佳人之奇遇
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佳人之奇遇︵かじんのきぐう︶は、東海散士︵柴四朗︶の政治小説。初編は1885年︵明治18年︶に刊行され、その後1888年までに四編まで刊行された。その後、国会開設後の1891年に五編が、日清戦争後の1897年に六編から八編まで刊行され、完結をみた。全16巻。
内容[編集]
会津の遺臣である東海散士がアメリカにわたり、フィラデルフィアの独立閣でアイルランドの美女紅蓮、スペインの貴女幽蘭にめぐりあうのが発端で後に中国の明朝の遺臣も加わる。いずれも亡国の憂いを抱き、権利の回復運動に進もうとするかれらの交情が描かれる。なお、この話の中でハンガリーのコシュートが亡国の代表として各編に登場する。 東アジア経営にかんする意見、世界の地誌、世界史への注釈などが加わり、前半では小国が大国に依存した状態では民族的解放ができないこと、小国の国民は国を守る気力を持たなければならないこと、小国同士が手を取り合って協力すべきことが説かれている。 後半になると、作者自身が谷干城に随行してヨーロッパを視察したときの体験が混ざり、また金玉均との交友から朝鮮半島をめぐる議論や日清戦争後の三国干渉をめぐる議論が作品の主軸を占めるようになり、佳人の面影は作品からは遠ざかっていく。翻訳[編集]
梁啓超は、日本亡命中に横浜で創刊した﹃清議報﹄の1898年の創刊号から中国語︵文語︶訳を﹃佳人奇遇﹄の題で連載した。 ファン・チュー・チンは、ベトナム語の韻文に翻訳した﹃Giai Nhân Kỳ Ngộ Diễn Ca﹄︵佳人奇遇演歌︶をクオック・グーで記し、1926年に公刊した。書誌情報[編集]
岩波書店刊﹃新日本古典文学大系明治編 17 政治小説集 二﹄ISBN 4-00-240217-7︵2006年︶に収録されている。参考資料[編集]
- 南塚信吾編『叢書東欧 (1)東欧の民族と文化』彩流社、1989年。ISBN 4882021374。