リボ核酸

核酸の一種
RNAから転送)

RNA: Ribonucleic acid DNA

歴史

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186818691939Torbjörn CasperssonJean BrachetJack Schultz RNA Hubert Chantrenne RNA1964W tRNA 19681976MS2RNA[1]

構造

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核酸塩基

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核酸の構造と核酸塩基。左:RNA / 右:DNA

RNA (A) (G) (C) (U) 4 DNA DNA (T) RNA

DNA

修飾RNA

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[2]RNARNA, en:Pseudouridine, Ψ2'-O-(T, rT)(Ψ)tRNATΨC (I) RNAtRNA100

プラス鎖RNAとマイナス鎖RNA

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RNAは通常一本の鎖状に連なるポリヌクレオチドであり[3]、RNA鎖上に遺伝子コードがあるものをプラス鎖RNA、相補的なRNA鎖にコードが現れるものをマイナス鎖RNAと呼ぶ。

一本鎖のRNAは自由度が高く高次構造を形成する。

官能基

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RNAの構造的特徴として、DNAには存在しない 2'位のヒドロキシ基が存在するというものがある。

DNAとの比較

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DNARNAはともにヌクレオチドの重合体である核酸であるが、両者の生体内の役割は明確に異なっている。DNAは主に核の中で情報の蓄積・保存、RNAはその情報の一時的な処理を担い、DNAと比べて、必要に応じて合成・分解される頻度は顕著である。DNAとRNAの化学構造の違いの意味することの第一は「RNAはDNAに比べて不安定である」。両者の安定の度合いの違いが、DNAは静的でRNAは動的な印象を与える。

化学構造の相違

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DNARNARNADNA2'2'-DNAC2'-RNA2'C3'-DNABRNAARNA

DNARNARNA2'2DNAmRNARNA1

RNAACGU4DNAUT

CUUCU1RNADNATUUDNACUTDNA

物理化学的性質の相違

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DNAとRNAの物理化学的性質について。DNAとRNAはともに紫外線である波長260nm付近に吸収極大を持ち、230nm付近に吸収極小を持つ。この吸光度はタンパク質の280nmよりもずっと大きいが、これはDNAとRNAがプリンまたはピリミジンを塩基として有するためである。ただし、二重らせんを形成しているDNAの場合、溶液を加熱するとその吸光度は増す(濃色効果)。これは、DNAは規則正しい2重らせん構造を有しているため、全体の吸光度が個々の塩基の吸光度の総和より小さい(淡色効果)が、加熱により2重らせん構造が解け(核酸の変性)、個々の塩基が自由になり、独自に光を吸収するためである。また、DNAとRNAはアルカリ溶液中で挙動が異なる。RNAは弱塩基でも容易に加水分解するが、DNAは安定して存在する。

生合成

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RNADNA

DNADNA211RNADNARNA

RNARNARNARNARNARNARNA

RNA

生化学的な活性

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伝令RNA (mRNA)

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RNARNAmRNADNARNARNADNAmRNAmRNADNARNARNARNAmRNARNAmRNA5mRNA

運搬RNA (tRNA)

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RNARNAtRNARNA74-93RNAmRNARNA

リボソームRNA (rRNA)

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RNA (rRNA) RNArRNA4RNA (18S, 5.8S, 28S, 5S) 31rRNARNARNA80%rRNAtRNA: 10%mRNA: %

ノンコーディングRNA (ncRNA)

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RNA (ncRNA) RNARNARNA21990RNARNA

19902000RNA調RNARNA (miRNA) 

2004RassoulzadeganRNANature稿DNA-RNA2015Tracy L. BaleRNA[4]RNARNARNAmRNARNA

触媒作用を持つRNA

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タンパク質によく用いられる20種のアミノ酸と比較すると、RNAは4つの核酸塩基しか持たないにもかかわらず、ある種のRNAは酵素活性を持っており、それらはリボザイム (ribozyme = ribose + enzyme) と呼ばれている。RNA鎖の切断や結合を行うRNA触媒も存在しており、ペプチド鎖の合成を行うリボソーム中でもRNAが触媒活性中心となっている。

二重鎖RNA (dsRNA)

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RNA (dsRNA) 2RNADNAdsRNARNADNArRNAtRNARNAsiRNAsiRNAmiRNAsiRNAmiRNA1miRNA1

RNAワールド仮説

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RNARNADNARNADNA

RNA使DNARNADNADNARNA2006DNARNARNADNA2

RNAの高次構造

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1RNARNA

RNA干渉

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RNAi(RNA interfernce、RNA干渉)とはsiRNA(small interfering RNA)または二本鎖RNA(double stranded RNA、dsRNA)によって配列特異的に遺伝子の発現が抑制される現象である。

哺乳類のRNAiのメカニズム

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RNA(double stranded RNAdsRNA)DicerRNase III2125RNARNAsiRNA(small interfering RNA)siRNARISC (RNA-induced silencing complex)Argonaute(Ago)mRNAsiRNAAgo531Ago5Ago528Ago28mRNAsiRNA920mRNAmRNAAgo

Dicer

DicerdsRNAsiRNApre-miRNAmiRNARNase III

RISC

RISC(RNA-induced silencing complex)dsRNARNAHannonRISCArgonaute(Ago)RNARNA

siRNAとmiRNA

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短鎖RNAは由来によって名称が異なる。人工的に作られたものやin vivoでdsRNA前駆体から生じたものはsiRNAという。miRNAは遺伝子から作られる前駆体RNAに由来する。この遺伝子が発現する細胞内で特定の遺伝子調節機能を発揮する。miRNAはmiRNA遺伝子から長い一次転写産物であるpri-miRNAとして転写される。pri-miRNAの中には将来miRNAとなる配列が含まれておりその部分はヘアピン状の高次構造をとっている。DroshaというRNase III酵素がヘアピン構造を切断しpre-miRNAにする。核内のpre-miRNAはExportin-5によって細胞質に運ばれ細胞質でDicerによってpre-miRNAは切断されmiRNAとなる。miRNAはRISCを形成し、標的RNAを認識するガイド分子として働く。このようにsiRNAもmiRNAも21塩基前後の長さの機能性ncRNAであり、RISCの中のsiRNAとmiRNAを化学組成や機能で見分けることはできず、あくまで由来で分類する。

RNAiの問題点

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オフターゲット効果

ターゲット遺伝子に対する抑制効果に加えてシード領域のみが対合した遺伝子群もオフターゲット効果と呼ばれる機構によって抑制される場合が多い。オフターゲット効果ではmRNAは切断されるのではなく、翻訳が抑制されることによって遺伝子機能が抑制されると考えられている。

インターフェロン応答

哺乳動物細胞に30bp以上の長いdsRNAを導入すると一部の細胞集団を除いてほとんどの細胞で細胞死が起こる。これはインターフェロン応答または抗ウイルス反応とよばれるディフェンス機構と考えられている。

存在

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リボヌクレオチドおよびその結合体であるポリヌクレオチド、DNA・RNAなどのリボ核酸は、生物を原料とするほとんどの食品に微量含まれている。重量比では、酵母(Baker's yeast/Saccharomyces cerevisiae)や海苔(Purple laver)などでリボ核酸の検出値が比較的高い。[5]

経口摂取と産業利用

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DNARNA

RNARNARNA[6]

利用例

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DNARNA調[7][8]RNA

脚注

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出典

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  1. ^ Fiers W et al., Complete nucleotide-sequence of bacteriophage MS2-RNA - primary and secondary structure of replicase gene, Nature, 1976, 260, 500-507.
  2. ^ "化学修飾". 化学辞典 第2版. コトバンクより2020年7月9日閲覧
  3. ^ RNAの特徴”. 医学生物学研究所. 2020年3月18日閲覧。
  4. ^ Ali B. Rodgers, Christopher P. Morgan, N. Adrian Leu, and Tracy L. Bale. Transgenerational epigenetic programming via sperm microRNA recapitulates effects of paternal stress. Proceedings of the National Academy of Sciences 112.44 (2015): 13699-13704.
  5. ^ “Nucleic Acid Contents of Japanese Foods”. NIPPON SHOKUHIN KOGYO GAKKAISHI 36 (11): Table 2. (1989). doi:10.3136/nskkk1962.36.11_934. 
  6. ^ リボ核酸|エル・エスコーポレーション
  7. ^ Schaller, Joseph P.; Kuchan, Matthew J.; Thomas, Debra L.; Cordle, Christopher T.; Winship, Timothy R.; Buck, Rachael H.; Baggs, Geraldine E.; Wheeler, J. Gary (2004-12). “Effect of Dietary Ribonucleotides on Infant Immune Status. Part 1: Humoral Responses” (英語). Pediatric Research 56 (6): 883–890. doi:10.1203/01.PDR.0000145576.42115.5C. ISSN 1530-0447. https://www.nature.com/articles/pr2004603. 
  8. ^ Buck, Rachael H.; Thomas, Debra L.; Winship, Timothy R.; Cordle, Christopher T.; Kuchan, Matthew J.; Baggs, Geraldine E.; Schaller, Joseph P.; Wheeler, J. Gary (2004-12). “Effect of Dietary Ribonucleotides on Infant Immune Status. Part 2: Immune Cell Development” (英語). Pediatric Research 56 (6): 891–900. doi:10.1203/01.PDR.0000145577.03287.FA. ISSN 1530-0447. https://www.nature.com/articles/pr2004604. 

関連項目

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外部リンク

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