「サウジアラビア法」の版間の差分
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ただし、民商事取引分野においては、[[シャリーア]]と抵触せず、これを補完するものと位置づけで、いくつもの法律が制定されており、その例としては、[[会社法]]、商業代理店法、不動産所有・投資に関する法律、[[特許法]]・[[商標法]]・[[著作権法]]、保険会社法、不動産担保に関する法律、[[仲裁法]]、民事執行法などが挙げられる。他方で、取引分野の基本法というべき[[民法典]]については、ルールの明確化・予見可能性向上などの観点から、[[国王]]のイニシアティブの下、制定に向けた動きがありつつも、反対論も根強く、未だ制定には至っていない。その背景には、[[民法]]が取引分野の基本法だけに、そのような制定法が導入されると、[[シャリーア]]を中心とすべき法体系との整合性が保てないなどの懸念が指摘されている<ref>[http://www.jccme.or.jp/japanese/11/pdf/2014-04/josei03.pdf 田中民之﹁中東諸国の法律・司法制度 サウジアラビアの司法改革を巡って②﹂]</ref>。
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ただし、民商事取引分野においては、[[シャリーア]]と抵触せず、これを補完するものと位置づけで、いくつもの法律が制定されており、その例としては、[[会社法]]、商業代理店法、不動産所有・投資に関する法律、[[特許法]]・[[商標法]]・[[著作権法]]、保険会社法、不動産担保に関する法律、[[仲裁法]]、民事執行法などが挙げられる。他方で、取引分野の基本法というべき[[民法典]]については、ルールの明確化・予見可能性向上などの観点から、[[国王]]のイニシアティブの下、制定に向けた動きがありつつも、反対論も根強く、未だ制定には至っていない。その背景には、[[民法]]が取引分野の基本法だけに、そのような制定法が導入されると、[[シャリーア]]を中心とすべき法体系との整合性が保てないなどの懸念が指摘されている<ref>[http://www.jccme.or.jp/japanese/11/pdf/2014-04/josei03.pdf 田中民之﹁中東諸国の法律・司法制度 サウジアラビアの司法改革を巡って②﹂]</ref>。
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また、このような[[民法典]]制定論争を巡っては、取引法制の整備という視点のみならず、[[シャリーア]]を重視しつつ現代の実態にも即した基本法整備を行うことが、現代における真の[[シャリーア]]に基づく統治のあり方を示していくきっかけになり、[[ |
また、このような[[民法典]]制定論争を巡っては、取引法制の整備という視点のみならず、[[シャリーア]]を重視しつつ現代の実態にも即した基本法整備を行うことが、現代における真の[[シャリーア]]に基づく統治のあり方を示していくきっかけになり︵このような[[シャリーア]]と現代社会との調和の試みは、[[イスラム金融]]における法理論や法律スキーム構築の歴史にも通じる。︶、イスラム法︵[[シャリーア]]︶による統治を掲げた理不尽な集団やその共感者などに対する理論的・実践的な反論にもなるとの意見もある<ref>[http://www.jccme.or.jp/japanese/11/pdf/2015-09/josei02.pdf 田中民之﹁中東諸国の法律・司法制度-シャリーアの法典化の可能性と有用性(3)﹂]</ref>。
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2017年5月21日 (日) 13:46時点における版
概要
サウジアラビアにおいては、イスラム法︵シャリーア︶そのものが法源となり、制定法を介さずに直接適用される。しかも、一般の法律を制定できる範囲が限定されている、つまり、イスラム法で明示的な規定がない事項について、イスラム法に抵触しない範囲でのみ制定が許容されている︵ここにおいて、シャリーアは、クルアーンとスンナを第一次的法源とし、イスラム法学者の合意や見解を第二次的法源とする法規範であり、条文の形で成文化されているものではない。︶[1]。
他のイスラム諸国では、制定法内にイスラム法︵シャリーア︶の理念や原則を取り入れることはあるが、イスラム法そのものが裁判規範として直接適用される主権国家はサウジアラビアのみとされている。例えば、酒類の製造等が禁止されていることは、サウジアラビアもクウェートも同様であるが、クウェートでは、刑法典において、販売目的で酒類を製造等した者を10年以下の禁固刑に処すると規定しており、その効力として酒類の製造等が禁止されていることになるのに対し、サウジアラビアでは、そのような制定法は存在せず︵制定法を設けることが許容されず︶、イスラム法の直接命じるところとして、酒類の製造等が禁止されていると解される。同様のことは、イスラム法が詳細な定めをする家族法についても該当し、サウジアラビアには、婚姻や相続などの実体ルールを規定する制定法は存在せず、イスラム法が直接の実体規範となっている。このように、イスラム教スンニ派の盟主サウジアラビアは、現代の主権国家の中では、イスラム法による統治を最も徹底した国といえる︵対照的に、イスラム教シーア派の雄イランの法制は、シャリーアを最高法規としつつも、制定法の適合性審査で用いるにとどまり、裁判規範として直接適用まではしない法体系をとっている。︶[1]。
ただし、民商事取引分野においては、シャリーアと抵触せず、これを補完するものと位置づけで、いくつもの法律が制定されており、その例としては、会社法、商業代理店法、不動産所有・投資に関する法律、特許法・商標法・著作権法、保険会社法、不動産担保に関する法律、仲裁法、民事執行法などが挙げられる。他方で、取引分野の基本法というべき民法典については、ルールの明確化・予見可能性向上などの観点から、国王のイニシアティブの下、制定に向けた動きがありつつも、反対論も根強く、未だ制定には至っていない。その背景には、民法が取引分野の基本法だけに、そのような制定法が導入されると、シャリーアを中心とすべき法体系との整合性が保てないなどの懸念が指摘されている[2]。
また、このような民法典制定論争を巡っては、取引法制の整備という視点のみならず、シャリーアを重視しつつ現代の実態にも即した基本法整備を行うことが、現代における真のシャリーアに基づく統治のあり方を示していくきっかけになり︵このようなシャリーアと現代社会との調和の試みは、イスラム金融における法理論や法律スキーム構築の歴史にも通じる。︶、イスラム法︵シャリーア︶による統治を掲げた理不尽な集団やその共感者などに対する理論的・実践的な反論にもなるとの意見もある[3]。
統治機構[1]
司法制度[4]
脚注
- ^ a b c イスラムビジネス法研究会・西村あさひ法律事務所編著『イスラーム圏ビジネスの法と実務』
- ^ 田中民之「中東諸国の法律・司法制度 サウジアラビアの司法改革を巡って②」
- ^ 田中民之「中東諸国の法律・司法制度-シャリーアの法典化の可能性と有用性(3)」
- ^ 田中民之「中東諸国の法律・司法制度 サウジアラビアの司法改革を巡って①」
関連項目
外部リンク
- ビジネス法令・法務(サウジアラビア) – JETROの提供するサウジアラビアの統治基本法、会社法などの日本語仮訳
- JETRO「サウジアラビアにおける司法制度と知的財産制度」