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== 概要 ==

== 概要 ==

軍事心理学は心理学的な軍事問題を研究する応用心理学であり、軍事要員としての適性や軍事行動に伴う様々な心理学的な課題について研究が行われる。具体的には将兵の選抜と配置、軍事教練の過程や効果、偽装の過程や効果、戦闘ストレスなどの精神衛生、士気や統率といった集団行動、人間工学の兵器設計への応用、軍隊生活などが研究の対象となる。


[[]][[PTSD]]<ref>Adler, A.B. & Bartone, P.T.International survey of military psychologyU.S.Army Medical Research Unit-Europe1997https://apps.dtic.mil/sti/citations/ADA325720</ref>NATOVR)


== 歴史 ==

== 歴史 ==


=== 欧米 ===

=== 欧米 ===


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欧州と太平洋に分かれて戦闘を展開した米国は兵士の疲弊を軽減する方策を開発するよう心理学者スキナーに要請した。スキナーは列車で移動中に窓の景色を眺めていた時,空を飛ぶ鳥の群れを見て,オペラント条件づけで鳩が敵の軍艦を目視したら嘴(くちばし)でボタンをつつくよう調教し,複数の鳩をミサイルの先端に入れる爆撃装置を開発した(ピジョン・プロジェクト)。現代の無人爆撃機(ドローン)の先駆けである。だが,その装置は実用化されなかった。米国マンハッタン計画で原子爆弾の実用化の目途がついたからだ。日本への原子力爆弾の投下計画にも軍事心理学者が参画した。日本の戦意を打ち砕くために,日本の地理,国民性,歴史と文化,産業,高等教育,鉄道路線など多様な情報を分析し,第一ターゲットは京都市に絞られた。予定された爆心地は現在の鉄道博物館や京都水族館のある梅小路公園であった。そのため京都市もたびたび空襲を受け,また原子力爆弾の形をしたパンプキン爆弾も京都市に投下された。だが陸軍長官スティムソンの判断で計画が変更され,悲劇は広島市と長崎市で起こった。


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ベトナム戦争では戦時中,戦後に大量の米軍帰還兵が極度の戦闘ストレス反応を示し,社会生活で不適応を起こしたことから,彼らを救済するために心的外傷後ストレス障害(PTSD)という精神疾患の診断名が,1980年に出版された米国精神医学会の診断マニュアル「DSM3」に登場した。PTSDは1990年代以降の,湾岸戦争やイラク・アフガニスタン戦争でも多発し,米軍兵の中から大量の自殺者が現れ,現在も米国では重大な社会問題となっている。現在,米国国防省や英国国防省では,戦闘ストレス・コントロールやPTSDの予防・軽減のために有効な教育プログラムの開発に注力している。対症療法よりも予防法の強化である。



=== 日本 ===

=== 日本 ===


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 <ref name=":0"> (19192018</ref>1918[[|]]調[[]][[]]19301941[[]][[]][[]] [[]][[]][[]][[]][[]][[]]<ref>{{Cite web||title= {{!}}  {{!}}  |url=https://www.mod.go.jp/nda/about/center_for_global_security.html |website=www.mod.go.jp |access-date=2022-06-18}}</ref>2000[[]][[]] <ref name=":0" /><ref> 1983</ref> <ref>1002017</ref> 

== 米国で展開されている軍事心理学 ==

'''軍事心理学'''は心理学の専門分野であり、心理科学を応用して、軍人の即応性、組織最適化、作戦を促進する。軍事心理学者は、直接的な臨床ケア、軍司令官への相談、他者への指導や軍事訓練の支援、軍事作戦や軍人に関連する研究など、さまざまな方法で軍に支援を提供している。軍務に関連するストレス要因は、リスクの高い訓練や戦闘にさらされることを含め、数多くある。そのため、心理学者は、軍の指導者が適切な訓練プログラムを設計し、そのプログラムを監督し、軍人の訓練と軍生活全般の課題に対処することを支援する重要な支援要員である。軍人が直面する問題のほとんどは、民間人が直面する問題とそれほど変わらない(例えば、人間関係の問題、経済的ストレス要因、職業的緊張)。軍人が直面する問題のうち、やや異なる例としては、戦闘に伴う心的外傷後ストレス障害(PTSD)、離別による長期または頻繁な配備に伴う罪悪感や家族・パートナーの困難などがある。軍事心理学の臨床心理学者は、しばしば、ストレス、疲労、およびその他の個人的な任務準備上の治療に重点をおいている。


== 軍事心理学者の役割 ==

軍隊は、通常、ユニークでしばしば混沌としたトラウマに満ちた状況で国家安全保障の任務を遂行するために訓練され装備された集団である。このような状況には、戦闘の最前線、国家の緊急事態、対テロ支援、同盟国の支援、あるいは友好国と敵国の両方の人口に救援物資を提供する、災害対応シナリオが含まれることがある。多くの心理学者は、トラウマ的な状況に対する人間の反応に関して一般的な理解を持っているかもしれないが、軍事心理学者は、この特別な集団の中で応用科学と実践において独自の訓練を受け、経験を積んだ専門家である。軍人は、被害者に直接援助を行うことがあるかもしれない。軍事心理学者は、軍人とその家族、そして軍事作戦の被害者が、異常な状況に対するしばしば「正常な」反応や反応に対処する際に、専門的な援助を行っている。











軍事心理学者は、個人、集団、組織の最適なウェルビーイングのために職務状態を評価、診断、治療、推奨する。兵士や司令官の精神状態、レジリエンス(回復力)、あるいは心理学的資源や心理学的脆弱性に影響を与える出来事は、軍事心理学者が戦闘部隊の行動の健全性を保つために専門的なケアやコンサルティングを提供する絶好の機会である。






調使

== 軍事心理学の研究課題 ==

現在の軍事心理学者の目標と使命は、変革をとげている。今やストレス度の高い軍事環境において心理ケアの必要性は予想されることである。PTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しむ人々治療プログラムも改良されている。また、任務への配属後のスクリーニング検査が広範囲に行われるようになり、以前は見過ごされ、治療されることがなかった問題を見極めることができるようになった。


=== テロリズム ===




テロリストは、高学歴の人々の中に存在する傾向がある。彼らはしばしば、よく考え抜かれた、しかしあまり公にはされない、あるいは明確にされない、硬直したイデオロギーを発展させ、それが彼らの戦略と戦術の基礎となっている。精神障がいの認められるテロリストは、テロ組織の戦略的成果を損なう危険性を増大させる。どのようなテロ組織でも、指導者は精神障がいの認められる人物がもたらすリスクを十分に認識している。有能なテロリストはその仕事に最適な人物を採用しようとする。現代のテロリスト集団が、米国やその他の西側諸国の雇用法で規定されている要件を採用しているかどうかは不明である。


テロというレッテルがいつ、どのように貼られるかを理解することは、上記のようにその心理的影響から重要である。テロリストの考え方の原因、目標、方法論、戦略は、心理学的な探求とそれに立ち向かうための戦略・戦術の開発に適している。テロリズムは、政治的目的のために人々に影響を与えるために、社会的・心理的原則とともに、行動的、感情的、および集団の力学を利用するイデオロギーである。心理戦の一種である。テロリストは、政治的課題を進めるために、恐怖、暴力、暴力の脅威、トラウマを利用する専門家でもある。テロリストは心理的コントロールを求め、暴力的な行動を用いて、既存の政治的プロセスや政治権力の象徴を破壊するような行動を人々に起こさせる。彼らは深い原始的な感情を使って反応を引き出し、行動を形成することによって人々をコントロールする。


テロリストの目的は、暴力を使って死や身体切断に対する自然な恐怖を作り出し、それを利用して政治的行動を変えたり、思考を制御したり、言論を修正することだ。軍事心理学者は、高度な訓練を受け、経験を積んでいる。軍事と心理学の専門職の技術と科学における専門的な知識、技能、能力を備えた専門家であり、テロリズムに対抗する作戦環境において大きな可能性を与える。


=== 作戦心理学 ===

作戦心理学(Operational psychology)は、心理学の分野の中でも、国家安全保障や国防の領域で、戦術的、作戦的、戦略的目標を達成するために、主要な意思決定者が個人、集団、組織をより効果的に理解し、開発し、ターゲットにし、影響を与えられるよう、専門的助言(コンサルテーション)に行動科学の原理を適用する専門分野である。これは比較的新しい学問分野であり、主に軍事、情報、法執行の分野で心理学者や行動科学者によって実施される。心理学は近年、国家安全保障への応用に焦点を合わせている。その例としては、プロファイリングによるテロリズム抑止戦略の策定、尋問や拘留の支援、情報心理作戦、特殊な軍事活動やその他の公安活動への人材選抜などがある。





=== 戦術心理学 ===

戦術心理学(Tactical psychology)とは、「兵士が敵と接触したときに何をするか、つまり前線の兵士が戦いに勝つために何をすればよいかを鋭く追求すること」である。心理学と歴史分析(軍事史料に統計学を応用したもの)を組み合わせて、戦術によって敵が攻撃をやめ、固まったり、逃げたり、混乱する戦術を発見する。戦術心理学では、制圧射撃、複合武器、側面攻撃などの技術が、いかに敵の戦意を低下させるかを検証する。


=== 健康心理学、組織心理学、職業心理学 ===

軍事心理学者は、メンタルヘルスや家族カウンセリング・クリニックの運営、軍隊の新兵選抜検査、さまざまな軍隊に最適な新兵の選抜、軍人と民間人の命を救うための手順を決定する人道的および平和維持任務の分析など、さまざまな分野で貢献している。また、軍人やその家族の生活を向上させるために貢献している軍事心理学者もいる。また、多様性と機会均等の向上を目的とした、軍内の大規模な社会政策プログラムに携わる軍事心理学者もいる。


現代的なプログラムでは、多様な民族や人種を軍隊に統合し、性的暴行や差別を減らすといった問題に取り組むために、軍事心理学者のスキルと知識が役立っている。また、戦闘や、伝統的に男性が担ってきた他の職種で、女性の雇用を支援する軍事心理学者もいる。能力の低い新兵の活用、薬物中毒や負傷した軍人のリハビリを支援する軍事心理学者もいる。アルコール依存や薬物乱用などの生活習慣の問題に対して、軍事心理学者は薬物検査や心理療法を担当する。現代、軍事心理学者の助言は、以前にも増して国の政策形成において真剣に考慮されるようになってきている。現在、アメリカ国防総省に勤務する心理学者の数は、世界のどの組織よりも多い。しかし、1990年代に軍の規模が縮小されて以来、軍における心理学の研究や支援は減少している。


=== フェミニズム ===


1015

== 中国で展開されている軍事心理学 ==


2018Handbook of Military Psychology<ref>{{Cite book|title=Handbook of military psychology : clinical and organizational practice|url=https://www.worldcat.org/oclc/1015215346|date=2017|location=[Cham, Switzerland]|isbn=978-3-319-66192-6|oclc=1015215346|others=Stephen V. Bowles, Paul T. Bartone}}</ref>




近年の中国の軍事心理学の成果として(1)軍人の心理学的選抜、(2)軍事環境が精神衛生に及ぼす影響、(3)軍事における人的要因の心理学、(4)心理戦と心理学的防衛、(5)軍人の精神衛生、(6)軍事心理訓練、(7)組織精神衛生と軍事組織文化、(8)戦時以外の精神衛生サービスの8分野がある。これらの分野には有用な心理検査の実施や、中国の広大で地理的に変化に富んだ領土が軍人の精神衛生に及ぼす影響などが含まれる。


中国における軍事心理学は、軍の科学技術の高度な技術を利用し、情報戦と心理戦を発展させている。また、精神病質などの特徴を識別することは、軍の精神障害の早期予防に重要な役割を果たす。






== 脚注 ==

== 脚注 ==

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*[[心的外傷後ストレス障害]]

*[[心的外傷後ストレス障害]]

*[[軍事教育]] - [[軍事訓練]]

*[[軍事教育]] - [[軍事訓練]]

*[[災害心理学]]



== 参考文献 ==

== 参考文献 ==

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*Weiner, E. L., and D. C. Nagel, eds. 1988. Human factors in aviation. San Diego, Calif: Academic Press.

*Weiner, E. L., and D. C. Nagel, eds. 1988. Human factors in aviation. San Diego, Calif: Academic Press.

*Zillmer, E. A. 2006. Military Psychology: Clinical And Operational Applications. Guilford.

*Zillmer, E. A. 2006. Military Psychology: Clinical And Operational Applications. Guilford.

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2023年12月2日 (土) 23:41時点における最新版


Military psychology

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Operational psychology


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(一)^ Adler, A.B. & Bartone, P.T.International survey of military psychologyU.S.Army Medical Research Unit-Europe1997https://apps.dtic.mil/sti/citations/ADA325720

(二)^ SAS200213

(三)^ ab (19192018

(四)^  |  | . www.mod.go.jp. 2022618

(五)^  1983

(六)^ 1002017

(七)^  Handbook of military psychology : clinical and organizational practice. Stephen V. Bowles, Paul T. Bartone. [Cham, Switzerland]. (2017). ISBN 978-3-319-66192-6. OCLC 1015215346. https://www.worldcat.org/oclc/1015215346 

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