フリーエージェント (プロスポーツ)
概要
編集一方、保留制度に一定の妥当性を認める意見も少なからず存在し、選手の獲得や育成に費やされた資金の回収や、新しい戦力の補充・育成などを考慮に入れて、権利獲得までの期間や移籍に伴う補償などが設定されている場合もある。
無制限フリーエージェントと制限付きフリーエージェント
編集制限付きフリーエージェント (RFA) とは、どのチームとも契約交渉を行うことはできるが、元所属チームが一定条件のもとで優先的に選手を引き留めできたり、チーム移籍時に元所属チームが補償としてドラフト指名権や移籍金などを得られるようなルール化がされている選手、または選手の状態を指す。
無制限フリーエージェント (UFA) とは、上記のような特別な制限も移籍時の補償もなく、どのチームとも自由に交渉し新たな契約を結ぶことができる選手、または選手の状態を指す。チームから解雇された選手、契約期間が満了した選手、ドラフトで指名されなかった選手などが該当する。
北米のメジャースポーツのうち、NFL・NBAではRFAとUFAが明確化されており、単に「フリーエージェント」と呼ぶ場合、通常はUFAを指す。
日本においては、フリーエージェント=RFA、自由契約=UFA、とほぼみなされる。
メジャーリーグベースボール
編集レギュラーシーズン中にMLBのアクティブ・ロースター(負傷者リストなど各種出場停止リスト登録中期間も含む)に登録されていた日数(英: Major League Service time , 以下MLS)が6.000(通算6年)に達した選手はFA権を取得し、以降は保留制度に縛られることが無くなる[3][4]。
歴史
編集インターナショナルFA
編集契約上の特例によるFA
編集ノンテンダーFA(Non-tender FA)
編集シーズン終了後、MLSが6年未満の所属選手に対し、期限日(例年、ウインターミーティング開始前となる12月初旬)までに球団が翌年シーズンの契約年俸を提示しなかった (Non-tender) 場合、球団は保留権を失いその選手はFAとなる。これを「ノンテンダーFA」と呼ぶ。原則MLS3年[18]で取得できる年俸調停権を持つ選手は、成績にかかわらず年俸が高騰していく傾向にあるため、ノンテンダーは球団側がコストに見合わない選手との調停を回避する目的で実行するケースが大半であり、その後改めて契約条件の交渉を行い再契約・残留に至る選手もいる[19]。
MLBにおけるFA補償制度の仕組み
編集FAとなった選手が他のMLB所属球団と契約した場合、一部のFA移籍に関しては、補償として流出元球団にドラフト指名権が与えられる。その補償規定は2012年オフから大きく変更された。 2012年以前は、スポーツ統計専門会社イライアス・スポーツ・ビューロー (Elias Sports Bureau) のランク付けで「タイプA」「タイプB」に分類されたFA選手が他のMLB球団と契約し、且つ流出元球団がその選手に対して事前に年俸調停を申請していた場合、選手のタイプと獲得した球団の順位に応じて移籍先球団からドラフト指名権を譲渡されたり、1巡目指名後(2巡目指名前)の補完指名権を与えられていた。
クオリファイング・オファー(Qualifying Offer)
編集日本プロ野球
編集日本プロバスケットボール
編集日本プロバスケットボールではbjリーグで導入しており、bjリーグが定める条件を満たした選手で前所属球団も含めていずれの球団とも選手契約を締結する権利を持った選手をフリーエージェントと称し、その権利を与える制度を「フリーエージェント(FA)制」という。残留を前提としつつ移籍の可能性に含みも持たせて権利を行使するケースが多いが、権利行使に伴い契約満了(解雇)に至るケースも存在する。よって、日本プロ野球とは違い、必ず雇用先が保障されるわけではない。
概要
編集FAにおける制約・補償
編集一時金
編集FA宣言選手には年俸の他にサラリーキャップ対象外の一時金の支払いが認められる。前年基本報酬の50%が上限となる。
獲得人数
編集直前のシーズンまで他の球団に在籍していたFA選手と翌年度の選手契約を結べるのは各球団10名までである。FA宣言前からその球団に所属していた選手はこれに含まれない。
移籍に関わる補償
編集FA選手を獲得した球団は、移籍元に対して補償金を支払う。金額は移籍元での在籍シーズン数に基づき算出され、移籍元における基本報酬、または、移籍先での基本報酬に下表の係数を乗じて、高いほうの金額とする。
2008年は一律で前年基本報酬の50%を支払っていた。
在籍シーズン数 | 旧契約 | 新契約 |
---|---|---|
3シーズン以内 | 40% | 20% |
4シーズン | 30% | 15% |
5シーズン | 20% | 10% |
6シーズン | 10% | 5% |
7シーズン以降 | なし |
FA権を行使し他球団へ移籍した選手
編集年 | 選手 | 移籍元 | 移籍先 | 備考 |
---|---|---|---|---|
2008年 | 佐藤公威 | 新潟アルビレックスBB | 大分ヒートデビルズ | 初のFA移籍選手 |
吉田平 | 琉球ゴールデンキングス | りゅうせきクラブ(クラブ) | チームから契約満了となったためで、事実上の解雇である。 | |
2009年 | 庄司和広 | 埼玉ブロンコス | 高松ファイブアローズ | |
与那嶺翼 | 大分ヒートデビルズ | 琉球ゴールデンキングス | ||
2010年 | 長谷川誠 | 新潟アルビレックスBB | 秋田ノーザンハピネッツ | 監督兼任 新規参入球団へFA移籍した初の選手 |
岡田優 | 高松ファイブアローズ | 滋賀レイクスターズ | ||
青木勇人 | 琉球ゴールデンキングス | 大分ヒートデビルズ | アシスタントコーチ兼任 過去所属していた球団へFA移籍した初の選手 | |
小菅直人 | 新潟アルビレックスBB | 琉球ゴールデンキングス | ||
清水太志郎 | 埼玉ブロンコス | 宮崎シャイニングサンズ | ||
千々岩利幸 | ライジング福岡 | チームから契約満了となったためで、事実上の解雇である。 | ||
2011年 | 佐藤公威 | 大分ヒートデビルズ | 新潟アルビレックスBB | 初の2度目のFA移籍 |
仲西翔自 | 島根スサノオマジック | 浜松・東三河フェニックス | ||
竹田智史 | 高松ファイブアローズ | 大阪エヴェッサ | ||
牧ダレン聡 | 東京アパッチ | 埼玉ブロンコス | ||
2012年 | 仲摩純平 | 島根スサノオマジック | 滋賀レイクスターズ | |
清水太志郎 | 宮崎シャイニングサンズ | 大分ヒートデビルズ | ||
波多野和也 | 滋賀レイクスターズ | |||
岡田優 | 京都ハンナリーズ | |||
岡田慎吾 | 浜松・東三河フェニックス | 群馬クレインサンダーズ | ||
寺下太基 | 埼玉ブロンコス | 滋賀レイクスターズ | ||
仲村直人 | 京都ハンナリーズ | 岩手ビッグブルズ | チームから契約満了となったためで、事実上の解雇である。 | |
青木康平 | 大阪エヴェッサ | 東京サンレーヴス | ||
高田秀一 | 高松ファイブアローズ | 大阪エヴェッサ | ||
高橋憲一 | 仙台89ERS | 岩手ビッグブルズ | チームから契約満了となったためで、事実上の解雇である。 | |
2013年 | 石橋晴行 | 岩手ビッグブルズ | 大阪エヴェッサ | |
薦田拓也 | 仙台89ERS | 京都ハンナリーズ | ||
日下光 | ||||
北向由樹 | 埼玉ブロンコス | 青森ワッツ | ||
木村実 | 横浜ビー・コルセアーズ | 岩手ビッグブルズ | チームから契約満了となったためで、事実上の解雇である。 | |
藤原隆充 | 滋賀レイクスターズ | 新潟アルビレックスBB | ||
今野翔太 | 大阪エヴェッサ | 信州ブレイブウォリアーズ | ||
小淵雅 | 群馬クレインサンダーズ | |||
与那嶺翼 | 琉球ゴールデンキングス | 岩手ビッグブルズ | ||
2014年 | 岡田慎吾 | 群馬クレインサンダーズ | 浜松・東三河フェニックス | |
板倉令奈 | 埼玉ブロンコス | トヨタ自動車アルバルク東京(NBL) | ||
寺下太基 | 滋賀レイクスターズ | 和歌山トライアンズ(NBL) | ||
寒竹隼人 | 京都ハンナリーズ | 岩手ビッグブルズ | ||
岡田優 | 滋賀レイクスターズ | |||
呉屋貴教 | 大阪エヴェッサ | 和歌山トライアンズ(NBL) | ||
籔内幸樹 | 島根スサノオマジック | 高松ファイブアローズ | ||
仲西淳 | ライジング福岡 | 岩手ビッグブルズ | ||
竹野明倫 | 秋田ノーザンハピネッツ | |||
加納督大 | 滋賀レイクスターズ |
NBA
編集NBAの場合他のリーグとは異なりFA権取得年数というシステムは存在しない。契約終了やNBAのウェイバー公示の手続きに従って解雇された場合、あるいはNBAドラフトの資格を有していたにも関わらず指名されなかった選手を総称してフリーエージェントと呼ぶ。新人の場合最長4年、新人以外も最長7年でFAとなる。RFAあり。
RFA
編集制限付きフリーエージェント(Restricted free agent)。 RFAの選手は、他球団が提示したオファーシートと同額の契約を、元球団が提示した場合、契約の優先権は元球団になる。元球団がRFA選手を引き止める事を一般に「マッチ(match)」と言う。
選手をRFAにするには、球団は6月30日までに「クオリファイング・オファー」を提示する必要がある。他球団のオファーシートにサイン後、3日以内に所属していたチームがオファーシートと同額を提示すれば「マッチ」となり、元球団と選手は契約することになる。「マッチ」しなければ、サインした球団へ移籍となる。
ドラフト1巡目選手が結ぶルーキー契約を4年終了した場合の5年目、またはリーグ所属3年未満の選手に制限が認められる。
NFL
編集NFLの場合、FA権取得年数経過後に契約が切れた時点でフリーエージェントとなる。UFA(アンリストリクテッド(無制限)フリーエージェント)・RFA(リストリクテッド(制限付)フリーエージェント)の他に、球団側に拒否権のある「フランチャイズタグ」「トランジションタグ」という制度もある。また、契約満了前に契約更改をまとめたり、現契約を破棄して新しい契約を結ぶ等して、フリーエージェントにならないようにすることも可能である。
UFA
編集RFA
編集ドラフト外フリーエージェント
編集ドラフトでリーグのどのチームにも選ばれなかった選手は無制限フリーエージェントとなり、これらの選手はドラフト外フリーエージェント(UDFA)またはドラフトされていないスポーツマンとされ、選択したチームと自由に署名できる。「ドラフト外フリーエージェント」という用語は、ルーキーがリーグに直接入り、マイナーリーグシステムというものがないNFLで最も一般的なものである。
フランチャイズ・タグ、トランジション・タグ
編集各チームは重要ではあるが多数年契約に至っていない選手をとりあえず引き留めるため、一人に限り、フランチャイズ・タグあるいはトランジション・タグを用いることができる。
NHL
編集NHLでは、選手のFA権取得可能年齢があり、これまでは31歳だったが、2007-08年のシーズン終了後に27歳に引き下げられる。新人選手は入団7年後、それ以外は4年後にFA権取得可能となる。
RFAの場合、前年年俸の75%(クオリファイング・オファー)を提示することにより、元チームはその選手の権利を保有することができる。契約期限は12月1日とし、この期限までに契約できなかった選手は、同シーズンのNHLでプレーすることはできない。
また、NHLドラフトで指名されていない22歳以上の選手は、どのチームともフリーエージェントとして契約する事ができる。エントリーレベルではないが、RFAの資格を満たしていない選手は、契約が切れると制限付きフリーエージェントになる。
MLS
編集FAの対象となる選手は、24歳以上でMLSでのサービス期間が5年あり、契約が切れているか、オプションが破棄された選手である。