情報 (教科)
情報(じょうほう)は、日本の後期中等教育の課程(高等学校の課程、中等教育学校の後期課程、特別支援学校の高等部)における教科の一つである。
概要
編集「普通教育に関する各教科」における「情報」
編集目標
編集情報及び情報技術を活用するための知識と技能を習得させ、情報に関する科学的な見方や考え方を養うとともに、社会の中で情報及び情報技術が果たしている役割や影響を理解させ、社会の情報化の進展に主体的に対応できる能力と態度を育てる[4]。
内容
編集現行科目
編集情報I
情報に関する見方・考え方を働かし,情報技術の活用を行い問題の発見や問題の解決を行う学習活動を通して,問題の発見・問題の解決に向けて情報と情報技術を適切かつ効果的な活用を行い,情報社会に主体的に参画するための資質・能力を育成することを目標とする。[5]
情報II
情報に関する見方・考え方を働かし,情報技術の活用を行い問題の発見や問題の解決を行う学習活動を通して,問題の発見・問題の解決に向けて情報と情報技術を適切かつ効果的に活用,創造的に活用を行い,情報社会に主体的な参画を行い,その発展に寄与するための資質・ 能力を育成することを目標とする。[5]
令和3年度入学者までの科目
編集「専門教育に関する各教科」における「情報」
編集目標
編集情報の各分野に関する基礎的・基本的な知識と技術を習得させ、現代社会における情報の意義や役割を理解させるとともに、高度情報通信社会の諸課題を主体的、合理的に解決し、社会の発展を図る創造的な能力と実践的な態度を育てる(高等学校学習指導要領による)。
内容
編集専門教育に関する各教科としての「情報」は、科目の内容ごとに「基礎的分野」「システムの設計・管理分野」「情報コンテンツの制作・発信分野」の3つの分野が設けられている。この教科は必履修ではないが、選択科目として他の科目との組み合わせで開講される場合もある。
- 情報システム分野
- コンテンツ分野
- 総合的科目
- 課題研究
- 情報実習
情報に関する学科
編集教科「情報」の設置の経緯
編集中央教育審議会第1次答申
編集1996年(平成8年)7月、中央教育審議会は「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について」と題した答申において、情報社会に対応した教育の必要性を指摘した。「専門高校や総合学科については、情報関連科目の充実を図ること、普通科については、学校や生徒の実態等に応じて情報に関する教科・科目が履修できるように配慮することが必要である」とここでは述べられている。
体系的な情報教育の実施に向けて
編集答申を踏まえて1997年(平成9年)10月、「情報化の進展に対応した初等中等教育における情報教育の推進などに関する調査研究協力者会議」が第1次報告「体系的な情報教育の実施に向けて」を発表した。この中で情報教育の目標は、次の3つに整理されている。
- 情報活用の実践力
- 情報の科学的な理解
- 情報社会に参画する態度
これらを小学校から高等学校に至るまで体系的に育成するために、高等学校に置いては普通教育に関する教科として「情報」を設置し、その中に複数科目を設定することが提言された。
今後の専門高校における教育の在り方等について
編集1998年(平成10年)7月23日、理科教育及び産業教育審議会は、答申「今後の専門高校における教育の在り方等について」で「情報分野に興味・関心を持つ若者に、高等学校において情報科学の基礎など情報を扱う上での基礎的・基本的内容を学習する機会を提供するとともに、情報手段を駆使した実習等を通じて創造的で豊かな感性を育む場を用意する」ために専門教科「情報」を新設するべきと述べた。
教育課程審議会答申
編集1998年(平成10年)7月29日の教育課程審議会は、答申「幼稚園、小学校、中学校、高等学校、盲学校、聾学校及び養護学校の教育課程の基準の改善について」で、「高等学校においては、情報手段の活用を図りながら情報を適切に判断・分析するための知識・技能を習得させ、情報社会に主体的に対応する態度を育てることを内容とする教科『情報』を新設し必修とすることが適当である」と述べられ、専門教科については、「高度情報通信社会における情報関連の人材の養成の必要性に対応するための教科「情報」を新設することが適当である」と述べられた。
教科設置の準備
編集教科教育の現状と社会からの要請
編集免許状の授与を受ける過程
編集教員の認識
編集進学指導を優先し「情報教育=就職の基礎」と考える教員において、この教科を「生徒の進路(大学受験)と関係が無い」と軽視する傾向が見られ、社会に適応する教養としての情報教育に真剣に取り組もうとする教員の努力が理解されない懸念がある。かつては現職の教員の一部には例えば「情報」の時間にセンター対策等に「数学A,B」等のコンピュータをしてはどうか、と言う意見があったのは事実である。2006年(平成18年)の高等学校必履修科目未履修問題では世界史に次いで未履修の多かった教科が情報であり、高校側の情報に対する軽視が浮き彫りとなった。
ソフトウェアの問題
編集しばしば見られる状況としては、特定のソフトウェアに依存した教育が行われていたり、特定のソフトウェアでだけ作成ができる形式でのファイル提出を強制したりしていることもある。
使用するソフトウェアがプロプライエタリなソフトウェア(独自仕様のソフトウェア)である場合が多く、学校による特定少数企業の支援と見る者もいる。生徒自身も「就職したときにデファクトスタンダード(事実上の標準)となっているプロプライエタリ(独自仕様)なソフトウェアを操作できなければ、戦力とはみなされずに勉強し直さなければならない」と考えている場合もあり、この問題の解決は難しい。
現在意匠法の改正案が提出され、デファクトスタンダードであるソフトウェアのインターフェイスデザインを他のソフトウェアが模倣することが違法になる可能性が出てきており、この先も通常教育においてプロプライエタリ(独自仕様)なソフトウェアが使用される可能性は高い。企業においては高等学校新規卒業者の雇用にあたり、事務用ソフトウェアの操作ができない者よりもできる者を優先する動きがあるものの、その簡易な操作方法は職場の実務に並行して習得することも可能である。このため、事務用ソフトウェアの操作方法よりも、むしろ、情報の取り扱い、情報活用(情報収集・情報処理・情報発信など)の基礎について中等教育段階で習得することを求める動きがある。
指導内容の問題
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教職課程
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教育職員免許法施行規則に規定する科目 | 必履修単位数 | 科目名事例 |
---|---|---|
情報社会及び情報倫理 | 1以上 | 情報社会論、知的所有権論 |
コンピュータ及び情報処理 (実習を含む。) |
1以上 | コンピュータサイエンス入門、コンピュータアーキテクチャ、プログラムのしくみ、アルゴリズム、情報システム学概論I、プログラミング基礎 |
情報システム (実習を含む。) |
1以上 | データベースシステム、データベース技術、情報システムの設計、システム設計演習 |
情報通信ネットワーク (実習を含む。) |
1以上 | コンピュータ概論、コミュニケーション概論、ネットワークセキュリティ |
マルチメディア表現及び技術 (実習を含む。) |
1以上 | ディジタル画像概論、音声情報処理、CGモデリング、CGレンダリング |
情報と職業 | 1以上 | 情報職業論 |
免許状をめぐる状況
編集現場での状況
編集教員採用試験での制約
編集教員採用試験においては「情報」だけを所有する者の受験を認めない(出願すら出来ない)自治体(例えば東京都では「情報」と数学または理科の免許が必要)が多く、正規採用を受けていない教員においては「情報」を取得後に他教科の免許を追加、あるいは既に免許取得している教科に「情報」を追加することで当該教科の受験機会を得る動きが見られる。
他教科の免許者も「複数教科の免許者有利」の傾向から「情報」を追加取得することが多い。「情報」のみ取得(見込)している状態で受験可能な自治体は受験者が集中し易い。
任用の機会
編集入試教科への導入を巡る状況
編集参考文献
編集関連項目
編集脚注
編集注釈
編集出典
編集- ^ 文部科学省「平成30年改訂高等学校学習指導要領 教科・科目名 英訳版(仮訳)」
- ^ 「情報」教員3割専門外 高校必修、例外的免許を多用
- ^ 高校の「情報」科目、必修は名ばかり 簡単パソコン操作だけ
- ^ a b c d e 文部科学省(平成22年1月) 高等学校学習指導要領解説 情報編
- ^ a b 高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説
- ^ 専門学科「情報科」設置校一覧 - 全国専門学科「情報科」
- ^ “平成 30 年告示高等学校学習指導要領に対応した 令和7年度大学入学共通テストからの出題教科・科目について”. www.dnc.ac.jp (2021年3月24日). 2022年11月23日閲覧。
外部リンク
編集- 文部科学省 情報化への対応 - ウェイバックマシン(2002年7月13日アーカイブ分)
- 高等学校学習指導要領(平成11年3月告示、14年5月/15年4月/15年12月一部改正)-普通教育に関する各教科 「情報」(文部科学省)
- 高等学校学習指導要領(平成11年3月告示、14年5月/15年4月/15年12月一部改正)-専門教育に関する各教科 「情報」(文部科学省)
- 大学入試センター 平成24年度センター試験 試験問題評価委員会報告書 数学 情報関係基礎 問題作成部会の見解
- 情報教育Wiki
- 【情報編】高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説
- 読売新聞連載記事[教育ルネサンス]「情報I」前夜(全5回)