「行列式」の版間の差分
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という平面上の線型変換を定めている。一方で、2つの平面ベクトル {{math|''u'' {{=}} (''u''{{sub|0}}, ''u''{{sub|1}})}}, {{math|''v'' {{=}} (''v''{{sub|0}}, ''v''{{sub|1}})}} に対して、これらが張る平行四辺形の「向きも込めた」面積は |
という平面上の線型変換を定めている。一方で、2つの平面ベクトル {{math|''u'' {{=}} (''u''{{sub|0}}, ''u''{{sub|1}})}}, {{math|''v'' {{=}} (''v''{{sub|0}}, ''v''{{sub|1}})}} に対して、これらが張る平行四辺形の「向きも込めた」面積は |
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: <math>A(u,v)=u_0 v_1 -u_1 v_0</math> |
: <math>A(u,v)=u_0 v_1 -u_1 v_0</math> |
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により指定されると考えることができる。このとき {{math|''A''(''Xu'', ''Xv'') {{=}} (''ad'' − ''bc'')''A''(''u'', ''v'')}} が成り立っているが、これは {{mvar|X}} の定める線型変換によって平面内の図形の面積が {{ |
により指定されると考えることができる。このとき {{math|''A''(''Xu'', ''Xv'') {{=}} (''ad'' − ''bc'')''A''(''u'', ''v'')}} が成り立っているが、これは {{mvar|X}} の定める線型変換によって平面内の図形の面積が {{math|(''ad'' − ''bc'')}} 倍される、と解釈できる。
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したがって、実2次正方行列 {{mvar|X}} に対して︵上の記号の下で︶{{ |
したがって、実2次正方行列 {{mvar|X}} に対して︵上の記号の下で︶{{math|det ''X'' {{coloneqq}} ''ad'' − ''bc''}} を対応させると、{{math|det(''XY'') {{=}} (det ''X'')(det ''Y'')}} であることや、{{math|det ''X'' > 0}} であるとき {{mvar|X}} の定める変換は図形の向きを保ち、反対に {{math|det ''X'' < 0}} であるとき図形の向きは反転させられることが分かる。{{math|det}} の乗法性から {{mvar|X}} が可逆ならば {{math|det ''X''}} は逆数を持つ数であることが従うが、反対に {{mvar|X}} が退化した行列︵つまり {{mvar|X}} の定める変換の像が一次元の部分空間︶になる場合にはすべての図形の変換後の面積が {{math|0}} になることから {{math|det ''X'' {{=}} 0}} となることがいえる。こうして、正方行列 {{mvar|X}} が正則であることと {{mvar|X}} の行列式が可逆であることは同値であることが分かる。
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同様にして一般の次数のN次[[正方行列]] {{mvar|X}} に対し、{{mvar|X}} の定める線型変換が超立体︵N次図形︶の超体積を何倍にしているかという符号付き拡大率を {{mvar|X}} の行列式として定義することができる。これは行列の成分を変数とする多項式の形で書け、二次の場合と同様にこれは[[正則行列|正則性]]など正方行列の重要な性質に対する指標を与えている。[[線型方程式|一次方程式系]]が与えられるとき、方程式の係数行列に対してその行列式の値を調べることにより、方程式系の根の状態をある程度知ることができる。特に[[クラメルの公式]]により、[[方程式|根]]が一組である[[線型方程式系]]の根の公式が行列式を用いて表示される。
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同様にして一般の次数のN次[[正方行列]] {{mvar|X}} に対し、{{mvar|X}} の定める線型変換が超立体︵N次図形︶の超体積を何倍にしているかという符号付き拡大率を {{mvar|X}} の行列式として定義することができる。これは行列の成分を変数とする多項式の形で書け、二次の場合と同様にこれは[[正則行列|正則性]]など正方行列の重要な性質に対する指標を与えている。[[線型方程式|一次方程式系]]が与えられるとき、方程式の係数行列に対してその行列式の値を調べることにより、方程式系の根の状態をある程度知ることができる。特に[[クラメルの公式]]により、[[方程式|根]]が一組である[[線型方程式系]]の根の公式が行列式を用いて表示される。
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=== 二つの定義の同値性 === |
=== 二つの定義の同値性 === |
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{{mvar|K{{sup|n}}}} の標準基底を {{ |
{{mvar|K{{sup|n}}}} の標準基底を {{math|(''e''{{sub|1}}, …, ''e{{sub|n}}'')}} とする。正方行列 {{mvar|X}} を表す列ベクトルを {{math|''v''{{sub|1}}, …, ''v{{sub|n}}''}} とすると、{{math|''v{{sub|j}}'' {{=}} ''Xe{{sub|j}}''}} である。
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: <math>({\textstyle\bigwedge^n}X)(e_1 \wedge \dotsb \wedge e_n) = v_1 \wedge \dotsb \wedge v_n</math> |
: <math>({\textstyle\bigwedge^n}X)(e_1 \wedge \dotsb \wedge e_n) = v_1 \wedge \dotsb \wedge v_n</math> |
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であるが、ここで |
であるが、ここで |
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== いくつかの行列式 == |
== いくつかの行列式 == |
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2次[[対称群]] <math>\mathfrak{S}_2</math> は恒等置換 {{ |
2次[[対称群]] <math>\mathfrak{S}_2</math> は恒等置換 {{math|1=id (id(1) = 1, id(2) = 2)}} と互換 {{math|1=''σ'' = (1, 2)(''σ''(1) = 2, ''σ''(2) = 1)}} の 2 つの置換からなるので |
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:<math>\begin{vmatrix} |
:<math>\begin{vmatrix} |
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a_{1 1} &a_{1 2} \\ |
a_{1 1} &a_{1 2} \\ |
2024年3月25日 (月) 00:31時点における版
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![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/b/b9/Determinant_parallelepiped.svg/200px-Determinant_parallelepiped.svg.png)
概要
X を実2次正方行列定義
抽象的な定義
K を可換環とし、E を階数 nの A上の自由加群とする。E の n-次外冪 ⋀nE は A上階数1の自由加群である。E 上の K-線型写像 ϕ について、⋀nE 上に引き起こされる K-準同型明示的な定義
二つの定義の同値性
Kn の標準基底を (e1, …, en) とする。正方行列 Xを表す列ベクトルを v1, …, vnとすると、vj = Xejである。複線型交代形式
歴史
西洋で行列式が考えられるようになったのは16世紀であり、これは19世紀に導入された行列そのものよりも遥かに昔に導入されていたことになる。また、数を表の形に並べたものや、現在ガウス︵・ジョルダン︶消去法と呼ばれているアルゴリズムは最も古くには中国の数学者たちによって考えられていたことにも注意する必要がある。行列式に関する最初期の計算
楊輝︵中国、1238年? - 1298年︶は﹃詳解九章算術﹄で数字係数の二元連立一次方程式の解をクラメルの公式の形で、行列式的なものを含んだ形で与えている。また1545年にジェロラモ・カルダノは、著書 Ars Magna の中で同じく2×2の場合のクラメルの公式を与えている。この公式は regula de modo︵ラテン語で﹁様態に関するの規則﹂の意味︶と呼ばれている。彼らは﹁行列式﹂を定義したわけではないが、その概念の萌芽を見てとることができる。高階の行列に関する行列式
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/4/4c/Seki_Kowa_Katsuyo_Sampo_Bernoulli_numbers.png/180px-Seki_Kowa_Katsuyo_Sampo_Bernoulli_numbers.png)
関孝和ら和算家による発見
関孝和は﹃解伏題之法﹄で行列式について述べている。本手稿のテーマは多変数の高次方程式から変数を消去して一変数の方程式に帰着することで、変数消去の一般的方法、つまり終結式の理論を提示している。本手稿では3次と4次に関しては行列式の正しい表示を与えているが、より高次の5次の場合はつねに0になってしまい、あきらかに間違っている。これが単純な誤記の類であるか否かは不明である。また、次節で述べるように、関西で活躍していた田中由真や井関知辰らの研究も同様の問題を考えており、類似の結果にたどり着いている。 これらの研究では、いずれも行列式は終結式を表すための手段にすぎず、行列式そのものを意味のある対象として捉えていたかについては異論がある。実際、それをあらわす用語すら提案されていない。また、日本が鎖国によって外界から遮断されていたこともあり、西洋数学に影響を与えることはなかった。ライプニッツによる行列式の発見
同じ時期にライプニッツは数多くの線型方程式系を研究していたが、その頃は行列記法がまだなかったので、彼は未知数の係数を、現在のような ai,j のかわりに ijのように添字の対によって表現していた。1678年に彼は3つの未知数に関する3つの方程式に興味を抱き、列に関する行列式の展開式を与えている。同じ年に彼は4次の行列式についても︵符号の間違いを別にすれば︶正しい式を与えている。ちなみにライプニッツはこの成果を公表しなかったので、50年後に彼とは独立に再発見されるまでこの成果は人々に認識されていなかった。一般的な行列式
関孝和は、最初の手稿からやや後の﹃大成算成﹄︵建部賢明、建部賢弘と共著、執筆は1683年︿天和3年﹀ - 1710年︿宝永7年﹀頃︶で、第一列についての余因子展開を一般の場合について正しく与えている。また、田中由真は﹃算学紛解﹄︵1690年︵元禄3年︶ごろ︶で5次までの行列式を、井関知辰は﹃算法発揮﹄︵1690年︵元禄3年︶刊︶で第一行についての余因子展開を一般の場合で与えている。ちなみに関や田中の著作は写本のみであるが、井関の著作は出版がなされている。 ヨーロッパにおいても、行列式の理論は日本の場合と同じく︵一次ではなく︶高次の代数方程式の変数消去の研究のために発展した。1748年にマクローリンの︵死後に刊行された︶代数学の著作において4つの未知数に関する4つの方程式の系の解が正しい形で述べられ、行列式の研究が再開されることになった。1750年にクラメルは︵証明抜きで︶N 個の変数に関する N個の方程式からなる方程式の解を求める規則を定式化した。この行列式の計算方法は順列の符号に基づく繊細なものだった。 ベズー︵1764年︶やファンデルモント︵1771年、ヴァンデルモンドの行列式の計算︶などがそれに続き、1772年にはラプラスによって余因子展開の公式が確立された。さらに翌年にはラグランジュによって行列式と体積との関係が発見されている。 今日の determinant︵決定するもの︶に当たる言葉が初めて現れたのはガウスによる1801年の Disquisitiones Arithmeticae である。そこで彼は二次形式の判別式︵今日的な意味での行列式の特別な例と見なせる︶を用いている。彼はさらに行列式と積の関係についても後少しのところまでいっている。現代的な行列式の概念の確立
現代的な意味での行列式という用語はコーシーによって初めて導入された[4]。彼はそれまでに得られていた知識を統合し、1812年には積と行列式の関係を発表している︵同じ年にビネも独立に証明をあたえていた︶。コーシーは平行して準同型の簡約化についての基礎付けの研究も行っている。 1841年に﹁クレレ誌﹂で発表されたヤコビの3本の著作によって行列式の概念の重要性が確立された。ヤコビによって初めて行列式の計算の系統的なアルゴリズムが与えられ、またヤコビアンの概念によって写像の行列式も同様に考察できるようになった。行列の枠組みはケイリーとシルベスターによって導入された。ちなみにケイリーは逆行列の公式を確立させており、行列式の記号として縦棒を導入したのも彼である[4]。 行列式の理論は様々な対称性を持つような行列についての行列式の研究や、線型微分方程式系のロンスキー行列式など数学の様々な分野に新たに行列式を持ち込むことが追究されている。いくつかの行列式
2次対称群発展的な話題
小行列式
余因子展開
余因子行列と逆行列
n次正方行列 A≔ (aij) に対し、(i, j)余因子を (j, i)成分に持つ行列行列式の性質
行列式の基本的な性質として以下が成り立つ。固有値との関係
行列 Aの固有値を λi (i = 1, …, n) と置くと、特異値との関係
正方行列 Aの特異値を σi(A) (i = 1, …, n) と置くと、証明 — (対角行列Σの対角成分は非負)
跡との関係
正方行列の跡 (trace) とは、対角成分の総和である。それは固有値の総和に一致する。そのため、固有値の積である行列式とは指数関数 (exponential) を介してつながっている。 行列に対する指数関数は微分
行列式は多項式であり、微分が可能である。余因子展開の式から、A の行列式 det(A) の微分として次の関係が成り立つ。関連項目
脚注
参考文献
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