労働者協同組合法
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労働者協同組合法(ろうどうしゃきょうどうくみあいほう)は、労働者協同組合の基本原理および運営の原則等について定めた日本の法律である。所轄省庁は厚生労働省で、2022年(令和4年)10月1日に施行された[1]。
労働者協同組合法 | |
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![]() 日本の法令 | |
通称・略称 | 労協法 |
法令番号 | 令和2年法律第78号 |
種類 | 労働法 |
効力 | 現行法 |
成立 | 2020年12月4日 |
公布 | 2020年12月11日 |
施行 | 2022年10月1日 |
所管 | 厚生労働省 |
主な内容 | 労働者協同組合の基本原理および運営の原則等について |
関連法令 | 労働基準法など |
条文リンク | 労働者協同組合法 - e-Gov法令検索 |
構成
編集- 第一章 総則(第1条)
- 第二章 労働者協同組合
- 第一節 通則(第2条 - 第6条)
- 第二節 事業(第7条 - 第8条)
- 第三節 組合員(第9条 - 第21条)
- 第四節 設立(第22条 - 第28条)
- 第五節 管理
- 第一款 定款等(第29条 - 第31条)
- 第二款 役員等(第32条 - 第50条)
- 第三款 決算関係書類等の監査等(第51条 - 第53条)
- 第四款 組合員監査会(第54条 - 第57条)
- 第五款 総会等(第58条 - 第71条)
- 第六款 出資一口の金額の減少(第72条 - 第74条)
- 第七款 計算(第75条 - 第79条)
- 第六節 解散及び清算ならびに合併(第80条 - 第94条)
- 第二章の二 特定労働者協同組合(第94条の2 - 第94条の19)
- 第三章 労働者協同組合連合会(第95条 - 第123条)
- 第四章 雑則(第124条 - 第132条)
- 第五章 罰則(第132条の2 - 第137条)
- 附則
議論と改正
編集「特定労働者協同組合」を新設 令和4年6月17日公布 令和4年10月1日 施行
・都道府県知事は、以下の要件を満たす労働者協同組合を、特定労働者協同組合として認定する。 ①定款に剰余金の配当を行わない旨の定めがある。 ②定款に、解散時に組合員に出資額限度で分配した後の残余財産は国・地方公共団体・他の特定労働 者協同組合に帰属する旨の定めがある。 ③①②の定款違反行為を行うことを決定し、又は行ったことがない。 ④各理事の親族等の関係者が理事総数の3分の1以下である。 ・その他、必要な書類の提出と公開、外部監事の設置、認定の取消し、罰則等について所要の規定を 設けるとともに、税制上の措置を講ずる。[6][7]
目的
編集通則
編集事業
編集組合は、第3条1項に規定する目的を達成するため、事業を行うものとする。組合は、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(派遣法)第2条3号に掲げる労働者派遣事業その他の組合がその目的に照らして行うことが適当でないものとして政令で定める事業を行うことができない(第7条)。逆に言えば、組合の行うことのできる事業は、労働者派遣事業以外の事業については法令上の制限はない。
総組合員の5分の4以上の数の組合員は、組合の行う事業に従事しなければならない。組合の行う事業に従事する者の4分の3以上は、組合員でなければならない(第8条)。
組合員
編集組合の設立
編集定款・規約
編集組合の定款には、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。これらの事項のほか、組合の定款には、この法律の規定により定款の定めがなければその効力を生じない事項及びその他の事項でこの法律に違反しないものを記載し、又は記録することができる(第29条)。
- 事業
- 名称
- 事業を行う都道府県の区域
- 事務所の所在地
- 組合員たる資格に関する規定
- 組合員の加入及び脱退に関する規定
- 出資一口の金額及びその払込みの方法
- 剰余金の処分及び損失の処理に関する規定
- 準備金の額及びその積立ての方法
- 就労創出等積立金に関する規定
- 教育繰越金に関する規定
- 組合員の意見を反映させる方策に関する規定
- 役員の定数及びその選挙又は選任に関する規定
- 事業年度
- 公告方法
- 組合の存続期間又は解散の事由を定めたときはその期間又はその事由
- 現物出資をする者を定めたときはその者の氏名、出資の目的たる財産及びその価格並びにこれに対して与える出資口数
- 組合の成立後に譲り受けることを約した財産がある場合にはその財産、その価格及び譲渡人の氏名
次に掲げる事項は、定款で定めなければならない事項を除いて、規約で定めることができる(第30条)。
- 総会又は総代会に関する規定
- 業務の執行及び会計に関する規定
- 役員に関する規定
- 組合員に関する規定
- その他必要な事項
組合は、定款及び規約を各事務所に備え置かなければならない(第31条1項)。
組織変更
編集公益性の高い仕事に取り組むNPO法人では、その業務の性格上、資金繰りが難しい背景があった。労働者協同組合においては、組合員自身が事業運営のための資金を出資し、仕事に従事する形態であるため、費用に掛かる人件費にあたる賃金・労働時間・事業内容を組合内で協議を行い決定することが出来る。また、人格なき団体として地域活動を行っている地域内のグループが、労働者協同組合となることにより、市町村の事業を入札や公募で受託することができるようになる。それにより、地域の公共福祉活動の資金が得られる機会が増える利点がある。想定される例として、清掃活動を行う町内会による自治体の道路清掃事業受託運営、社会福祉法人の配食グループによる高齢者配食事業受託運営などである。
2023年4月1日、特定非営利活動法人ワーカーズコープが労働者協同組合ワーカーズコープ・センター事業団に組織変更を行った。[12]
労働者協同組合法を取り上げた国際的な動き
編集2021年9月、国連総会で提出された、国連事務総長による報告書『社会発展における協同組合』(英: Cooperatives in social development)に、日本で労働者協同組合法が採択されたことが取り上げられた[13]。
世界における労働者協同組合法
編集- スペイン
スペインの協同組合法は全163条の統一協同組合法であり、その中に12種類の協同組合についての特別規定がある。労働者協同組合は「協同労働協同組合」として規定されている。「スペイン協同組合法」(1987年)[14]
- ポルトガル
ポルトガル協同組合法は、全94条の協同組合基本法である。協同組合の種類(12種プラス多目的組合)が明記されているという意味でドイツ法的な特徴がありながら、同時に同法に基づいて、生協法や農協法などが予定されており、基本法と個別法から立脚している法制であるという意味でフランス・イタリア法的特徴をもつ。[14]
- イギリス
「産業および節約組合法」(1852年)
「産業共同所有法」(1976年)
- フランス
フランスは、イギリスの統一法ともドイツの統一法とも異なって、協同組合基本法と各種協同組合の個別法からなっている。[14]
- イタリア
イタリアの協同組合法制は憲法→民法→各種法からなっている。イタリア共和国憲法は、第45条で協同組合の役割とその保護を宣言している。民法の協同組合規定は協同組合法の基本法に相当し、その上で、産業政策・社会政策・雇用政策等の必要から各種の特別法が制定されている。それらには、不分割積立金の非課税措置、労働者協同組合の優遇税制、労働者協同組合を通じた雇用支援融資(時限法)および「社会的協同組合法」が含まれる。[14]
- ドイツ
ドイツは信用組合および農業協同組合の母国とされるが、1889年「産業経済協同組合法」が成立し、1985年その大幅な改正が行われている。同法はわが国「産業組合法」(1900年)の母法となったものである。同法は統一協同組合法であり、労働者協同組合ないしは生産組合に関する特別規定または個別法は存在しないが、その第1条によって、協同組合の種類を規定し、生産組合を設立することができる。[14]
- カナダ
カナダ協同組合法は1988年3月に制定された全386条に及ぶ連邦レベルの統一協同組合法である。ICA原則およびカナダ独自の原則ないし運営基準である協同組合基準に基づいている。「カナダ協同組合法」(1998年)[14]
- ロシア
「ロシア連邦生産協同組合法」(1996年)[14]
- アメリカ
アメリカ合衆国は、クレジットユニオン法を例外として連邦協同組合法はなく、協同組合法は各州毎に制定されている。[14]
- 韓国
「協同組合基本法」(2011年)
基本法制定前の韓国の協同組合法は,日 本と同じように特別法形式で、個別法のみであった。[15]
- 個別の協同組合法を有する国
モルドバ〔1992〕,アゼルバイジャン〔1996〕,キルギスタン〔1991,1999,2005〕,インド(アンドレプラデシュ協同組合法)〔1995〕
脚注
編集関連項目
編集外部リンク
編集- 労働者協同組合法 e-Gov法令検索
- 労働者協同組合 厚生労働省
- 厚生労働省特設サイト:知りたい!「労働者協同組合法」