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「マティルデ・ディ・シャブラン」の版間の差分

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{{クラシック音楽}}

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'''マティルデ・ディ・シャブラン({{lang-it-short|Matilde di Shabran}})'''は、[[ジョアキーノ・ロッシーニ|ロッシーニ]]が[[1821年]]に作曲した[[オペラ|オペラ・セミ・セリア]]。この作品は[[ローマ]]初演作としては最後を飾るものとなっている。

'''マティルデ・ディ・シャブラン'''』({{lang-it-short|''Matilde di Shabran''}})は、[[ジョアキーノ・ロッシーニ|ロッシーニ]]が[[1821年]]に作曲した[[オペラ|オペラ・セミ・セリア]]。この作品は[[ローマ]]初演作としては最後を飾るものとなっている。

*原曲名:Matilde di Shabran

*原曲名:Matilde di Shabran

*台本:[[ヤーコポ・フェッレッティ]]

*台本:[[ヤーコポ・フェッレッティ]]

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== 作曲の経緯 ==

== 作曲の経緯 ==

=== ローマでの初演とトラブル ===

=== ローマでの初演とトラブル ===

 1820年にロッシーニはナポリで「[[マオメット2世]]」の作曲に着手したが、7月に起きた[[カルボナリ党]]の暴動騒ぎが原因で9月に予定していた初演がキャンセルされると、ローマのアポッロ劇場所有者である[[ジョヴァンニ・トルローニア]]と同劇場の興行師[[ルイージ・ヴェストリ]]の新作依頼を受けることとした(その結果、ナポリでの「[[マオメット2世]]」の初演は同年[[12月3日]]までずれ込んでしまった

1820年にロッシーニはナポリで「[[マオメット2世]]」の作曲に着手したが、7月に起きた[[カルボナリ党]]の暴動騒ぎが原因で9月に予定していた初演がキャンセルされると、ローマのアポッロ劇場所有者である[[ジョヴァンニ・トルローニア]]と同劇場の興行師[[ルイージ・ヴェストリ]]の新作依頼を受けることとした(その結果、ナポリでの「[[マオメット2世]]」の初演は同年[[12月3日]]までずれ込んでしまった)。あらかじめナポリ在住の作家が選び取った題材としてフランス語戯曲「マティルド」が選ばれたが、それは他の作曲家が好んで取り上げた題材だった。


 あらかじめナポリ在住の作家が選び取った題材としてフランス語戯曲「マティルド」が選ばれたが、それは他の作曲家が好んで取り上げた題材だった。

 ロッシーニは、「マティルド」第幕を携えローマ入りしたが、登場人物や歌手の顔ぶれが一致せず、検閲もパスしない可能性があり、これを断念。「[[チェネレントラ]]」の台本作者[[ヤーコポ・フェッレッティ]]に新たな題材を求めたが、多忙を理由にフェッレッティは代わりに[[フランソワ=ブノワ・オフマン]]の「ウフロジーヌ、または矯正された暴君」を原作に「コルラディーノ」を提示した。これを下敷きにロッシーニは作曲に着手。アポッロ劇場に対しては予め「マティルデ」と告知していたために、題名を「マティルデ・ディ・シャブランまたは美女と鉄の心」を変える事とした。

ロッシーニは、「マティルド」第1幕を携えローマ入りしたが、登場人物や歌手の顔ぶれが一致せず、検閲もパスしない可能性があり、これを断念。「[[チェネレントラ]]」の台本作者[[ヤーコポ・フェッレッティ]]に新たな題材を求めたが、多忙を理由にフェッレッティは代わりに[[フランソワ=ブノワ・オフマン]]の「ウフロジーヌ、または矯正された暴君」を原作に「コルラディーノ」を提示した。これを下敷きにロッシーニは作曲に着手。アポッロ劇場に対しては予め「マティルデ」と告知していたために、題名を「マティルデ・ディ・シャブランまたは美女と鉄の心」を変える事とした。


 しかし、ローマ入りが遅れたことや台本の変更により約束の期日までに作曲することは不可能だった。そのためアポッロ劇場は「[[チェネレントラ]]」でシーズンの幕を開け、他者の作品を先行上映して時間稼ぎをしたものの、その段階でもフェッレッティの台本は完成せず、ロッシーニは第2幕の音楽(導入曲、三重唱、二重唱の後半部)をジョヴァンニ・パチーニに委ねることとした。

しかし、ローマ入りが遅れたことや台本の変更により約束の期日までに作曲することは不可能だった。そのためアポッロ劇場は「[[チェネレントラ]]」でシーズンの幕を開け、他者の作品を先行上映して時間稼ぎをしたものの、その段階でもフェッレッティの台本は完成せず、ロッシーニは第2幕の音楽(導入曲、三重唱、二重唱の後半部)をジョヴァンニ・パチーニに委ねることとした。

 全ての音楽を揃え、稽古も開始したが、2月24日の初演を前に新たな問題が起こった。稽古の日にコンサートマスター兼指揮者が卒中で倒れ第1ホルン奏者も病気で演奏できなくなったのである。そのようなピンチを助けてくれたのはたまたまローマに滞在していたヴァイオリニスト[[ニコロ・パガニーニ]]であった。パガニーニは代わりに指揮をする一方で第2幕のエドアルドのアリアのホルン独奏をヴィオラ演奏で補った。しかし演奏時間3時間の大作で準備不足のために初演の評価は観客の間で真っ二つだったとされる。



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=== ナポリ版の完成 ===

=== ナポリ版の完成 ===

 ローマでの初演を終えて程なく、ナポリのフォンド劇場から再演依頼を受けると、ロッシーニは、パチーニの代作部分及び「リッチャイルドどゾライーデ」から流用した第


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のコルラディーノのシェーナとアリアを除去して新たに作曲した音楽に差し替えた。そして11月11日にナポリ版の初演を迎えることとなる。



== 作品の特徴 ==

== 作品の特徴 ==

 この作品はナポリ版が決定版とされているが、ナポリ版は登場人物の一人である詩人イシドーロの台詞が全てナポリ方言で書かれているために、ローマ版のほうが世間に流布することとなった。


12使

 しかし、ナポリ版の特徴として、詩人をナポリの聴衆向けにナポリ方言で歌わせていること、女嫌いのコルラディーノとそれを口説き落とそうとするマティルデとの駆け引きを描いた喜劇的な部分とコルラディーノに囚われたエドアルドとその父親ライモンドの悲劇的な部分がミックスされた構成となっている。

ナポリ版による20世紀の復活上演は[[1996年]][[8月13日]]、[[ペーザロ]]の[[ロッシーニ・オペラ・フェスティバル]]であるが、コルラディーノ役として[[ブルース・フォード]]の代わりとして急遽[[ファン・ディエゴ=フローレス]]が抜擢された。

 更に、1幕だけでも2時間を要する上に、エドアルドとマティルド、及びイシドーロのアリアを除けば重唱を中心に構成されており、各役の登場のアリアを欠く構成となっている。更にコルラディーノは重唱の中でアジリタの技巧とハイCの連発という至難の業を駆使しなければならない難役となっている。

 ナポリ版による20世紀の復活上演は[[1996年]][[8月13日]]、[[ペーザロ]]の[[ロッシーニ・オペラ・フェスティバル]]であるが、コルラディーノ役として[[ブルース・フォード]]の代わりとして急遽[[ファン・ディエゴ=フローレス]]が抜擢された。



== 編成 ==

== 編成 ==

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[[レシタティーヴォ]]用に

[[レシタティーヴォ]]用に

*[[ピアノ|ピアノフォルテ]]、[[チェロ]]、[[コントラバス]]

*[[ピアノ|ピアノフォルテ]]、[[チェロ]]、[[コントラバス]]


== あらすじ ==

== あらすじ ==

舞台はスペインのコルラディーノの城とその周辺

舞台はスペインのコルラディーノの城とその周辺

=== 第1幕 ===

=== 第1幕 ===

 村人たちが野菜や果物の年貢を届けに入る。迎えに来たのが塔守ジナルド一人なので村人たちが不審気に留まると、コルラディーノの侍医アリプランドが出てきて白の主人は酷く残忍な男であることを説明し城壁に掲げられた「招き無くして入るものには頭蓋の打ち砕かれることとなる」「あえて静寂を乱すものはここにて飢えと乾きにより死することとなる」という警告文を示し、コルラディーノが大の女嫌いであることを教える。そして鐘が鳴り村人は恐れをなして逃げ去る。'''''(導入曲「あのケルベロスが現れると災いが降り注ぎ」)'''''ジナルドと牢番ウドルフォはコルラディーノの囚人の見廻りに行く。

村人たちが野菜や果物の年貢を届けに入る。迎えに来たのが塔守ジナルド一人なので村人たちが不審気に留まると、コルラディーノの侍医アリプランドが出てきて白の主人は酷く残忍な男であることを説明し城壁に掲げられた「招き無くして入るものには頭蓋の打ち砕かれることとなる」「あえて静寂を乱すものはここにて飢えと乾きにより死することとなる」という警告文を示し、コルラディーノが大の女嫌いであることを教える。そして鐘が鳴り村人は恐れをなして逃げ去る。'''''(導入曲「あのケルベロスが現れると災いが降り注ぎ」)'''''ジナルドと牢番ウドルフォはコルラディーノの囚人の見廻りに行く。



 城の背後の森から放浪詩人イシドーロがやってくる。空腹と渇きで疲れ果てた彼は詩人は貧乏が運命と嘆き、運勢の好転を期待してナポリからやってきたと歌う。'''''(カヴァティーナ「その間もアルメニア、小暗き木々茂る」)'''''彼もまた城壁の警告文を読んで逃げようとするが行く手を阻まれる。

城の背後の森から放浪詩人イシドーロがやってくる。空腹と渇きで疲れ果てた彼は詩人は貧乏が運命と嘆き、運勢の好転を期待してナポリからやってきたと歌う。'''''(カヴァティーナ「その間もアルメニア、小暗き木々茂る」)'''''彼もまた城壁の警告文を読んで逃げようとするが行く手を阻まれる。




 




 アリプランドが主人コルラディーノにマティルデ・シャブラン(彼女の父親が死の床でコルラディーノに世話を任せた孤児)が面会を求めている旨を伝える。コルラディーノは入場を許すものの関心を示さず、すでに捕らえた宿敵ライモンドの息子エドアルドを見たいと望む。

アリプランドが主人コルラディーノにマティルデ・シャブラン(彼女の父親が死の床でコルラディーノに世話を任せた孤児)が面会を求めている旨を伝える。コルラディーノは入場を許すものの関心を示さず、すでに捕らえた宿敵ライモンドの息子エドアルドを見たいと望む。




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 アリプランドがマティルデに、「コルラディーノは愛を知らず軍功にしか興味を示さないドンキホーテのような男」と説明していると、マティルデを追い払いに伯爵令嬢が来たとジナルドが告げる。



 伯爵令嬢とマティルデはけんか腰でにらみ合い、アリプランドとジナルドが取り成していると、騒ぎを聞きつけたコルラディーノが現れる。マティルデが威嚇にひるまないのでコルラディーノは頭が混乱する。'''''(五重唱「これは女神ですの?なんてご様子!」)'''''女たちが去ると、コルラディーノは自分の心の変化に戸惑いアリプランドに相談する。アリプランドから「それは恋の病なのです」と言われたコルラディーノは魔法の仕業と考え、捕らえられたイシドーロに疑いをかけて殺すように命じるので、イシドーロは震え上がる。

アリプランドがマティルデに、「コルラディーノは愛を知らず軍功にしか興味を示さないドンキホーテのような男」と説明していると、マティルデを追い払いに伯爵令嬢が来たとジナルドが告げる。

伯爵令嬢とマティルデはけんか腰でにらみ合い、アリプランドとジナルドが取り成していると、騒ぎを聞きつけたコルラディーノが現れる。マティルデが威嚇にひるまないのでコルラディーノは頭が混乱する。'''''(五重唱「これは女神ですの?なんてご様子!」)'''''女たちが去ると、コルラディーノは自分の心の変化に戸惑いアリプランドに相談する。アリプランドから「それは恋の病なのです」と言われたコルラディーノは魔法の仕業と考え、捕らえられたイシドーロに疑いをかけて殺すように命じるので、イシドーロは震え上がる。

 

 


 




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=== 第2幕 ===

=== 第2幕 ===

 樹木の散在する平原。

樹木の散在する平原。


高い木の上でイシドーロが戦場詩人を気取っているコルラディーノの護衛兵と農夫たちが来るとイシドーロは空想的武勇伝を読み上げて彼らを喜ばせる。'''''(導入曲「コルラディーノの名はあらゆる土地に鳴り響く」)'''''



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不意に出くわしたライモンドとコルラディーノが、決闘を挑もうとすると、城に残したはずのエドアルドがいるので驚く。マティルデが彼を逃がしたと知ったコルラディーノは怒りに駆られて城を目指して走り出す。

 高い木の上でイシドーロが戦場詩人を気取っているコルラディーノの護衛兵と農夫たちが来るとイシドーロは空想的武勇伝を読み上げて彼らを喜ばせる。'''''(導入曲「コルラディーノの名はあらゆる土地に鳴り響く」)'''''


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 不意に出くわしたライモンドとコルラディーノが、決闘を挑もうとすると、城に残したはずのエドアルドがいるので驚く。マティルデが彼を逃がしたと知ったコルラディーノは怒りに駆られて城を目指して走り出す。




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激流に臨む切り立った山の断崖。傍らにライモンドの城が見える。


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 激流に臨む切り立った山の断崖。傍らにライモンドの城が見える。


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== 主要曲 ==

== 主要曲 ==

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[[Category:ロッシーニのオペラ]]

[[Category:ロッシーニのオペラ]]

[[Category:19世紀のオペラ]]

[[Category:19世紀のオペラ]]

[[Category:イタリア語のオペラ]]

[[Category:スペインを舞台とした作品]]



[[ca:Matilde di Shabran]]

[[ca:Matilde di Shabran]]


2012年5月24日 (木) 11:09時点における版


: Matilde di Shabran1821

Matilde di Shabran



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作曲の経緯

ローマでの初演とトラブル


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ナポリ版の完成


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作品の特徴


12使

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編成

登場人物

  • コルラディーノ(女嫌いの城主)…テノール
  • マティルデ・シャブラン…ソプラノ
  • ライモンド・ロペス(コルラディーノの宿敵でエドアルドの父)…バリトン
  • エドアルド(ライモンド・ロペスの息子で囚われの身)…メゾソプラノ
  • アリプランド(コルラディーノの侍医)…バス
  • イシドーロ(詩人)…バリトン
  • アルコの伯爵令嬢…メゾソプラノ
  • ジナルド(塔守)…バス
  • エゴルド(村人のリーダー)
  • ロドリーゴ(武装護衛長)

管弦楽

  レシタティーヴォ用に

あらすじ

舞台はスペインのコルラディーノの城とその周辺

第1幕








宿





 


第2幕
















姿

主要曲

  • 第1幕・導入曲「あのケルベロスが現れると災いが降り注ぎ」
  • 第1幕・イシドーロのカヴァティーナ「その間もアルメニア、小暗き木々茂る」
  • 第1幕・エドアルドのアリア「私の目は涙する、それは確かだ」
  • 第1幕・二重唱「気まぐれについて、媚について、ため息について、愛嬌について」(マティルデ、アリプランド)
  • 第1幕・五重唱「これは女神ですの?なんてご様子!」(伯爵令嬢、マティルデ、アリプランド、ジナルド、コルラディーノ)
  • 第1幕・フィナーレ「出立しお戦いください、勝者としてお戻りください…前進せよ、すばやく、勇者らしく」
  • 第2幕・導入曲「コルラディーノの名はあらゆる土地に鳴り響く」 (イシドーロ)
  • 第2幕・エドアルドのアリア「ああ!なぜ、なぜ、死は僕の泣き声を聞いてくれぬ?」
  • 第2幕・六重唱「裏切りは明らかです」(伯爵令嬢、マティルデ、コルラディーノ、アリプランド、イシドーロ、ジナルド)
  • 第2幕・農婦たちの合唱「死なせるですって、あの哀れな方を?なんて酷いこと!」
  • 第2幕・二重唱「幾百の、多くの焦燥によりこの心が痛めつけられるのを感じる」(エドアルド、コルラディーノ)
  • 第2幕・アリアフィナーレ「ついに貴方は愛する?でも誰が愛さずにいられましょう?」(マティルデ)