アラサラウス
アラサラウスまたはアラサルシは、アイヌに伝わる妖怪。
ヒグマ
また、クマを性質によって良いクマと悪いクマに分け、悪いクマの中でも赤毛で尾の長いヒグマをアラサルシと呼ぶこともある[4]。クマはアイヌにとって重要な獣であり、イオマンテの対象でもあるが、アイヌが大事にしている馬を殺したり、アイヌに対して理不尽なことを行ったクマは、化け物としてアラサルシと呼ばれ、猟の対象になったともいう。イオマンテにおいてはクマの魂はカムイとして天へ帰るとされるが、悪いクマは天に戻らず、地下にあるテイネポクナモシリという陰湿で決して戻ることのできない場所へ落ちるのだという[5]。
ウエペケレに登場するサルのことをアラサルシと呼ぶともいい、アイヌ社会における手余され者、乱暴者、鼻つまみ者のこともアラサルシという[1]。
概要[編集]
名称の﹁アラ﹂は﹁一つ﹂、﹁サラ﹂は﹁尻尾﹂、﹁ウス﹂は﹁生えている﹂を意味する[1]。体毛がまったくなく、1本の尾を持った巨体の悪獣といわれる[2]。山の崖の穴に住むクマのような猛悪な動物で、自在に変身し、人間を捕えて食らうともいう[3]。類話[編集]
アイヌでは﹁イワサラウス﹂といって、大きな体に毛が全くなく、6本の尾がある妖怪の伝承もあるが[2]、これもアラサラウスと同じくクマの化け物だとする見方もある[6]。脚注[編集]
(一)^ ab萱野茂﹃カムイユカラと昔話﹄小学館、1988年、30-33頁。ISBN 978-4-09-264301-7。
(二)^ ab日野巌・日野綏彦 著﹁日本妖怪変化語彙﹂、村上健司校訂 編﹃動物妖怪譚﹄ 下、中央公論新社︿中公文庫﹀、2006年、230-234頁。ISBN 978-4-12-204792-1。
(三)^ 吉田巖﹁アイヌの妖怪説話﹂﹃人類学雑誌﹄第29巻第10号、日本人類学会、1914年10月、401頁、NCID AN10139252。
(四)^ 山田孝子﹃アイヌの世界観 ﹁ことば﹂から読む自然と宇宙﹄講談社︿講談社選書メチエ﹀、1994年、156-157頁。ISBN 978-4-06-258024-3。
(五)^ 佐々木利和 (2009年11月23日). “描かれた蝦夷、そしてアイヌ” (PDF). アイヌ文化振興・研究推進機構. pp. 9-10. 2010年8月21日閲覧。
(六)^ 村上健司編著﹃妖怪事典﹄毎日新聞社、2000年、48頁。ISBN 978-4-620-31428-0。