に発売された﹁シャーボ﹂であり、﹁右へ回すとシャープペンシル、左へ回すとボールペン。1本で2本分﹂のキャッチコピーで話題となった。その後有用性が認められ、各社から次々と多機能ペンが登場するきっかけとなった。仕組みとしてはツイスト式、レバー式、振り子式があり、低価格帯製品では製造コストが低く操作も簡単なレバー式、高級モデルでは振り子式やツイスト式が主流となっている。
人間工学に基づき開発されたシャープペンシル。太軸にして持ちやすくしたり、重心バランスを最適化したりグリップを柔らかくしたりして疲れにくいように設計されている。パイロットの﹁ドクターグリップ﹂や三菱鉛筆﹁ユニ アルファゲル﹂、ゼブラ﹁ニュースパイラルシリーズ﹂やぺんてる﹁エルゴノミックス﹂などがある。関節症等を患っている人を始め汎用的な筆記用具として中高生に好まれる傾向がある。
木製軸を採用するシャープペンシルを販売しているメーカーもある。木はプラスチックに比べ加工に多少手間がかかるため、一部を除き中級から高級ラインにしか採用されない。三菱鉛筆の﹁ピュアモルトシリーズ﹂、カランダッシュの﹁メットウッド﹂、パイロットの﹁カスタムカエデ﹂や﹁レグノ﹂、﹁s20・s30﹂などがある。なお、オートの﹁木軸シャープ﹂や北星鉛筆の﹁鉛筆屋のシャープペン﹂などの鉛筆型の六角軸シャープペンシルも販売されている。
日本の学校ではシャープペンシル利用が一般的であるが、小学校は事情が異なり、2015年のゼブラの調査によれば、約半数の小学生がシャープペンシルを日常使用するが、小学校での使用は8.6%に留まる[3]。しばしば学校では使用禁止され、その理由としては、筆記具の扱いに慣れていない児童が芯を折ってしまう[3]ほか、折れた芯が飛ぶと危険[66]とする意見もある。またかつての理由としてはその高価さも挙げられる[66]。現在の小学校ではシャープペンシルのみならず鉛筆キャップ使用を義務付けている小学校もある。
また鉛筆の方が筆記具の扱いの習得に良いとする意見もある[66]。上越教育大学書写書道研究室教授の押木秀樹によれば、鉛筆やチョークといった筆記具では、適切な接地面を得るには先端形状の変化に応じて軸の回転動作をする必要があるが、その習得にはシャープペンシルより芯の太い鉛筆のほうが意識しやすく適するとされる[66]。
しかしこれらについては旧態依然としたものとの批判も出ており、生徒自ら決めさせる動きもある[67]。
欧米の学校では鉛筆もシャープペンシルも使わないのでボールペンや万年筆を推進するべきという主張もある[68]。
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