アーカイブ
アーカイブ (archive; [ˈɑːrkaɪv]) とは、組織や個人の活動の中で作成される文書であり、単に収集・保存するのではなく、ある体系に基づいて編纂し、目的があって保存された文書の集合体である[1]。日本では一般的に書庫や保存記録と訳されることが多いが、元来は公記録保管所、または公文書の保存所︵公文書館︶、履歴などを意味し、記録を保存しておく場所である。
国立国語研究所による﹁外来語﹂言い換え提案では、﹁アーカイブ﹂の言い換え語として﹁保存記録﹂や﹁記録保存館﹂とされている。
定義[編集]
カール・ツィンカーナーゲルは﹃アーキビストと﹁記録﹂(今日の記録文書や現用文書に当たる)に従事している者のためのマニュアル﹄ (1800年)において、アーカイブを、ある国家の政府の管理のもとに置かれた、国家の特権と組織に関連した文書の体系化された集成であると定義した[2]。その後、1834年にドイツのハインリヒ・アウクスト・エルハルト、1895年にフランスのチャールズ=ビクター・ラングロワらにより体系化、解釈が行われた[1]。彼らはアーカイブを、作成する国や行政、企業、個人に関わる法的に関連がある文書の資料群として規定し、文書作成の活動または保管場所であると説明した[1]。さらに20世紀初頭のイタリアにおいてユージェニオ・カサノヴァは、1928年に刊行された文書の記録管理に関する学術書において、﹁アーカイブはある活動の遂行の間に構築された団体もしくは個人の文書の体系化され、これら団体や個人の政治的・法的・文化的目的達成のために保存された集成である﹂[3]と定義した。 具体的なアーカイブやアーカイブズの定義が行われている一方で、明文化はできないとも言われている[4]。施設としてのアーカイブ[編集]
アーカイブの複数形としてアーカイブズがあり、文書や史料、また美術作品の保存を目的とした施設や仕組みを指す。なお、過去に放送された番組や関係資料の所蔵・閲覧を目的とした映像拠点として2003年︵平成15年︶に埼玉県川口市にオープンしたNHKアーカイブスの﹁アーカイブス﹂は、﹁アーカイブズ﹂では末尾に濁音が続き発音しにくいために、NHKによって考案された造語である。コンピュータでのファイル操作におけるアーカイブ[編集]
複数のファイルを一体化すること。「アーカイブ (コンピュータ)」を参照
記録としてのアーカイブ[編集]
図書館学における公記録保管所という意味からの派生。 歴史学では多様な史料の活用が図られるようになり、特に1980年代以降の新たな史料学のもとで古文書から電子記録まで﹁過去の人びとの記録総体﹂を﹁アーカイブズ﹂と呼ぶようになった[5]。デジタルデータのアーカイブ[編集]
●デジタルアーカイブ - デジタル化して保存すること。 ●ウェブアーカイブ - ウェブを収集したものの総称。 ●インターネットアーカイブ - インターネットで公開されている情報をクローラを用いて収集・保存するサービス、あるいはその団体。 ●Arctic World Archive デジタルデータの貯蔵庫。スヴァールバル世界種子貯蔵庫からそれほど遠くない場所に位置する。脚注[編集]
(一)^ abc嘉村哲郎 (2015年6月). “芸術資料とアーカイブ/ドキュメンテーション”. 国立国会図書館. 2021年11月3日閲覧。
(二)^ マリア・バルバラ・ベティーニ 著、湯上良 訳﹃“アーカイブという概念" アーカイブとは何か: 石版からデジタル文書まで、イタリアの文書管理﹄法政大学出版局、2012年、16頁。
(三)^ マリア・バルバラ・ベティーニ 著、湯上良 訳﹃“アーカイブという概念" アーカイブとは何か: 石版からデジタル文書まで、イタリアの文書管理﹄法政大学出版局、2012年、18頁。
(四)^ 記録管理学会・日本アーカイブズ学会﹃“アーカイブを学ぶ" 入門・アーカイブズの世界-記憶と記録を未来に-﹄日外アソシエーツ、2006年、43頁。
(五)^ 大橋 幸泰. “12.史料論の現在(1)―古文書学からアーカイブズ学”. 早稲田大学. 2020年2月26日閲覧。